映画「オッペンハイマー」

【編集後記】

映画「オッペンハイマー」


 みなさん、こんにちは。映画「オッペンハイマー」を見てきました。ピュリッツァー賞を受賞した伝記「オッペンハイマー『原爆の父』と呼ばれた男の栄光と悲劇」(カイ・バード、マーティン・J・シャーウィン)を基にクリストファー・ノーラン監督が脚本を執筆したものです。日本での公開は未定です。オッペンハイマーは、理論物理学の広範な領域にわたって大きな業績を上げた米国人で、特に第二次世界大戦中のロスアラモス国立研究所の初代所長としてマンハッタン計画を主導し、卓抜なリーダーシップで原子爆弾開発の指導者的役割を果たしたため、「原爆の父」として知られます。映画はハーバード、イエール、プリンストンなどの研究所で学者としての頭角を表しながら科学者として原子爆弾を製造、実験していく様子が描かれますが、傑出した科学者チーム4000人が3年間かけて製造した爆弾がどれほどの悲劇的な惨状を生み出すことになるのかについての科学者たちの想像力の欠如が映画では如実に描かれています。もともとナチスドイツ攻略を目的に始まった原子爆弾の研究と製造は、爆弾の完成を待たずにドイツが陥落したことで、使う先がなくなり、その矛先が、戦争集結の見通しが依然見えない「JAPANがある」と簡単に向いてしまいます。原爆を投下する日本の候補地12都市の中からどこに原爆を落とすかを決める会議で「京都は外そう。文化遺産が多いし、私がハネムーンに行ったとこだから」という選考委員の発言に映画を見ていた観客から笑いが起こりました。オッペンハイマーは「想像を絶する破壊力のある原子爆弾の威力を軍部が知れば、あまりにも恐ろしくて誰もそれを使おうとはしないだろう」というのが製造の本心だったと後に語っていますが、その意に反して原爆は広島と長崎に落とされました。映画でその事実は「広島に原子爆弾が落とされ多くの日本国民が死亡し、これからまだまださらに死者が出る模様」という聞き取りにくいラジオの放送が流れるだけです。キノコ雲の映像も、一面焼け野原になった広島の映像も、被爆者の記録写真も映画では一切映し出されません。アメリカでは戦争の早期終結の最大の貢献者として英雄となるオッペンハイマーの姿と歓喜に沸く米国民、研究仲間たちの誇らしい笑顔が映し出されます。ポップコーンを食べながら思わす溜息が出て、片手落ちの映画だなと思いました。日本人としてこの映画は原爆の恐ろしさを全く伝えていないどころか、伝える気もない映画だと思え、今週の映画評に書くつもりで締め切りの忙しい中を縫って見に行きましたが、記事にするのも汚(けが)らわしいと思い、原稿は書きませんでした。ウクライナとロシアの核の危機、北朝鮮の核兵器の開発と、現代もなお核兵器の脅威が高まる中で、アメリカで原爆の悲劇に目を向けない原爆映画がこうして公開されている現実に、今なお加害者と被害者の間の意識に大きな乖離を感じます。原爆は今の法令基準に当てれば立派なジェノサイド条約違反の大量殺戮のテロだと思います。戦争に負けて東京裁判で捌(さば)かれる側の立場になった日本ですが、一般市民を巻き添えにしたテロ行為に対して、日本はアメリカに謝罪を求めてもいいくらいだと思います。アメリカは戦後、ずっと日本を核の傘で守ってくれた「お兄さん」ですが、私は弟だったとしても言わしてもらいたです。「兄ちゃん、いつも守ってくれてありがとうね。でも、原爆はひどいよ、謝って欲しいな」と。お兄さんはなんて言いうでしょう。「お前さ、パールハーバーって聞いたことあるか?先にどっちが謝んなきゃなんないかな。どっちもかな」。また8月6日と9日が今年もやってきます。ニューヨークでも今週末から平和式典が開催されます。それでは皆さんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)


