逮捕歴ある者に営業免許優先、NY州
ニューヨーク州大麻管理委員会は11月21日、36件の条件付き成人用大麻専門薬局の販売許可を承認したことを発表した。
同州大麻管理事務所は、900通以上の同認可申請を受け、今年中に合計150件の大麻販売ライセンスを発行する。同州初の大麻販売店は今年末に開店するという。今回承認を受けた36件のうち、28人は大麻関連の逮捕歴がある個人で、8件は非営利団体となっている。22日付のNYデイリーニュース紙の記事は、前科ある個人が承認の優先対象になったことについて「同委員会は、あまりにも厳しいと批判されていた制度を修正する意向を示した」と伝えている。
同州は2021年3月、嗜好用大麻の使用を合法化したが、販売許可は今回が初めてとなった。販売者の認可過程については未だ話し合いが続けられている。販売ライセンスの発行は同州全域で許可されたわけではない。連邦判事は先月初頭、同州の複数の行政地区に対して、同ライセンス発行の一時的な指し止め命令を発効した。
承認された地区では最低1件の同ライセンスが承認されているが、ブルックリンやウエストチェスター郡を含む郡や区は発行許可が下りていない。
無許可店と競争
大麻の路上取引堂々と
ニューヨーク州で嗜好用大麻が昨年2月に非犯罪化されて以来、NY市では街の至るところでトラックも含め大麻が許可なく販売されている。NY州は21日に大麻販売許可証を36件交付し(=本誌1面参照=)、合法の販売店がもうすぐオープンすると見られるが、すでに足場を築いている無許可店との競争が強いられそうだ。
他州では大麻事業に大規模な企業を参入させたりしているが、NY州が許可証を与えているのは出所者への教育や訓練を提供しているドゥー・ファンドやリサイクル事業でホームレスやエイズ患者を支援しているハウジング・ワークス・カンビナスなどの非営利団体、あるいは大麻逮捕歴のある人やその家族による小規模事業者となっている。
大麻販売は酒・ビール販売業と同じように許可制で小規模事業者が担うよう設計されている。大麻の配達とラウンジ運営も許可制で今後、交付されていく予定だ。大麻栽培には大手企業が認可されているが、医療用大麻だけであり栽培面積も10万平方フィートまでと規制されている。NY州の大麻関連の法律は不平等是正や貧困・犯罪対策としての位置付けがあり、得られる税収は貧困対策などに重点的に回されることになっている。
販売される大麻は州内で栽培されたものでなくてはならないが、無許可店で売られている大麻の多くはカルフォルニア州やコロラド州産だ。また学校や保育施設の近くに店を構えてはいけないが、そうした場所にある店もある。
州はこうした無許可販売を一掃し、完全に規制され、課税された大麻市場を目指しているものの、無許可店を取り締まることには消極的で、許可店は競争を強いられると見られている。
米国の多くの州で医療用大麻が認められており、嗜好用も18州とワシントンDCで認められている。NY州に隣接するニュージャージー州は昨年2月に合法化し、今年4月からディスペンサリーと呼ばれる販売薬局で売られている。コネチカット州も昨年6月に合法化した。最初の販売店は来年春、ウエストハートフォードにオープンする。
マリファナ・ビジネス・ファクトブックは米国での大麻の年間小売売上高は今年330億ドル(約4・5兆円)を超え、26年には520億ドル(約7・2兆円)を超えると予測。雇用数は現在の約52万人から26年には80万人を超える見込みで、経済効果は2022年でおよそ1000億ドル(約14兆円)、26年には1580億ドル(約22兆円)ほどになる可能性があるとしている。
州の規制当局と一部の業界関係者は合法的な販売店を弱体化させてしまうとして無許可店の閉鎖を求めている。アダムス市長の広報官は、市当局は何百もの事業検査をしており、違法製品の没収、罰金刑や逮捕もしていると述べている。しかし閉鎖などの厳しい措置を取っていない。閉鎖すると失業者が出てしまうためで、取り締まる代わりに合法化するよう努めるべきだという声は強い。カリーナ・リベラ市議会議員(民主党、2区)は「不安定な状態だ。社会正義を全面的に重視しているのに、違法販売しているとして黒人やヒスパニックの小事業者を逮捕するつもりなのか、複雑だ」と述べている。
「日本では犯罪」
NY日本総領事館が警告
ニューヨーク日本総領事館では、大麻について在留邦人に「絶対に手を出さないよう」領事メールやホームページ(HP)で注意を呼びかけている。それによると、日本国内では大麻の所持や譲受、譲渡などを大麻取締法によって厳しく規制している。厚生労働省HPによれば、近年の薬物事犯の検挙者数は、覚醒剤及び大麻が大半を占め、大麻取締法による検挙者数は年々増えている。大麻には中毒性・依存性があり、常習化することもままある。
