【今週の紙面の主なニュース】(2023年9月23日号)

(1)100歳で献茶 国連本部で  千 玄室大宗匠

(2)暮らしのテーブル 古伊万里とティファニーで彩る

(3)日本食に活気戻る NY共同貿易レストランエキスポ盛況

(4)正義は庶民のために シネマ映写室

(5)富士宮やきそば学会が優勝 JAPAN Fes 粉もんコンテスト

(6)日本芸能RANMAN  10月7日カーネギーホールで

(7)Brooklynのヤマモトさん(1) Greenpointで東欧ショッピング

(8)生き生きEATS 環境と健康に優しい薬膳料理

(9)地下鉄の思わぬ預言者 ニューヨークの魔法

(10)日本のいいとこ再発見 茨城県境町 ふるさと自慢旅案内

「茶の器に地球の緑」

100歳で献茶、国連本部で
千 玄室大宗匠

 裏千家の第15代家元、千 玄室大宗匠(100歳)が13日、ニューヨークの国連本部で献茶式を行った=写真・国連テレビ=。国連の高官や各国の国連大使らおよそ100人が集まった。「お茶の器は丸い地球のようなもの。中を覗くとそこにお茶のパウダーの緑があります。地球で緑が一番大切です。手の中に小さな地球を持っていると思って、お茶を楽しんでください」と述べお茶を通じて平和を祈りたいと挨拶した。

 同日朝にはアントニオ・グテーレス事務総長、デニス・フランシス第78回国連総会議長が、国連本部前にある日本庭園で、国連平和の鐘を鳴らした。今月22日の国連平和デーを前に日本政府国連代表部の石兼公博大使がホスト役となって式典を行ったもので、2023年の国際平和デーのテーマは「平和のための行動・ グローバルゴールに向けた私たちの野望」。

 写真右は前列左から 国連本部日本庭園の設計者である阿部紳一郎氏、平和の鐘の建設を提案した中川千代治氏の娘である高瀬聖子氏、裏千家茶道十五世大宗匠の千玄室氏、石兼公博国連日本政府代表部大使夫妻、アミナ・モハメド副事務総長、デニス・フランシス第78回国連総会議長、アントニオ・グテーレス事務総長。(Photo UN Photo/Cia Pak)

古伊万里とティファニーで彩る秋のハーモニー

大石育子の暮らしのテーブル

 一見不思議な組み合わせですが、和食器をあまり持たず、海外で生活するからこその和洋のミックススタイル。秋のぶどうの収穫時期と合わせて赤ワインとともに美味しいお肉をおうちで楽しむテーブルをつくってみました。

 使用した器は1800年代江戸後期に現在の佐賀県有田で作られた古伊万里。松竹梅の文様は吉祥文様。

 冬場の寒い時期に緑の葉をつけ力強く生きている松や竹、色のない寒い季節に美しい花を咲かせる梅。縁起の良い植物の集まり。松は長寿、竹は子孫繁栄、梅は春の訪れを告げる歓びの象徴。

 お皿の周囲を囲む亀甲文様は、亀は長生きをすることから長寿の象徴、吉祥文様として用いられる。

 赤が多様されている器が多い古伊万里の中で珍しい色合いで気に入って手に入れたもの。

◆秋の和洋のアイテムをかけ合わせるポイント♪

Point1 和洋の器の色味を合わせてみよう♪

ティファニーブルーはどうしても色のイメージが強いので何かと合わせるという考えが浮かびにくいのですが、和にも青緑色といういい色があって、一見バラバラなようですが案外相性が良いのです。「海外で愉しむ和のカタチ」としてその生活スタイルとも合って意外としっくりきます。

 Point2 NY限定のエスプレッソカップ♪

 大きなサイズではなくあえて小さいもので。フィンガーフードやウエルカムドリンクにもGood。少しティファニーらしさとNYらしさを主張するのにちょうどいい小物です。

Point3 秋冬の素材で季節感を♪

 皮革や毛糸など温もりのあるものをテーブルに取り入れて秋らしさを演出。まだ秋もそこまで深まっていないのでベースの色をライトグレーにして初秋らしく。色身をおさえることでお肉の赤やその他食卓に乗るものが映えるテーブルになるかと思います。