【今週の紙面の主なニュース】(2023年8月5日号)

(1)冷凍すし米上陸 NYで試食イベント

(2)球場で日本文化祝う JAPAN HERITAGE NIGHT

(3)MIYAVI国連で演奏 世界こども未来会議

(4)国籍法訴訟秋の陣 海外日本人サポート

(5)指揮者の伊藤玲阿奈さん ウクライナ大使の新書長崎へ

(6)移民宿泊施設なし ホテル満室で野宿も

(7)宗派超えて平和活動続ける NY平和ファウンデーション代表 中垣顕実さん

(8)巨大開店すし店 マンハッタンにオープン

(9)教師辞めて米国で女優に 筒井あづみさん

(10)松山スタジオ7人展 devotions 天理文化ギャラリーで

冷凍すし米上陸

農林水産省が後押し

NYで試食イベント開催

 ビルドストーン(本社東京都港区、建石俊之社長)は、7月に農林水産省支援のコンソーシアムにて、米国に冷凍すしを本格的に初輸出した。同社は、日本において最近、冷凍技術の活用が進んだことを受け、2月から農林水産省補助事業(令和4年度農林水産物・食品輸出促進緊急 対策事業)に取り組み、コンソーシアムにて「メイドインジャパンでネタとシャリが一緒のすし」を冷凍して、輸出する枠組みの構築を進めてきた。

 すし製造には国内のすしメーカー数社に依頼し、その中でアメリカの輸入規制に対応できる会社を選定。提携する冷蔵施設業者のマイナス60℃の技術で、すしを瞬間冷凍した。

 米国にすしを輸出するには、アメリカ食品医薬品局(FDA)やNOAA関連のSIMP(水産物輸入監視制度)等の厳しい基準を満たす必要があり、同コンソーシアムは、その調整を入念に行ったことで、当初予定より3か月余計に時間を要した。荷物は6月29日に名古屋港から出て、ロサンゼルス港に7月14日入港。FDA/NOAA/SIMPの認可を受けて、7月20日に通関した。

 ニューヨークの展示会は、ブルックリン区サンセットパーク地区にあるジャパンビレッジで7月29日に開催。当日は多くの来場者に、その場で解凍したすしが振舞われ、当初予想をはるかに上回る約270人からアンケート回答を得られた。来場者からは、「本格的な日本のおすしの繊細さに感銘を受けた」と大好評だった。

 なお会場では、今秋酒米を仕入してOEM生産する予定の、プロトタイプの日本酒も振舞われこちらも好評で、ニューヨーカーがすしと日本酒の本格的なメイドインジャパンを楽しんだ。今後同社は、ニューヨークとロサンゼルスを中心に、現地の小売店や、レストランに冷凍すしを卸していく方針。アメリカ市場での実績を基にし、欧州・中東・アジアへの進出も目指す。

 米国現地責任者のJWJARDINインク代表の新井幸子さんは「自然解凍で2時間必要なため、買ってすぐに食べたい消費者のニーズに応えるために湯煎対応のパッケージにしているが、電子レンジでの解凍など課題もみえた」と話す。にぎり6貫が入って、円換算で2500円程度の小売り販売を見込む。

(写真)冷凍すしを手にする新井さん(7月29日ジャパンビレッジで)

球場で日本文化祝うJAPANESE HERITAGE NIGHT

8月25日シティーフィールドで

 クイーンズにあるシティーフィールドを本拠地とするメジャーリーグ・ベースボール(MLB)チーム、ニューヨーク・メッツは8月25日(金)午後6時から、「ジャパニーズ・ヘリテージ・ナイト」を開催する。

 イベントは同日午後7時10分からのニューヨーク・メッツ対ロサンゼルス・エンジェルス戦の前に行われる。在NY日本国総領事館、NY日系人会、NY日本商工会議所、ジャパン・ソサエティー、全米日系人博物館、米日カウンシルにより開催される。試合前の大型スコアボードで、NYの日系コミュニティを紹介するビデオを流す。

