NYで焼酎月間スタート

規制緩和で商機到来!

日本製焼酎レストランで販売可

 ニューヨーク日本食レストラン協会と日本酒造組合中央会の共催による焼酎月間が30日(月)から3月11日(土)まで開催される。NY州の法改正に伴い、アルコール度24%以下の焼酎はソフトリカーライセンスでも、レストランで販売が許可されるという米国の歴史に残る快挙を成し遂げた。同キャンペーンを通して500年以上の歴史を持つ、日本の蒸留酒である本格焼酎を日本食レストラン協会の会員24店舗において紹介する。今回は九州の蔵元が参加レストランを訪れ、直接焼酎の魅力を紹介する。

 参加蔵元は、霧島酒造株式会社(宮崎)、薩摩酒造株式会社(鹿児島)、小牧醸造株式会社(鹿児島)、三和酒類株式会社(大分)、八鹿酒造株式会社(大分)、京屋酒造有限会社(宮崎)、株式会社黒木本店(宮崎)、柳田酒造合名会社(宮崎)、有限会社渡邊酒造場(宮崎)、小玉醸造合同会社(宮崎)の10蔵。詳細はhttps://nyjapaneserestaurant.org/shochuweek/を参照。問い合わせはinfo@nyjapaneserestaurant.orgまで。

参加レストラン(24店)

 いなせ、蕎麦屋、丼屋、しゃぶ辰、酒蔵、茶庵ティーハウス、フジノヤ、酒バーでしべる、波崎、カラジシボタン、ウオクニ、スシツシマ、ワクワク、モモカワ、スシオブガリ・トライベッカ、スシオブガリ・46、ガリ・コロンブス、秀ちゃんラーメン・ミッドタウンイースト、焼き鳥トット、トットラーメン・ヘルズキッチン、鳥心、レストラン日本、アウン・ブルックリン。

(Photo by Daniel Schwartz)

初の女性学長、コロンビア大学

 コロンビア大学は18日、次期第20代学長に経済学者ネマト・ミノーシュ・シャフィク氏=写真=を選任したことを発表した。同大学268年の歴史で初の女性学長の就任となる。 

 シャフィク氏は1962年にエジプトのアレキサンドリアで生まれ、国内情勢が混乱に陥り4歳の時に家族と米国に移住した。マサチューセッツ大学アマースト校で学士、英国ロンドン・スクールオブ・エコノミクス(LSE)で修士、オックスフォード大学のセント・アントニーズ・カレッジで経済学の博士号を取得し、36歳で世界銀行史上最年少の副社長、次いでイングランド銀行副総裁を務め、2017年にLSEの学長に就任した。同大学理事会は立候補者600人のなかからシャフィク氏の選出したことについて「LSEでは教育機関としての使命に重点を置く傍ら、学生たちの幅広い躍進を導いた。個人としてはキャリアを通して、多様性と包括を精力的に支持し、創造力豊かで思慮深いリーダーとして才能の育成と解放、公益サービス・チームの取り組みに従事してきた」と伝えている。 

 同大学ジャーナリズム大学院での記者会見でシャフィク氏は「幼少期にエジプトを離れたとき、化学者の父は私に『すべてを奪われても、教育だけは奪うことはできない』と言った。再出発を強いられた家族にとっては、教育が何よりの救いとなった。コロンビア大学の多くの学生たちにとって同じように」と語った。また、学長が交代しても「学生の自主性を促す」という公民の基礎としての履修課程に焦点を置く同大学の教義は変わらない、と話している。

 21年間同大学の学長を務めたリー・ボリンジャー氏は「コロンビアを率いる次期後任を世界中で探したとしても、彼女の専門知識、経験、教育と公民に対する視点からシャフィク氏を選ぶだろう」とコメントしている。シャフィク氏は今年7月1日に新たな次期大学学長としての任務をスタートする。 

高級食のからすみを家庭で作る方法

プロに聞く、生き生きEATS(イーツ)

元気と美味しいを求めて料理の達人が腕を振るう (32)

 ボラの卵巣で作る自家製からすみを今回紹介します。材料はチャイナタウンなどで入手できるそうです。手順を工程にそって写真で説明して、高級品と言われるからすみを家庭でも簡単に作る方法を伝授してもらいます。