 皆様もぜひお手持ちの器で和洋のミックステーブルをつくってみてくださいね。

大石育子(Ikuko Oishi)

インテリアコーディネーター、食空間プランナー、日本クラブカルチャー講座講師。東京ドームテーブルウェアフェスティバル2019,2020年入選&奨励賞受賞。2023年佳作受賞&入選。

atelierdeikukonewyork.themedia.jp

日本食に活気戻る

NY共同貿易主催

レストランエキスポ盛況

 ニューヨーク共同貿易恒例の日本食レストランエキスポが4年ぶりに戻ってきた。第27回目を迎える今回は、153社が参加し、パンデミック以前の活気を取り戻した。展示・販売だけでなく、その日限りの特別ディールもあり、当日は、レストラン関係者、食品取扱関係者など大勢の入場者で賑わった。酒蔵ブースでは36社が新しい酒を紹介。

 ハワイに本社を置くサンヌードルは、今年はラーメンの麺ではなく、まぜ麺と焼きそばを初出品した。まぜ麺はパスタのフェットチーネとうどんを足して2で割ったような力強い歯応えが特徴。同社はニュージャージー工場に加えて今年オランダのロッテルダムにも工場を建設し、欧州の日本食ブームをNYから支えるという。

 また、自販機大手のサンデン・リテール・システム(本社東京)は、今年初めて冷凍食品の自販機を米国展開する。加熱すればすぐ食べられる冷凍醤油ラーメンや、焼き餃子、エビフライ、唐揚げなどが冷凍のまま出てくる。消費者は電子レンジで加熱するなどして食べることができる。

 ジェトロNY事務所の三浦悟所長は「全米で2万3000軒の日本食レストランがあり、これは2010年の1・6倍。またNY市内で星を取ったレストラン73件のうち、17件が日本食で、かなり注目されている。純和風、フュージョンも含め全米の日本食普及に努めていきたい」と話す。

 NY日本総領事館経済担当の田井貴領事は「ニューヨークの日本食の普及状況はかなり進んでおり、日本政府は2030年までに輸出を5兆円にまで増やしたい計画で、ホタテやブリ、鯛などの対米輸出をジェトロと協力して後押ししていきたい」と話す。

 主催したニューヨーク共同貿易の大畑正敏社長は「米国の健康志向が日本食に拍車をかけている。日本からの輸入は、円安もあるが、輸送費などのコストが高騰している中で、その他の米国内の物価よりも値上げ幅は少ないのではないか。中国向けに生産していたホタテなどはアメリカに振り向けて需要に応えていきたい」と話していた。当日はセミナーコーナーも特設され、従業員10人以上のレストランに加入が義務付けられた401(K)について、モルガンスタンレーの竹田勝男さんが講演し、レストランオーナーたちが聴講した。

正義は庶民のために

The Equalizer 3

 シリーズ第3弾にして最終章。主人公は元CIAの凄腕工作員で元海兵隊のロバート・マッコール。妻の死を機に引退してからは窮地に陥っている善良な市民たちを救う日々を送っている。昔のように国家に関わる危機でなく自分の周りにいる同胞たちを見守るのが今の彼の使命なのだ。

 シリーズを通して主人公マッコールはデンゼル・ワシントン、監督は「Training Day」のアントワン・フークア。悪を徹底的に懲らしめ鉄槌を下し、マッコール流で正義を貫く。「ジョン・ウィック」のように壮絶、凄惨なシーンもあるが、随所に出てくる主人公と市井の人とのほのぼのとした関わり合いがこのシリーズの魅力でもある。

 マッコールはイタリア・シチリア島のあるワイナリーにいた。覚せい剤や人身売買などに加え最近ではサイバー犯罪にも手を染め庶民から金を奪っている組織の親玉、ロレンゾのアジトだ。情報収集から戦略、実戦まで現役時代にマッコールが培った能力がイタリアの端っこにいたロレンゾを探し当てた。目的を果たしたマッコールだが、一人生き残ったロレンゾの息子に後ろから銃撃を受け、瀕死のところを田舎町アルトモンテの地元住民に助けられた。