 また、オンラインでチケットを購入し、当日の試合中(5回裏終了まで)にセクション130後方の団体販売引き換えブースでデジタルチケットをスキャンすると、2023年ジャパニーズ・ナイト・メッツ限定帽子がもらえる。球場は地下鉄7番線のMets Willets Point駅の前。

 入場料は35ドル50セント〜147ドル50セント。チケット・詳細は公式サイトhttps://www.mlb.com/metsを参照する。

(写真)メッツの千賀のユニフォームを来て歩く若者(7月28日マンハッタン6番街で、写真・三浦良一)

MIYAVI国連で

ピースコミュニケーション財団

世界こども未来会議

 一般財団法人ピースコミュニケーション財団(一木広治代表理事=写真=)は7月19日、国連本部で「国連を支える世界こども未来会議〜プロジェクト発表イベント・イン・NY」を開催した。第2部では、協賛している日本電信電話株式会社が、ニューヨークの会場にいるキッズアンバサダーと日本にいるキッズアンバサダーをオンラインで繋ぎ、遠くにいる人の鼓動を光と振動で感じる遠隔触感コミュニケーション体験を実践。ライブパフォーマンスでは、『シェイプ・オブ・フューチャー・プロジェクト』と題し、こどもたちの未来に向けた「声」を集めるプロジェクトをもとにMIYAVIが楽曲プロデュースで制作した、国連を支える世界こども未来会議のテーマソングを披露した。MIYAVIが国連で演奏するのは国連日本政府代表部が主催したピース・イズというイベント以来7年ぶり。変わらぬ演奏を見せ、会場を沸かせた。

(写真・三浦良一)

日本は民主主義国か? 国籍法訴訟秋の陣

    国籍法訴訟が続く秋

 国籍法改正を求める訴訟が続きます。福岡訴訟第5回期日(8月21日)、京都発!大阪訴訟第3回期日(9月29日)、未成年者についての東京訴訟第2回期日(10月2日)です。

 ご承知のように、国籍法11条によって外国籍を取得したとたんに日本国籍が自動的に奪われます。日本国内にいながら日本国籍を失った人、海外在住で日本国籍を失った人、国籍を失ったことを知らずに帰国して不法滞在外国人とされた人、海外在住で日本国籍を維持したいために現地で帰化できない人などが多く存在します。

 特にコロナにより、日本国籍がない人の日本帰国や長期滞在が難しくなり、親の死に目に会えなかった人たちが多数います。日本国籍を喪失した人たちの相談を数百件も受けてきた米国在住の近藤ユリ弁護士が、一時帰国した日本からの再出国が難しい当事者となり、訴訟を起こしました。

 あなたは不法滞在の外国人!

 女性の大学教授も訴訟を起こしました。カナダ国籍を取得した後、18年に親の介護のために帰国。国籍喪失届が申請書類の不備を理由に受理されず、日本国籍があるものとされてきましたが、翌年、旅券を申請したところ日本国籍は失われているとして拒否され、「不法滞在の外国人」と宣言されたのです。出国を望めば強制退去となり、5年間は日本への帰国が拒まれる状況です。教授は「家族介護の帰国が不法滞在扱いを受けるのは理不尽だ」として、日本国籍を持つことの確認や旅券発給などを求めて大阪地裁に提訴しました。

海外で活躍する日本人に冷酷な国籍法

 海外在住日本人は130万人を超え、その約6割が長期滞在者です。世界150か国が複数国籍を認めています。しかし、必要に迫られ外国籍を取得した南部陽一郎、中村修二、眞鍋淑郎のノーベル賞受賞者各氏も日本国籍をはく奪されました。ビザ発行の条件として「自らの意思で日本の国籍を放棄する」という書類にサインを迫られた人もいました。本人の意思を確認することなく、海外で活躍する日本人の国籍を奪うことは、大きな国益の損失です。

   日本は民主主義国か?