 そのほか、トマトパスタ、  オニオンスープについて紹介していただきます。講師は料理研究家の千葉真知子さんです。


■からすみ

 ボラの卵巣でからすみを作ると非常に高価なものになります。高級品と言われるからすみですが、家庭でも簡単に作ることができます。是非挑戦してみてください。からすみは約1年ほど保存できますので、スライスをしてそのままで、又、大根スライスに挟んだり、からすみパスタなどもおいしくいただけます。

材料

ボラの卵巣  

焼酎

作り方

① ボラの卵巣の血を竹くしをさして取り除き、水で流す。

② ①のボラの卵巣の水分をキッチンペーパーでふいて大きめの容器に入れて全体に塩をふり、一日冷蔵庫でねかせる。

③ ②の塩を取り除き、再び容器に入れ、ボラの卵巣が隠れるまで焼酎を入れて、一日冷蔵庫でねかせる。

④ ③のボラの卵巣をざるにのせて10日間天日で干す。又は窓辺の陽の当たるところで干す。時々ひっくり返す。表面が固くなったらできあがり。密閉の袋に入れて冷蔵庫で保存する。


■オニオンスープ

 玉ねぎはビタミンやカルシウム、ミネラルをはじめ豊富な栄養を含む野菜です。疲労回復、食欲増進、動脈硬化予防など体調を整える作用があり、血行を良くして体を温める働きもありますので、風邪や体調がすぐれないときにはお勧めのスープです。

材料

玉ねぎ 大3個

にんにく 4片

水  3カップ

赤ワイン 60cc

バター 40g

固形スープ 1個

塩、胡椒 各少々

プロセスチーズ 適宜

作り方

① 玉ねぎは皮をむいて半分に切り、スライスする。

② にんにくは粗みじん切りにする。

③ バター30グラムを鍋に入れて溶かし、②のにんにくを炒め、①の玉ねぎを加えて玉ねぎがきつね色になるまで中火で炒める。途中で残りのバターを加えてさらに炒める。

④ 玉ねぎがきつね色になり、とろけるような状態になりましたら、水、ワインを入れてゆっくり煮る。固形スープ、塩、胡椒を加えてさらに煮る。

ココット型に④のオニオンスープを入れて、上にチーズをのせてオーブン約7分または電子レンジで約1分、チーズが溶けるまで加熱をする。


■トマトパスタ

材料

乾燥パスタ 90g

水 300cc

オリーブオイル 大1

塩 小2/3

胡椒 少々

にんにく2片(スライス)

トマトケチャップ 大1 

生トマト 大きめのトマト

1個(粗みじん切り)

作り方

① パスタは3等分に折ってクック膳に入れ、残りの材料を加えふたをして電子レンジで12分から13分加熱をする。

 加熱後はよくかき混ぜる。


千葉真知子プロフィール

東京、ニューヨークを拠点に活動。 1987年に大手商社よりきくらげ料理の撮影依頼 を受けたことがきっかけで、きくらげの健康食品 を開発、アメリカの医療界でビタミンDの重要性が認識さ れるようになり、2018年より大手医薬品 卸問屋を通じ、調剤薬局、病院でもきくらげエッセ ンスの販売が開始される。10年の歳月を費 やして開発した電子レンジ用調理鍋「クック膳」を 世界的な商品に育て上げる。現在では医療分野・ 介護分野でも使われている。米国にてthe best of housewares 2019受賞。他、和菓子の型、ケーキ型 を数十種類考案。メルボルーンの学校でクック膳、和菓子の型を授業に取り入れられる。3月には、ニューヨーク国連の学校で和菓子の指導をおこなう。

主な著書 「Japanese Dishes for wine Lovers」 講談社インターナショナル 「The Cook-Zen Cookbook」 Lake Isle Press New York 「The Cook-Zen Way to Eat」 Lake Isle Press New York 「レンジでつたえる和菓子レシピ」 日経BPコンサルティング( 世界グルマンクックブックアワード入賞) 「食べるクラッシック」  幻冬舎 (NHK-FMラジオで2時間放送される)           他著書 多数