 風光明媚でのどかな雰囲気、人々は穏やかで優しい町。マッコールは養生するうちにボストンに帰らずここでずっと暮らすのもいいかもしれないと思い始めていた。行きつけのカフェでティーを頼み、魚屋で活きのよい材料を仕入れおいしいワインと共に夕食を楽しむ。

 しかし町の人々を知り、彼らの暮らしぶりが分かるにつれてマッコールのアンテナが作動し始める。のんびりとした田舎暮らしはもう少し先のようだ。

 マッコールが信頼するCIAエージェント、エマを演じるのは2004年のヒット作「Man on Fire」で当時子役でワシントンと共演したダコタ・ファニング。18年ぶりの共演だが相変わらずいい味を出している。1時間49分。R。  (明)

(写真)悪い奴らには容赦なし Photo : Soni Pictures


■上映館■

Regal E-Walk 4DX & RPX

247 W. 42nd St.

AMC Empire 25

234 West 42nd St.

AMC Loews 34th Street 14

312 W. 34th St.


富士宮やきそば学会が優勝

JAPAN Fes 粉もんコンテスト

 今年、全21回開催されている日本のストリートフェア「ジャパンフェス」の第5回「粉もんコンテスト」が、9月16日と17日の両日チェルシーで開催された。この日のために日本から本場大阪のたこ焼きの名店「Goonies」、本場広島のお好み焼きの名店「電光石火」、静岡から「富士宮やきそば学会」、熊本から熊本発祥の黒酢を使ったチキン南蛮の名店「たかもとや」や、仙台から昔ながらの懐かしのナポリタンの名店「ハングリーハングリー」が参戦した。来場者の投票により富士宮やきそば学会が、総投票数515ポイントで見事優勝した。2位は367ポイントを獲得した「Goonies」、3位は364ポイントの「電光石火」だった。優勝した「富士宮焼きそば学会」の理事で海外マーケティング担当の勝呂早希さんは「今年5月のジャパンデーに次いで2度目の来米ですが、ジャパンデーの時と客層も雰囲気も随分違って、やきそばというものを知らない人が多かったです。感想を聞くとアメージング、すごく美味しいと喜んでいただけたので、私たちもPRのしがいがありました」と話していた。 

(写真) 優勝した「富士宮やきそば学会」(中央)、2位の「電光石火」(右)、3位の「Goonies」

 次回のジャパンフェスは9回目となる大人気のラーメンコンテストで10月7日(土)と8日(日)に開催される。今回は日本から5店舗を迎え、日本各地から集まった料理自慢のこの日だけしか味わえないラーメンで優勝を目指して競い合う。会場は7日がイーストビレッジ(4番街9〜11丁目)、8日がアッパーウエストサイド(ブロードウエー75〜77丁目)にて、午前10時から午後6時まで。詳細はウェブサイトhttps://www.japanfes.com

日本芸能RANMAN

八王子ドリーマーズなど
10月7日カーネギーホール

 和太鼓、殺陣、舞踊、盆踊り、歌など、日本の文化や芸能をエンターテイメントとして紹介するチャリティーイベント「RANMAN」が10月7日(土)午後2時から5時まで、カーネギーのザンケルホール(57丁目と7番街の角)にて開催される。(主催 : 株式会社J’SHA / 芸能プロダクションACTVISION、プロデューサー小澤明美)

 パフォーマンスの出演は、八王子ドリーマーズ、東京ドリーマーズ、若波章柳、チーム桜魁、Rin、後藤修慈、10・QuatreAZUMA-盆ダンスチーム。シンガーの出演は、原めぐみ、瀬戸カオリ、林こずえ、東里香、関口満紀枝、山桜万理花、秋山美保、畑中梨佳、下田藤百史、平田深冬、カルミナ、美花ほか。入場無料。チケット申し込みはEメールjeizushaa@gmail.com で只今受け付け中。

(写真)左:八王子ドリーマーズ、(右)原めぐみ

Brooklynのヤマモトさん【1】

 Brooklynのグリーンポイントはポーランド人街として知られており、Manhattan Avenue沿いにはポーランド料理やポーランド雑貨店が軒を連ね、買い物にぴったりです。見たこともないパッケージから味を想像するのも楽しい。中でも保存食が充実していて、ジャムやはちみつの種類の多さは圧巻です。ヤマモトも買い物のために足をのばすことが多いですが、本当に物価が安くてすごく助かっています。中でもポーランド人経営の肉屋は品質も価格も素晴らしいので、ぜひ一度行ってみてくださいね!