 日本は男女平等指数が世界125位。報道の自由ランキングが世界68位です。6月までは日本だけが先進G7諸国の中唯一LGBT支援法が無い国でした。日本が民主主義国として胸を張るには、国籍法11条改正も含めてその体制を整える時です。

 この秋の裁判や報告集会などの日程は以下のサイトでご覧ください。 http://yumejitsu.net/


 ふじた・ゆきひさ=慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。

指揮者の伊藤玲阿奈さん、ウクライナ国連大使の親書長崎へ平和のメッセンジャー

 ニューヨーク在住の日本人指揮者、伊藤玲阿奈氏(44)が7月20日、ウクライナ国連代表部のセルゲイ・キスリツァ特命全権大使から長崎市民へ向けた公式平和メッセージを受け取った=写真=。伊藤氏はこの親書を日本へ持って、8月6日に長崎原爆資料館で2018年にノーベル平和賞候補にもなった「高校生平和大使」に手渡す。

 再来年に控える戦後80年・国連80周年を盛り上げていくための運動のひとつとして伊藤氏が行っているもので、ほかにも国連経済社会理事会の議長からSDGsの公式メッセージを、日本の石兼国連大使からも公式メッセージを受け取り、長崎市長などに渡して、対話や音楽を通じて市民と国際的な観点から平和とSDGsへの理解を深めてもらう活動を行う。 

 伊藤さんは、高校時代を長崎で過ごし、国連で働くことを夢見てワシントンDCに留学した経歴を持つことからこの企画の発起人として代表部との交渉に自ら当たった。「世界中の人が生活するNYで何十年も生活していると、とても平和で、かつSDGsの実践も盛んな自分の母国を本当に誇りに感じます。国際的な感覚から平和とSDGsを学び直すこのイベントを通じて、愛する母国のために尽くしたいと願っております」と話している。

 

移民宿泊施設なし

9万人がNY市に流入

ホテル満室で野宿も

 「移民が屋外で寝るのはもう部屋がないから」とアダムス市長が7月31日の記者会見で同市の移民受け入れ政策が苦境に立たされていることを明らかにした。

問題は、シェルターが不足していることであり、市と協力してその対応に当たっている業者が悪い訳ではないと批判をかわした。市長は、ルーズベルト・ホテルの外での光景が今後、普通に見られる一般的な光景となり、他のシェルターや一時滞在施設として市が借りあげているホテルに波及する可能性があると述べた。(写真:移民一時滞在施設のルーズベルトホテル前では野宿者が続出(1日午前10時、写真・三浦良一))

 アダムス政権が南部国境からの9万人の移民流入への対応に苦慮するが「NY市は、すべての通りにテントが立ち並ぶような他の都市のようにはならない」とも断言した。

 同記者会見は、前日にニューヨークタイムズ紙が、移民危機を支援するために市が医療サービス会社DocGoに4億3200万ドルの業務を入札なしで契約した記事が報道された翌日に行われた。DocGoは、何百人もの亡命希望者を州北部のオルバニーなどの都市にバスで運んでいるが、そこにいる移民の多くは、惑わされ、見捨てられたと感じ、DocGoが雇った地元の警備員が何度も彼らを脅したと報じられている。

 市内ミッドタウンのグランドセントラル駅に近い45丁目のルーズベルトホテルは客室数1000室の日本人旅行者にもお馴染みの老舗ホテルで、市長が今年5月に移民到着センターとしての役割を果たすと発表するまで、パンデミックで3年近く閉鎖されていた。

出前のアルバイトに使うバイクが並ぶホテル前

 市当局によれば、DocGoのスタッフが入国手続きを手伝い、医療サービスを提供するという。アダムズ市長は月曜の記者会見で、DocGoはパンデミックと移民危機に対応し、良い仕事をしてきたと擁護した。アダムス市長は、DocGo社に信頼を寄せていると述べるとともに、いかなる欠陥も是正することを誓った。