世界で2番目に岩手県盛岡市

2023年行くべき旅行先52か所
ニューヨークタイムズ紙

歴史と文化と自然の魅力

 ニューヨークタイムズ紙が12日に発行した号の旅行欄で「2023年に行くべき52か所」を発表し、世界各地の旅先の中で1つ目にイギリスの首都・ロンドン、そして2つ目に岩手県の盛岡市を取り上げて話題を呼んでいる。

 盛岡が選ばれた理由として、市街地中心に歴史的な建物と川や公園などの自然が豊富で、街を歩いて楽しめるところ、老舗のコーヒー店やわんこそばのほか、書店、ジャズ喫茶などの文化が根付く街であることが挙げられた。選出した同紙記者のクレイグ・モド氏は、盛岡を「まだ知られていない多くの魅力を感じた」と評価した。国内では他に19か所目に、夜に屋台が並び焼き鳥やラーメン、おでんなどの料理が楽しめる福岡県福岡市が選ばれた。コロナ禍で観光客が減少傾向だった盛岡市では、今後このニュースをきっかけに外国人観光客の増加に期待を寄せている。

ウクライナ軍事侵攻日数示す333本のひまわり畑が出現

マンハッタンのフラットアイアン・プラザ

 ウクライナを支援するためマジソン・スクエア・パークの向かい側、5番街とブロードウエーとの間の23丁目にあるフラットアイアン・プラザに、ウクライナを支援する333本のヒマワリの花が設置された(写真・三浦良一、21日撮影)。

 この花の数は、ロシアとの戦争が続いている日数を表している。ひまわりの写真を撮って、ソーシャルメディアに投稿することで「この恐ろしい時代に、この活動への関心を高めること」を目的としている。ひまわりの写真をアップロードして、ハッシュタグ「#UnifyUkraine」を使えば、ウクライナ支援の会話に参加できる。

 戦争によって引き裂かれた夫婦の行く末を悲哀たっぷりに描いた映画「ひまわり」(1970年作品)を連想させるようなひまわり畑だ。造花だが、街ゆく市民が足を止めて写真を撮影する姿が見られた。そしてまもなく軍事侵攻開始から365日目の日がくる。

黒澤明監督の「羅生門」JSで2月1日に上映

 黒澤明監督の映画「羅生門」(1950年)上映会が、2月1日(水)午後7時から、ジャパン・ソサエティー(JS:東47丁目333番地)で開催される。同作は日本の近代短編小説の父、芥川龍之介の短編小説『藪の中』をベースに、ある男の殺人とその妻への暴行について異なる証言をする4人を印象的な映像とフラッシュバックの巧妙な使い方で見事に描き、日本映画を世界に知らしめるきっかけとなった作品。第12回ベネチア国際映画祭(51年)で金獅子賞を受賞、アカデミー賞で名誉賞を受賞(51年)、美術監督賞(白黒部門、52年)にもノミネートされ、黒澤の代表傑作の一つと言われている。出演は三船敏郎、京マチ子、森雅之ほか。35ミリフィルム、モノクロ、日本語上映・英語字幕付きで上映される。

 入場料は一般15ドル、学生・シニア12ドル、JS会員5ドル。チケット・詳細はウェブサイトwww.japansociety.orgを参照。

ロボットを超えるお友達?M3GAN

 人間社会の利便性を高めるためのAIロボット。人間の手で作り出されたそのロボットがある日、一人歩きを始める。SF映画ではよくあるテーマだが、比較的シンプルな本作品には科学の進歩と人間の関わり、ビジネスとモラルのバランスといった要素も盛り込まれ、全編を通し気の抜けない物語の展開となる。製作は「BlacKKKlansman]「Get Out」などウイットとユーモアに富むホラー作品が得意のブラムハウス・プロダクション。製作費1200万ドルに対し公開2週目の世界興行成績ですでに1億ドル近くを稼ぎ出す優良株だ。

 シアトル・ベースのトイメーカーでエンジニアとして働くジェマ(アリソン・ウィリアムス)はAI人型ロボット「M3GAN」(メーガン)を開発中だ。子どもの遊び相手、家庭教師、ナニー、ボディガードにもなり、子育て中の親にとっては理想のハイテク・マシンを目指している。