 ヤマモトレミ 89年生まれ、福岡県出身の漫画家。2017年に仕事の異動で東京からNYへ移住。日本食スーパーで社員として働きながら趣味で漫画を描いていたら楽しくなってしまい2021年に退職、漫画家として本格的に活動を開始。2023年現在ブルックリン区在住。単行本発売中!

(Instagram:@Yamamotoinnyc)

環境と健康に優しい薬膳料理

プロに聞く、生き生きEATS(イーツ)

元気と美味しいを求めて料理の達人が腕を振るう (41)

 今月の生き生きEATSは、ニューヨーク、ニュージャージーで栄養士をしながら、健康に良い和食、「薬膳」の普及に努められている富岡美智子さんに、野菜をたっぷり使った味噌汁とおひたし、和風サラダ、胡麻豆腐を紹介してもらいます。これだけあれば立派な一汁二菜の懐石料理ですね。環境と心身の健康に優しい有機野菜を使った料理です。

https://michinutrition.com/


◾️みち庵 薬膳おひたし

お好みのアレンジ: すりごま、紫蘇、柚子・ レモン皮、納豆、鰹、海苔でトッピング

 「おひたし」は、誰でもほっこりする一品。季節の野菜を軽く茹でて、胡麻、醤油でいただく、食卓はもとよりお弁当に欠かせない一品です。サラダ感覚でいくらでも食べて、それでいて身体にもお財布にも優しい、そんな一品を紹介いたします。

【材料】(2人分) 

季節の野菜 (ほうれん草、菜の花、ブロッコリーローブ) 1束

乾燥ひじき 大さじ1(水につけておく)

 胡麻ドレッシング(多めに作ります)

生姜のすりおろし 小さじ1 

炒りごまの擦りおろし(殻付き・黒胡麻) 2〜3大さじ

白味噌 大さじ1(もしくは 醤油 小さじ1)

みりん 大さじ 1

アップルソース(無加糖)  大さじ2

乾燥クコの実 大さじ1

【作り方】

(1) 沸騰した約2カップの湯に塩を一掴みくわえ、あらかじめよく洗い、水気を切っておいた野菜を軸から、水気を切ったひじきを加える。ほうれん草の場合は約1分で充分。

(2) 茹であがった野菜とひじきを手早くザルにとり、冷水に5分程度つけ、水気を切る。

(3)胡麻ドレッシングの材料を全部容器に入れよく混ぜます。メイソンジャー等の蓋付き容器を使うと便利。

(4)水気をきっておいた野菜を3センチに切り、胡麻ドレッシングを約大さじ1加え、全体が馴染むようあえる。


◾️みち庵 薬膳胡麻豆腐

トッピング例:薬味(紫蘇、青ネギ、柚、 梅干し)ワサビ味噌

 胡麻豆腐は厳しい修行僧の栄養を補給する代表的な一品で、茶懐石のお馴染みの料理です。 精進料理とはもともと禅僧の日々の修行の一部でした。作ること、いただくこと、片付け全てが修行であり力源です。肉・魚・卵・乳製品は使わない日本古来のビーガン料理です。こでは簡単に入手できる市販の煉ごまを利用します。中でも”タヒニ Tahini”はスーパーマーケットで簡単に入手できます。

【材料】

タヒニ・練り胡麻 50g(100%胡麻)

本葛 50g (なければ片栗粉)

水 400ml(もしくは冷蔵庫で寝かした昆布だし汁)