 同ホテルにすでに部屋をあてがわれて一時滞在している幸運な移民たちは、日銭を稼ぐために自前でスクーターを調達して、ウーバーイーツなどの出前サービスのアルバイトを始めており、ホテル前はさながらオートバイ販売店のようにバイクがずらり並んでいる。

宗派超えて平和活動続ける

NY平和ファウンデーション代表

中垣顕実さん

 NY平和ファウンデーションの代表、中垣顕実さん(62)は、1994年からニューヨークで毎年8月5日に広島・長崎原爆法要「NYインターフェイス平和の集い」を主催し、2002年からは9月11日にハドソン川での9・11同時多発テロ犠牲者追悼灯ろう流しを10年間企画するなど、仏教の精神に基づいた平和を訴える活動を展開している。今年の原爆式典をニューヨークで開始して30回目となることもあり「NY平和の集い」を8月5日、8日、9日の3日間に分けて開催することにした。

 ロシアのウクライナ侵攻から1年5か月、戦況は長引き、北朝鮮も核兵器の使用をはばからない姿勢を見せるなど、世界中で核兵器の脅威が高まっている。その中で、唯一の被爆国である日本が核兵器廃絶の声をこれからも強くあげていかなくてはならないという思いは強いが、核兵器禁止条約に日本は参加していないことに、海外に住む日本人として、宗教家として釈然としない思いが募る。日本の被爆者が声をあげてきたことで、ようやく発効にこぎつけた核禁止条約なのに、被爆国である日本が参加しないことが整合性に欠けていることは誰が見ても明らかだ。

 「日本では広島と長崎の被爆者が声をあげているが、海外から見たら原爆は広島・長崎というより、日本に落とされたと見る。被爆は日本のものとして考えていかなくてはならないことを痛感している。核兵器は戦争の抑止力というが、どんどんエスカレートしていき、人類と地球にとって取り返しのつかない危険を膨張させている。戦争の当事者は、敵の言うことを信じない。疑心暗鬼となり、大きな間違いをもたらす危険は日に日に高まっている」と危機感を募らせる。

 機能不全に陥って戦争を止めることができない国連に無力感を覚えつつも「いま世界中の国が集まって話し合える場は国連しかないのも事実。対話を続けることだけが戦争を回避できる。聖徳太子の17条の憲法にある『和を以て貴しとなす』は平和を、『忤(さから)うことなく』は非暴力、傷つけない、殺さないという仏教の思想の根源を成す考え方」であり、武器をもって、力ずくで平和を築くのではなく、対話、互いに尊重し合い、相互理解を通しての平和でなければならない。それを受けて今年NY式典で鳴らす平和の鐘(山口久乗寄贈)には「和貴無忤」という文字が刻まれている。

 今年も、宗派を超え、仏教、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、ヒンズー教らが集まり、音楽家や舞踏家がコンサートを行い、原爆展や平和アート展に、1時間にわたる原爆をテーマにした演劇『父と暮らせば』を加えている。祈念やアートを通して、国境を超え、アメリカ人、日本人、様々な人種が集い、平和のメッセージをそれぞれの立ち位置から発信していく。「今年の8月5日、8日、9日には皆さんも足を動かして、それぞれの会場に来て、平和のエネルギーを心身で感じてもらいたいのです。ニューヨークから日本へ、アメリカへ、そして世界へ向けて、皆様と共に平和の鐘を響かせていきたいと思います」と話す。(三浦良一記者、写真も)


 大阪出身。1983年に京都の龍谷大学仏教史学科卒業。大阪府高槻市にある行信教校で梯實圓師より真宗学を学び,1985年に海外開教使として西本願寺より北米開教区に派遣。最初の寺はシアトル別院(1985年ー1989年)、カリフォルニア州フレスノ郊外パレア仏教会(1989年ー1994年)を経て、1994年にニューヨーク本願寺仏教会へ赴任。2010年2月に米国仏教団から勤続25年の表彰を受け2018年にNY平和ファウンデーションを創設、代表に就任。著書に『ニューヨーク坊主、インドを歩く』(現代書館、2003年)と『マンハッタン坊主、つれづれ日記』(現代書館、2010年6月)、「卍とハーケンクロイツ』(現代書館、2013年6月)がある。