 超多忙の生活を送るジェマはある日、妹夫婦が交通事故で急死し一人娘のケイディ(バイオレット・マクグロウ)の親権をジェマが受け継ぐという状況に陥った。あまり行き来がなかったため、ジェマもケイディもお互いどこかぎこちない雰囲気で過ごすが、ジェマはプロトタイプのメーガンをケイディに会わせる。

 背丈も同じくらいで金髪で目のクリっとしたメーガンはまるで人間のように話し行動する。案の定、ケイディはメーガンを一目で気に入り、一緒に行動する時間が増えるほど大好きになっていく。

 メーガンはハード面ではほぼ完成しているがソフト機能を上げるには実際に子どもとの対話、リアクションの習得などで学習能力を高める必要があった。つまり、ケイディに友達を与え、同時にメーガンの完成度を高める一石二鳥が期待できるはずだった。

 しかし、すべてが予定通りに行くとは限らない。ジェマ、ケイディ、メーガンの関係、ケイディを様々な敵や障害から守ろうとするメーガンの行動などジェマの想像を超える出来事が次々と起こる。監督は「Housebound」ジェラード・ジョンストン。PG-13。(明)

(写真)ケイディはメーガンが大好きになる Photo : Geoffrey Short/Universal Pictures


■上映館■

Regal E-Walk 4DX & RPX

247 W. 42nd St.

AMC Empire 25

234 West 42nd St.

AMC Loews 34th Street 14

312 W. 34th St. 


編集後記 2023年1月21日号

【編集後記】



 みなさん、こんにちは。海外で結構長く(約40年ほど)継続して生活していると、日本人として生まれ、日本人として育ったことを誇りとして思いかつ、かなり幸せなことだと実感する一方、いつまでたっても英語力が上達せずに、しかもアメリカ人のように気軽に誰とでも気さくに話しができて、ジョークをかわして硬軟取り混ぜてうまく会話を進めていけない自分のどこに問題があるのだろうかと思うことが常々ある。多分大きくは性格そのものに起因する問題だという気は薄々する。というのは、英語ではなく、日本語なら誰とでも気さくにジョークを交えて会話ができるのかというとそんなことはないからだ。語彙力の不足や経験値の低さから、または上等な言い回しができるほどの英語力のなさから、勢い、日本語表現よりは上手い下手は別として英語の方が単刀直入にストレートな物言いになることはある。日本語で「そうね、まあ、いいんじゃないですか?」という返事と「あ、それいいアイデアだわ」という返事では、肯定的な同じ答えでもいいなとおもうバロメーターの度合いに温度差がある。それが英語だと「That’s good」で終わってしまう。まあ、その後に「fantastic! Faburous!」とか付けると、アメリカ人なら誰でもが言っているような誉め殺しの言い回しに聞こえてわざとらしいなどと白々しくなる。こんなことに悩んでいるようではこれから先も思いやられ、英語的交渉力は向上しそうにないが、今週号の高橋純子さんの「異文化コミュニケーション」の連載(8ページに掲載)を読むと、私が抱えているこの問題の原因と答えが導き出される解説が書かれていて興味深い。似たような思いを抱いている人は読むと何かの参考になるかもしれません。おりしも、今週号の1面トップ記事は「国連職員の道を目指す」試験説明会を外務省が開催という内容。国際舞台で堂々と人間味を出して好かれ、説得できる「人格」のようなものを育てていくにはどうしたらいいか、自分たちはもう遅しでも、次世代にその思いを託したいという長丁場の希望はそれでもまだ少しは持っている。日本の若者たちよ、世界はあんたの出番を待っている。頑張って! それではみなさん、よい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2023年1月21日号)