【作り方】

(1) 水を入れた鍋に葛を半量ずつ加え、随時木ベラで葛粉のかたまりが残らないようよく混ぜる。次に煉ごまを加え鍋の底からよく混ぜ合わせる。

(2)全体が溶けたところで中火にかけ、底から丁寧に練るように混ぜる。約5分して周りから少しずつ固まってきたら弱火にして、丁寧に練るように混ぜ続ける。ここで根気が大切。

(3)全体が糊のように固まり、木ベラから落ちないくらいになってきたら火をとめ、余熱で約1〜2分混ぜる。

(4)あらかじめ、水で濡らしておいた流し缶(小鉢、ケーキ型)に流し込み、表面に泡や甲乙を濡れた手で軽くおさえ整える。表面をラップし室温で余熱をとった後、冷蔵庫で60分間冷やす。


◾️みち庵 薬膳季節の具沢山味噌汁

好みの薬味:ねぎ、三つ葉、貝割れ、ゆず、とろろ昆布 残ったら、豆腐・玄米・卵、うどん・餅を加えて立派な一食

 「薬膳味噌汁で国際親善を」国籍・年齢・宗教を超えて誰からも愛される癒しの味、それがこの具沢山味噌汁です。季節の野菜をじっくりと、昆布と干し椎茸と一緒に煮込むことで、それぞれの野菜から出る自然の味と栄養が混ざり合った、芯からホッとする味と香りが心身を癒してくれます。材料はあくまで基本、里芋、牛蒡、かぼちゃ等季節野菜や冷蔵庫で眠っている野菜を使いましょう。

【材料】(2人分) 

水 3−4カップ 

昆布 約10cmx 10cm(2cm角に切っておく)

干し椎茸 3−4個

玉ねぎ 中1個(1-2mm 幅のスライス)

ジャガイモ(さつまいも) 中1個(皮付きで2cmの角切り)

大根・かぶら カップ1(イチョウ切りもしくは短冊切り)

生姜 みじん切り 大さじ1 

クコの実 大さじ1

木綿豆腐(firm)  1/2パッケージ (2cm x2cm)

乾燥わかめ 大さじ1 

白みそ 大さじ1−2

【作り方】

(1) 鍋に水、2センチ角に切った昆布、軽く拭いて手で各4〜5個に砕いた干し椎茸を入れ強火にかける。沸騰したら玉ねぎ、にんじん、芋類、大根、生姜、くこの実を加え中火で約10〜15分、柔らかくなるまで煮る。蓋を1〜2センチあけ吹きこぼれに注意。

(2)  弱火のまま豆腐とワカメを加え、その間に2分の1カップの煮汁と味噌を合わせておく。

(3) 弱火のまま2で用意した味噌を全体に満遍なく合わせ、火を止め、蓋をして1〜2分、味を全体に染み込ませる。

地下鉄の思わぬ予言者 

 平日の午後七時頃、ニューヨークの地下鉄に乗るやいなや、いつものようにバッグからノートパソコンを取り出し、膝の上に置いた。パソコンはA4サイズだから、私の体とほぼ同じ幅だ。この本の原稿を書くために画面を開けたとたん、右隣の女の人の視線を感じた。じっと私を見つめているようだ。 

 ニューヨークの地下鉄やバスで、携帯端末をいじったり電子書籍を読んだりする人は増えたが、パソコンを開いて作業している人はほとんど見かけない。ぶつかってもいないのに、パソコンが邪魔だと言いたいのだろうか。

  その人は私の耳元で、呆れたようにつぶやいた。

  Always working, huh?

  いつも仕事してんのね?

 意外なひと言だった。嫌味のある言い方ではなく、むしろ、からかっているようだ。 

 私は通勤していわけではないので、地下鉄に乗る時間は決まっていない。だから、 前に私を見かけた、ということでもないはずだ。

  オフィスアワーはとっくに過ぎているのに、いつまでも働いているワーカホーリックの日本人だと思われたのだろうか。

  締切があるのよ、と私が笑って答えた。 

 あと二週間で、本を書き上げなきゃならないの。

 とは言ったものの、とても間に合わない、と半ばあきらめていたときだった。

 その人は納得したようにうなずくと、きっぱりと言った。まるで予言者のように。 

 You’ll do it.