巨大回転すし店マンハッタンにオープン

 マンハッタンのミッドタウンに7月10日、新感覚の回転寿司レストラン「回転寿司ノーマッド」がオープンした。5番街に面した路面店で、広々とした5000平方フィートの店内に125席。高速レーンに乗せられた寿司や食事が各ゲストの席まで届けられるエンターテインメント性にも溢れたレストランとなっている。マグロ、ヒラメなど一皿4ドル50セントからあり、握り、手巻き、巻物の3種類から、テーブルのタッチパネルで注文すると、2、3分で3段ある高速ベルトコンベアに乗って、テーブル真横に到着する。飲み物はロボットが運んでくる。食べた皿は、従業員がてきぱきと片付けて行くが、タッチパネルの「オーダーヒストリー」をクリックすると食べた枚数と値段が表示される。現在はコストの関係でウニ、トロ、イクラは扱っていないが、卸し値の相場が下がって来ればメニューに加えるという。ニューヨーク市では保健局の規定で、生魚を回転レールに乗せて回すことが禁止されているため、注文が入ってからテーブルに届ける「シャトル寿司」方式を採用している。普通に食べると、予算は1人、飲みもの別で40ドル程度になり、決して安くはないが、ハイエンドな寿司屋さんばかりのマンハッタンで、家族連れで寿司を楽しめる場所として喜ばれそうだ。


Kaiten Zushi Nomad

276 Fifth Avenue

New York, NY 10001

Tel 212-532-5665

11:00-23:30

Instagram;@kaitenzushi_nomad

教師辞めて米国で女優に

女優

筒井あづみさん

 ニューヨークで10年以上女優として活躍する日本人女性、筒井あづみさんは、8月に3公演がイーストビレッジで予定されているシェイクスピアの「じゃじゃ馬ならし」をもとにしたコメディー劇「Shrew You」に1人4役で出演する。女性4人のキャストで、シェイクスピア作品の中でも最も性差別的ともいわれる同作品に挑戦する。

 出身は大阪で、京都大学総合人間学部を卒業後、京大大学院修了を経て奈良女子大附属中学の英語教師として一旦採用されたが、学生の頃からアメリカに住みたいという夢があり、自分のやりたいことが本当に教師でいいのかを自問し、1年後ニューヨークで芝居を学んでみようと思い立ったという。2010年に来米した。現在ニューヨークで俳優業をしている。

 高校生の頃テレビで深夜にアメリカドラマを初めて見たが、それがアメリカへの憧れに繋がったのかもしれないという。

 ニューヨークで演劇学校に2年通ったあとはオーディションに応募する毎日が続いたが、コロナ禍になってからは、現在も98%近くがビデオ審査だという。現在はシェイクスピア劇団である “Hamlet Isn’t Dead”に所属。公演前は台詞を覚えるのはもちろん、シェイクスピア劇の独特の言葉遣いやリズム、言葉の意味や正しい発音を調べるところから始めなくてはならないので大変だ。

 今回の作品「Shrew You!」は、じゃじゃ馬な娘の姉が先に嫁がないと結婚できない妹とその求婚者たちが、あの手この手で姉を結婚させて淑女にしていく話。筒井さんは主役の妹、ビアンカや男役のトラーニオ、ホーテンシオ、仕立て屋の4役を演じている。同作品は、女性蔑視的とも取られかねない表現や台詞が多く含まれており「議論のある作品なのですが、それを女性のみのキャストで現代風に書き換えるというのがコンセプトなんです」という。「劇団は、ものすごくうまい役者がそろっています。日々彼らとリハーサルやワークショップをしたり、舞台をやっていくと、彼らの知識量や、易々とシェイクスピア作品を演じていける力量に圧倒されます。ただ、そのような環境で学べることは非常に有益です。私は英語が母国語ではないけれども、だからこそ人と違う何かを提供していけるのではないか、私なりのやり方で劇団に貢献していけるのではないかと思っています」と語った。