(1)国連職員の道目指す 外務省がJPO試験説明会

(2)草間彌生のロボット 五番街で「ジロっ!」

(3)ミラノ、そして東京のとけない魔法

(4)芥川作品の新作オペラ JSで演出の笈田ヨシに聞く

(5)飛躍願う新年   令和5年賀詞名刺交換会 

(6)NY合気会山田会長死去 世界に合気道広める

(7)80年代駆け抜けた YMO高橋幸宏氏

(8)ハリー王子の暴露本 BOOKS

(9)アートを通して障害者に希望  久徳裕子さん

(10)森大使と州下院議員が来校 NY育英学園

国連職員の道目指す

外務省がJPO試験説明会を開催

 外務省国際機関人事センターは日本時間1月18日(水)、2月5日(日)、2月18日(土)に「2023年度JPO試験説明会」を開催する。JPO派遣制度とは、1961年の国連経済社会理事会決議により設けられた、国際機関が各国の若手人材を受け入れる制度。日本の外務省も1974年から同制度による派遣を開始し、これまでの累計派遣者数は1900人以上に上る。派遣期間は原則2年間。期間内は外務省のサポートを得ながら正規職員と同様の勤務をこなし、国連職員・国際機関職員として必要な知識・経験を積む。派遣期間終了後には正規採用を得ることが期待されているが、保証されているものではなく、正規職員となるには通常求められる手続きに従って空席ポストに応募する必要がある。ただし、JPOでの勤務を行うこと自体が国際機関で勤務する能力があることの具体的な証明となるため、JPO経験者の多くが、その後、正規職員として勤務を続けている。

(1)募集対象

 開発・人権・教育・保健・平和構築・IT・広報、人事等の分野で活躍する35歳以下の若手日本人。2023年度のJPO候補者の募集は2月1日(水)から3月8日(水)までに専用のサイトを通じた申し込みが求められる。

(2)選考方法 

ア 第一次審査:外務省による書類選考 

イ 第二次審査:外務省によるオンライン面接選考(UNDP、WFP、OECD、OPCW、ICAO、OIE及びGCFを志望する者は各国際機関による面接等選考)。本説明会でこれら応募の仕方の詳細を詳しく説明する。加えて、書類作成のコツ、また派遣までのプロセスなども説明する。国際機関での勤務に興味がある日本国外在住の社会人、学生に積極的に呼びかけている。説明会への出欠は、試験の選考に一切影響しない。オンラインによる説明会の参加定員は各日300人。参加費無料だが事前の予約が必要。3回の内容は全て同じ。定員に達し次第締め切る。

 申し込み、詳細は外務省人事センターホームページ(JPO試験 外務省 国際機関人事センター (https://www.mofa-irc.go.jp/jpo/))を参照。問い合わせは電話。東京03・5501・8238、Eメールjinji-center@mofa.go.jp 外務省国際機関センターまで。

草間彌生の等身大ロボット五番街で「ジロっ!」

ルイ・ヴィトンとのコラボキャンペーン

 日本の前衛アートの草分けで現在も活躍する草間彌生(93 )の等身大ロボットが五番街57丁目のルイ・ヴィトンストアのウィンドウを彩っている。絵筆を動かし、時折、こちらをジロっと睨んで頬をヒクヒク痙攣させる仕草はかなりリアル。草間彌生とルイ・ヴィトンのポップアップストアもこれに合わせてミートパッキング地区にオープンしている。 

 このキャンペーンは、草間さんと高級ブランドとのパートナーシップ展開の一部で、バッグからフレグランスまで450以上の商品を生み出す予定だ。五番街店だけでなく、ホイットニー美術館の向かいにあるポップアップでは、草間の伝説的な作品「インフィニティ・ルームミラー」を思い起こさせる、さまざまなサイズのミラーボールがあちこちに置かれ、その上、アーティストが得意とするインフィニティ・ドット(水玉模様)で覆われている。このポップアップでは、新コレクションのアイテムが4月末まで販売される。アートとファッションの巨人によるコラボレーションがニューヨーカーを驚かせているのは、今回が初めてではなく、2012年に、ルイ・ヴィトンが、当時まだアップタウンにあったホイットニー美術館で開催された草間彌生回顧展のスポンサーを務めている。近くこの春にオープンするグランド・セントラル・マディソン・ターミナルにも草間の巨大な壁画がお目見えする予定だ。クサマ・ヤヨイは現在ニューヨーカーに最も知られている日本人の一人かもしれない。(写真・三浦良一)