 あなたは、やるわよ。 

 あなたはできるわよ(You can do it.)ではない。あなたはやるわよ(You will do it.)なのである。当然、二週間後には、書き上がっている、とでも言うように。

  次の駅でその人は、さっと立ち上がると、スカートを翻して降りていった。

  私も自分につぶやいてみる。

  I’ll do it.

  私は、やるわよ。 

 思わぬ予言者の言葉どおり、私は二週間で原稿を書き上げた。 

 

 このエッセイは、シリーズ第5弾『ニューヨークの魔法のじかん』に収録されています。

https://www.amazon.co.jp/dp/4167717220

茨城県境町編・ふるさと自慢旅案内

東京から1時間で楽しめる自然と近未来

日本のいいとこ再発見

 東京都心から50キロメートル圏内、車で1時間。埼玉と千葉に隣接し、関東平野のほぼ中央に位置する茨城県境町は、江戸時代に水運を活かし「河岸のまち」として栄えてきました。川と寄り添い豊かな恵みを育んできた境町は、近年、自治体初の自動運転バスの定常運行など、最先端の技術を取り入れたまちづくりを行っており「自然と近未来が体験できるまち」となっています。今回は、多様な特産品や美しい河岸の景色、変わらない日本の暮らし感じることができるまちの魅力をご紹介します。

 初めてアメリカに輸出された日本茶「さしま茶」

 茶栽培が盛んで、利根川流域の肥沃な土壌と猿島台地の地の利に育まれた「さしま茶」は日本を代表するブランド茶のひとつです。夏は暑く、冬は強い北西の風によって冷え込む気候と肥沃な土壌といった環境で育つため、茶葉に厚みがあり、製茶すると濃厚な味と香りが立ち昇りコクのあるのが特徴です。

 実は、日本で初めてアメリカに渡った日本茶といわれています。きっかけは1853年にペリーが浦賀に来航し幕府に開港と交易の開始を強く迫った際のこと。当時「さしま茶」の国内各地への販売を託されていた地元の豪農・中山元成氏は、海外交易の必要性を感じました。そして、アメリカ総領事に接触するなどして「さしま茶」の宣伝に奔走しました。1859年、日米修好通商条約発効と同時に、全国の茶名産地に先駆けて「さしま茶」のアメリカ輸出に成功しました。海を渡った初の日本茶として名声を博した「さしま茶」は、今でも大切に引き継がれています。

 個々の生産者が自園・自製・自販の茶業経営を展開しており、一段とお茶のうま味を引き立たせています。近年は、新製品の開発なども力を入れており、フレーバーティーや和紅茶なども販売されています。また、機械製茶のみではなく伝統の茶揉み製法も技術継承されており、初めてアメリカへ輸出された当時と同じ味わいも楽しめます。ぜひ、飲み比べてお気に入りの茶葉を見つけてみてくださいね。

(写真上)クラフトティーが楽しめるカフェ「茶cafe&shop chabaco」(画像:境町観光協会HPより出典)

 自動運転バスでまち巡り

自動運転バスのデザインもそれぞれ違うのでぜひ比べてみてください! (画像:境町HPより出典)

 境町は日本の自治体で初めて、自動運転バスを公道で定常運行し始めました。現在は、常時2ルートを運行しており、料金は無料で誰でも乗ることができます。自動運転バスは町民の足として活用されているだけでなく、バスの停留所が町の各観光スポットの近くに設定されているので、自動運転バスで街巡りを楽しむことができます。バスの窓から見える街並みは、レトロ感のある商店街や古い日本家屋。タイムスリップしたような、懐かしい空間が体験できます。