(三浦良一記者、写真は本人提供) 

コメディー版じゃじゃ馬ならし

8月中に3公演

 ニューヨークで活動する日本人女優・筒井あづみが、アンダー・セントマークス(セントマークス・プレイス94番地)で上演されるシェイクスピアの「じゃじゃ馬ならし」をもとにしたコメディー「Shrew You!」に出演する。女性のみのキャストで、シェイクスピア作品の中でも最も性差別的ともいわれる作品を、シェイクスピア劇団「Hamlet Isn’t Dead」 のアーティスティックディレクター、デイビッド・アンドリュー・ローズ が現代的な視点で大胆に書き換えている。監督はソフィア・カーリン。同作品は「2023・リトル・シェイクスピア・フェスティバル」の一部で、人形劇や音楽の生演奏などもある。上演日は8月11日(金)午後8時、12日(土)午後9時、18日(金)午後8時の3回。

 入場料は25ドル(ストリーミングは20ドル)、チケット・詳細はウェブサイトhttps://www.frigid.nyc/event/6897:468/を参照。

devotions 松山スタジオ7人展

天理文化ギャラリーで

 ブルックリンの松山スタジオにアシスタントとして在籍する日本人アーティスト7人の第2回目のグループ展が1日からマンハッタンの天理文化ギャラリー(西13丁目43番地A) で今月9日(水)まで開催されている。

 展示会コンセプトは展示会場からインスパイアされたキーワード”devotions”を共通テーマにそれぞれの解釈で表現している。献身、真心、精進、礼拝、没入といった意味合いがある。参加アーティストたちはばらばらな経歴の持ち主で、池田尚樹、小野原和紀、川植隆一郎、深谷成子、大槻素子、増田裕士、日吉拓哉。

 増田はモンスターのような自分にとっての「敵」と思える相手の気持ちを一歩下がって考えることの必要性を問いかける作品を2点出品している。「良い想像力と悪い想像力」の両方を持つ人間を表現した。

 小野原は歌舞伎の大道具に出会い、背景画家として12年間活動。文化庁選定保存技術保存会の講師。ニューヨークに来て1年。新しい挑戦としてシルクスクリーンを手がけ、流れという観念的なものを、波、編む、折るなど祈りで捉えた。 

 大槻は東京造形大学で学士号と修士号を取得。誰もが一度は見たことのある風景を独特の視点で切り取る。パーティーの象徴のケーキを大キャンバスに花火を逆に小さいキャンバスで表現した違和感を表現。共にタイトルは「SCENE」。

 池田は会社経営の傍ら2020年に現代美術家として活動を開始。「何も考えないでたまたま絵になる抽象画だが、どこで止めるかは、レシピが止まる瞬間が明確に分かる。NYには壁画が多くあるので作品は大きい方が強いと思う」。

 川植は日常生活での発見を独自の視点で描く。今回は自分の内面を表現したという独特のキャラクターをさらにデフォルメして登場させた作品数点を出品している。生活環境の日米変化でモチーフの表現にも変化を感じるそうだ。

 深谷は、14歳の時にアメリカへ引っ越したが感情を他者と共有することが難しかった。しかしアートは自然の美しさと作家自身の感情を他者と共有することを可能としてくれたという。信仰の象徴である神殿の大作と日常の生活の中にある小さな幸せの光景を描く。

 日吉は今年3月に多摩美術大学卒業後4月にNYに移住した。バイオリニスト葉加瀬太郎の「SONGBOOK」のジャケットアートワークを手掛けるなど、活動の場を広げる。今回は浮世絵のデザイン寄り技法とグラフィティーとを融合させた作品をレンガにスプレーで描いた。作家が揃うオープニングレセプションは8月4日(金)午後6時から8時まで。(三)