ミラノ、そして東京の、とけない魔法

 ウエイトレスは、「ロベルタ from Italy」と書かれた名札を胸に付けていた。

 二十代半ばくらいの白人女性だった。身のこなしが美しく、話す日本語も丁寧で心がこもっている。

「失礼、シマス」「オ待タセ、シマシタ」「オ水ヲ、注イデモ、ヨロシイ、デショウカ」 などというときも軽くお辞儀をし、細やかな心づかいが伝わってくる。

 都内、下北沢にあるこのカジュアルなイタリアン・レストランは、ピザが美味しいと評判で、ずっと前から行きたいと思っていた。

 店に着いたのは、すでに午後二時近かったが、ランチの客でまだ、にぎわっていた。 

 イタリアから来られたんですか、と私が声をかけた。 

 ミラノ出身だった。私たち夫婦もミラノを旅したばかりだったので、話が弾んだ。

 ロベルタは、流暢な日本語で語った。

 ローマヤ、フィレンツェト、違ッテ、ミラノハ、観光地デハ、アリマセン。経済ト、 ファッションノ、街デスカラ、私ハ、アマリ、好キデハ、アリマセン。

 ミラノの大学で経営学と保険を、語学学校で日本語を学んだという。

 どうして、日本に来ようと思ったんですか。

 そうたずねると、ロベルタが答えた。 

 ミラノデ出会ッタ、オバアサンガ、キッカケデス。 

 語学学校に通い始める一年ほど前、ミラノの大学へ向かう地下鉄でのことだった。 

 電車は混んでいた。大学のあるサンタンブロージョ駅で、降りようとした。ここには、 ミラノ最古の教会として知られる、サンタンブロージョ聖堂がある。ロマネスク建築の美しい教会だ。 

 ドアの左わきに立っていたおばあさんの肩に、自分の肩がぶつかった。 

 ホームに降りてふり返ったとき、そのおばあさんは日本人だと直感した。帽子をかぶり、花柄のような淡い色のシャツを着ていた。夫らしきおじいさんが隣にいた。 

 こういうとき、ミラノに住んでいる人なら、一度、ホームに降り、ほかの人が降りるのを待ってから、再び電車に乗る。でも、その人はそのまま地下鉄に乗っていたので、観光客なのだろうと思った、とロベルタは言う。 

 おばあさんに向かってロベルタは、片言の日本語で謝った。

 スミマセン。

  その人は、驚いたように目を見開き、それからとてもおだやかな笑顔をこちらに向けた。ほっとしたような笑顔だった。

 ほんの一瞬のことだが、心がつながったような気がした。

 そして、ドアが閉まった。

  ロベルタはホームに、おばあさんは電車の中にー。

 電車はその人を乗せて、ホームを出ていった。 

 おばあさんの笑顔が、忘れられなかった。

 あのときロベルタは、アリガトウとスミマセンしか知らなかった。もっと何かことばを交わしたかった。

 ソレガ、語学学校デ、日本語ヲ、学ビ、日本ニ、来タイ、ト思ッタ、キッカケデス。 

 ロベルタが日本語の勉強を始めて、六年になる。大学を終え、日本でイタリア語を教えたいと思い、ミラノでそのための授業も取った。

 半年前に日本にやってきた。が、教師の仕事はなかなか見つからなかった。

 知り合いの紹介で八十歳の日本人のおばあさんと一緒に、一軒家に住んでいる。 

 大家さんなのに、一緒に食事をし、家族のように接してくれるという。

 ミラノではアパートメント暮らしだったので、近所づき合いはほとんどなかった。 

 大家さんと一緒に住んでいる東京のほうが、地元の人との触れ合いがあるという。

 東京の語学学校で日本語をさらに勉強し、時間があるときにレストランやカフェでアルバイトしている。 

 通りすがりの人の一瞬の笑顔が、ひとりの人生を変えた。

 ミラノ、そして東京の、とけない魔法ー。 

 ロベルタは話し終えると、熱心に耳を傾けていた私に、丁寧な日本語で言った。 

 私ノ、話ヲ、大切ニ、シテクレテ、アリガトウ、ゴザイマス。 

 このエッセイは、文春文庫「ニューヨークの魔法」シリーズ第8弾『ニューヨークの魔法のかかり方』に収録されています。

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