 ここで、自動運転バスで訪れてほしい観光スポットをいくつかご紹介します。まずは、「道の駅さかい」です。町の新鮮な野菜や果物が安く手に入るほか、境町の特産品もそろっています。また、友好交流協定を結んでいる沖縄県国頭村のアンテナショップもあり、沖縄のご当地グルメを味わえ、沖縄土産を買うこともできます。「道の駅さかい」には、「境町のおいしいを丸ごとサンド」をコンセプトにし、地元の食材を使ったサンドイッチ専門店「さかいサンド」も施設内に併設されているので寄ってみてください。境町産の小麦を使ったパンに町でとれた野菜やフルーツを使ったサンドイッチは絶品です。イートインスペースもあるため、その場で味わうことができます。おすすめは「常陸牛のローストビーフサンド」と「イチゴクリームカスタードサンド」です。さらに、敷地内には「さかい河岸レストラン茶蔵」も併設されています。レストランの二階にある「SAKAI TEPPAN BY WOLFGANG ZWIENER」では、地元の食材を使ったコース料理がライブ感たっぷりの鉄板焼きスタイルで楽しむことができます。

 おいしいものを食べた後は、「S-Gallery(粛粲寶美術館)」でゆったりと美術鑑賞を。白を基調とした空間が作品1点1点を引き立てています。実は、「さかいサンド」「さかい河岸レストラン茶蔵」「S-Gallery」などの建物は、国立競技場を手掛けた隈研吾氏が設計しています。境町には隈氏が設計した建物が全部で6棟あり、建築家や建築ファンも多く訪れます。木材を基調とした「和」を感じさせる建物は、境町のレトロな街並みとうまく調和しています。自動運転バスの時刻表やルートについては脚注のホームページで確認ください。

(NY自治体国際化協会「クレア」、高橋真里、茨城県境市派遣)

■たびのメモ・案内板■

■さしま茶協会代表事務局:http://sashima-cha.jp/

■境町で自動運転バスを定常運行【自治体初!】

https://www.town.ibaraki-sakai.lg.jp/sp/page/page002440.html

■【アクセス】

①高速バス 境町ー東京駅 

 東京駅八重洲口から高速バス境町東京線で約90分

②鉄道・バス

 ●東武鉄道 東武スカイツリーライン(東武伊勢崎線)、東武動物公園駅で下車。そこから朝日バスで「境車庫方面」に乗車40分

 ●JR 東北本線 古河駅で下車。そこから朝日バス(西口発)で「境車庫方面」に乗車40分

③自動車 圏央道(首都圏中央連絡自動車道) 

■「境古河IC」:https://www.sakaimachi.co.jp/

編集後記

【編集後記】

 みなさん、こんにちは。このたび、本紙「週刊NY生活」は、東京都港区南麻布にある都立中央図書館に閲覧所蔵海外新聞として所蔵されることになりました。同図書館は、1973(昭和48)年に、都立日比谷図書館の蔵書を引き継いで開館し、蔵書数は国内の公立図書館では最大級の約225万冊を所蔵しています。本紙は、すでに国立国会図書館(千代田区永田町)と東京大学の本郷と駒場の両図書館でも閲覧が可能ですが、今回、都立中央図書館で本紙が閲覧可能になったことで、さらに海外と日本の読者の皆様に必要な情報を伝えていくという創刊以来の使命にさらに専念して参る所存です。これからもどうぞよろしくお願いします。今週も息切れするほどの、ダイレクト取材が立て続けに押し寄せ、綱渡りの綱から何度も落ちそうになる醍醐味を味わいました。自分で書いた原稿の誤字脱字はなかなか見つけられないものですが、本紙は1本の原稿に対して8人の編集者の目を通しています。が、それでも見つける場所は人様々。欄外の日付が間違っていたり、号数が間違っていたり、人の指摘で気が付くこと多しですが、国会図書館や都立中央図書館など、なんていうか、絶対にきちんとした書物しか扱わないところに入れていただくことの重責をますます感じてしまいます。独自取材とオリジナル原稿のみで紙面を作る、本当にばかばかしくなるような地べたを這うような紙面は、AIには真似のできないものを作りだす原点なのかなとも思います。ただこの編集後記だけは、誰の校閲の目も通らずに、ただフラフラと世に出ているので、ツッコミ所満載かもです。なので活字にして印刷するのは、恐れ多いのでしばらくは今のスタイルのままでいくつもりです。そうなんです、新聞紙にインクの匂いのする活字が載っかることに畏敬の念をまだ持っている世代なのです。そのうち消えていなくなりますが、もう少しだけ頑張ってみます。それでは皆さんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)