吉田まさかの判定負け

女子プロボクシング

勝っていた試合でなぜ?

 マジソンスクエアガーデンで10月24日実施されたIBF女子バンタム級タイトルマッチ(2分10R)で、王者・吉田実代(36=日本)が挑戦者で同級1位のシュレッター・メトカフ(39=米国)に判定0ー3(94ー96、93ー97、91ー99)で敗れた。吉田は信じられないという表情で会場の観客からも大ブーイングが起こる厳しい判定となった。

 吉田は昨年12月のIBF女子世界バンタム級タイトルマッチで、当時の王者エバニー・ブリッジスに挑戦し、判定3ー0で勝利。WBO世界スーパーフライ級王座と合わせて、2階級制覇を達成していた。

 だが昨年11月に米国デビュー2戦目でメトカフと対戦するも3ー0判定負けている。試合は1R序盤から長いジャブで距離をコントロールするメトカフに対し、吉田は相手の懐に飛び込み連打する展開。吉田のパワーある右がメトカフの顔面を強打する場面もあり、メトカフのカウンターフックやアッパーに吉田は連打で対抗、積極的な試合展開を見せた。

 後半も、メトカフの顔を強打する場面もあり、最終の10Rでも吉田の強烈な右がクリーンヒット。ともにダウンはなかったが、吉田が力強い戦いを見せた。しかし判定はメトカフだった。判定を聞いた吉田は信じられないといった表情で呆然と立ち尽くし、会場の観客からも大ブーイングがおこった。吉田のセコンドに付いた元世界3階級制覇王者ホルヘ・リナレスも「ひどすぎる採点、彼らはファイトを盗んだ」と語ったようで、この試合を配信した。

 試合後吉田は「ただただ虚しい。自分もトレーナーも審判も私の勝利を確信していたのにも関わらず、真逆の判定で。血の滲むようなトレーニングをしてきたのにも関わらず、このような報われない結果になってしまい、虚しさでいっぱいです」と涙を溜めながら話した。

 所属事務所は真偽再検討申立て、IBFに正式に異議申立を行った。事態は再試合の設定の申立てをするまでに発展している。吉田が全てにおいて命中率を圧倒的に上回っており、審判の判定は明らかにおかしいというものだ。調査結果次第では結果の修正、またはリマッチに繋がる可能性があるという。会場には100人近い日本人応援団がいたが、誰もが勝ちを疑うものはいなかった。どうしてこのような判定が出るのか理解に苦しむ結果となった。

 現在一時帰国中の吉田は6日、日本から本紙に次のようなメッセージを寄せた。「今回、私達のチームは全てを出し切り闘い、勝利を確信していただけに不可解な判定について現在IBFに提訴中です。NYに来て約2年で沢山の方々から応援を頂けるようになり感謝の気持ちで一杯です。いつも有難うございます。皆さんの応援のお陰で再び立ち上がる準備が出来そうです。これからも応援宜しくお願い致します」。

(写真)判定直後呆然とする吉田(右)(Photo : Takako Ida )