宇宙開発の興奮を感じる体験
JAXAワシントン駐在員事務所 所長
小野田勝美
NASA International Space Apps Challenge (ISAC)は、世界中から185か国22万人以上が参加するイベントで、世界で320以上の会場で地域予選が行われます。ボストン会場には地域の日本人チームも参加し、米国在住日本人コミュニティに対しても大変貴重な機会を提供していると思います。各地域予選はボランティアで成り立っている中で、これまでBinnovativeが10年間にわたりボストン会場を主催し続けておられることに敬意を表します。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、日本の中核的宇宙機関として、NASAと協力して月火星探査計画アルテミスなどを推進しています。私はJAXAのワシントンDC駐在員事務所長を務めていますが、Binnovativeさんのお誘いにより、ここ数年個人の資格でNASA ISACボストン会場の審査員等として参加しています。子供から大人まで幅広い参加者が、科学技術からデータ利用、アートまで様々な創造性を発揮するのを楽しく拝見してきました。参加者一人一人にとっても得難い宇宙体験になっていると思います。
また、世界中から多数の参加がある中で、ボストン会場からGlobal Winnerが出るということは、素晴らしいことだと思いますし、他の参加者にとっても非常に励みになると思います。これからも皆さんのチャレンジを期待しています。Global Winnerになると、NASAのロケット打上げに招待される可能性があるとのこと。米国では、ケネディ宇宙センターをはじめ各地で年間数多くの打上げが実施されているので、米国在住の皆さんは、機会あればぜひロケットの打上げを観に行かれると、五感で宇宙開発の興奮を感じる素晴らしい体験ができるでしょう。
▽2021年、2022年にGlobal Winnerになった2チームの作品について ローカル審査員から見た評価ポイント
チームJimmy in the Box(2021年)は、ジェームズウェブ宇宙望遠鏡(JWST)のプロトタイプを折り紙で作成し、さらに画像が取れて現在の位置を測定できる機能も備えたものでした。JWSTへの強烈な憧れを感じる作品で、グローバル審査をも勝ち抜いてArt & Technology Awardを受賞し、審査員としても誇らしかったです。
チーム Earth, Wind & Flare(2022年)は、NOAAやNASAのデータを元に、地球と宇宙の天気を視覚的・音響効果によって感じられるLEDパネルを作成。科学とアートの融合した素敵な作品で、やはりグローバル審査へと勝ち抜きArt & Technology Awardに選ばれました。メンバー紹介で「JAXA研究者になることを夢見ている」と書いてくれたことも嬉しかったです。
自分の進路に自由に挑戦を
ジョージア工科大学 航空宇宙工学部
地球大気科学部 助教授 (binnovativeメンター)
クリストファー・カー
私は2015年以来、西本会里子氏率いる Binnovative チームのメンターとして、毎年開催される世界最大のハッカソン イベント、 NASA International Space Apps Challenge(ISAC) をサポートできていることを大変うれしく思っています。
Binnovative は 10 年にわたりISACのマサチューセッツ州ボストン/ケンブリッジローカル大会を主催し、誰でも参加できる機会を提供し、バーチャルか対面かを問わず、日本人もこのイベントに参加できる機会を創出することに精力を注いでいます。 西本氏 は、参加者のチーム活動のサポート、データやハードウェアなどのリソース、そして最も重要なことに、フレンドリーでプロフェッショナルなスタッフと、よくオーガナイズされたイベントを可能にする (対面の場合) 会場、食事のアレンジなど、関係者にとってとても魅力的な体験を一貫して創り出してきました。長年にわたり、私は参加者チームのメンター、審査員、さらにはスピーカーとしても参加してきました。
私が皆さんに伝えたいメッセージは、「あなたは、他人の許可を必要とせず、自発的に何ができるでしょうか?」というものです。西本氏のリーダーシップにより、このハッカソンはまさにそれを可能にし、老若男女を問わず参加者が自分自身を触媒、つまり自分の船の船長であるとみなすことができ、自分の進路を設定する自由があるだけでなく、他の人を結集させるというチャレンジをも可能にしました。自分たちのゴールを定め、48時間にわたるそれに向けたチームワークと努力を経て、その成果を発表します。これは、Binnovative がサポートするために設立された「起業家精神」であり、一貫して継続しています。その結果、一昨年ボストンで日本の子供たちのチームが優勝し、その後も多くのチームが世界レベルで賞を受賞したことは驚くべきことでしょうか?