日本の大麻取締法では、国外における栽培、所持、譲受、譲渡したりした場合などに罰する規定があり、罪に問われる場合があるので、在留邦人に対しては日本の法律を遵守し、大麻が合法化されている州にあっても、絶対に手を出さないよう、領事メール、HPで注意を呼び掛けている。各州において大麻使用に関して異なる規則(娯楽用・医療用とも違法とする州がある)があることも理解する必要があるとしている。
大麻による影響について専門家からは、長期的な使用によって、呼吸器系、循環器系、中枢神経系、消化器系などといった体のメカニズムに大きな悪影響を及ぼす可能性、心臓発作と脳卒中のリスクが高い人にはそのリスクが高まる可能性などが指摘されています。
また、若者の脳機能の発達に影響を与えるといった意見や精神衛生に悪影響を与えるといった意見の他、依存症やうつ病・統合失調症になるリスク、さらには大麻を入口としてハードドラックに手を出してしまうリスクなどが指摘されるなど、安易に手を出すのは極めて危険であると認識しています。
「ハードドラッグへの入り口」
NY日本総領事館が注意喚起
ニューヨーク日本総領事館では大麻による影響について「専門家からは、長期的な使用によって、呼吸器系、循環器系、中枢神経系、消化器系などといった体のメカニズムに大きな悪影響を及ぼす可能性、心臓発作と脳卒中のリスクが高い人にはそのリスクが高まる可能性などが指摘されています。また、若者の脳機能の発達に影響を与えるといった意見や精神衛生に悪影響を与えるといった意見のほか、依存症やうつ病・統合失調症になるリスク、さらには大麻を入口としてハードドラックに手を出してしまうリスクなどが指摘されるなど、安易に手を出すのは極めて危険であると認識しています」と注意喚起。
厚生労働省のホームページには、大麻乱用者による告白として数例を紹介している。大麻は「害がない」「依存性もない」といった誤った情報がインターネット上などで流されているが、「大麻は、実際にはあなたの脳を壊します。あなたの人生や周り人の人生を守るためにも、1回でも絶対に使用しないでください」と警告している。
大麻で狂った私の人生
米国の合法販売に警鐘
米国のニューヨーク州などで嗜好用大麻の販売認可が業者におり、本格的に州内での販売が始まる。(関連記事1、4面)。日本の厚生労働省のホームページには、大麻乱用者による告白として数例を紹介している。大麻は「害がない」「依存性もない」といった誤った情報がインターネット上などで流されているが、「大麻は、実際にはあなたの脳を壊します。あなたの人生や周り人の人生を守るためにも、1回でも絶対に使用しないで」と警告している。一例を紹介する。
手記 大麻によって、狂わされた人生(抜粋)大麻乱用者の告白(30代・男性)
私は、ミュージシャンの先輩から「キノコを超えるもっと良いものがある」といって大麻を勧められました。大麻を吸ってみると、曲を聴いた時の感覚がより細かく繊細に感じたり、自分の作った曲が完璧な物に思えたりして、その効果に満足しました。
私は音楽で飯を食っていくようになりたかったので、大麻を吸いながら自分の満足いく曲作りをしたいと思うようになり、先輩や知人から、継続的に大麻を買って、曲作りやイベントのたびに使用していました。
そして地元で私の認知度が上がってきた矢先、大麻所持で逮捕され、築き上げてきた地位などすべてを失いました。このときは執行猶予判決で、これを機に、大麻と縁を切り、就職してまじめに生活するようになりました。
その後、結婚し、子供も生まれ幸せな生活を送っていましたが、その間も頭のどこかでは大麻を使った時の感覚をまた味わいたいと考えている自分がいて、その気持ちを見て見ぬふりをしていましたが、数年後、偶然、大麻を一緒に吸っていた友達と再会し、大麻を勧められたことから、「一回だけなら大丈夫」という安易な気持ちから吸ってしまいました。
その結果、久しぶりに吸ったという充実感や大麻の効果を味わえた満足感が得られ、それをきっかけに、歯止めがきかなくなり、妻子に隠れて再び大麻を吸うようになっていきました。
大麻は、はじめの内は自分の小遣いから買っていましたが、それだけでは足りず、妻に内緒でキャッシングや消費者金融から借金をして買うようになり、最終的にはそれが妻にばれ、離婚する事になりました。
私は、この離婚により子供と離れて暮らすことをつらいと思いましたが、それよりも、自宅で堂々と大麻を吸えるようになった事をうれしく思いました。今思えば、この感覚がすでに間違っていると思いますが、当時はこのように感じたのです。
その後、自分勝手に大麻を吸っていましたが、一人でいる事を寂しく感じることが多くなってきたこともあり、当時付き合っていた彼女と結婚する方向に話が進み始めました。そして、そろそろ大麻を止めて、再びまじめに生きていこうと漠然と考え始めていた時に、再び大麻所持で麻薬取締官に逮捕されました。その結果、婚約は破棄されました。
私はその後、実刑判決を受け、刑務所で生活しています。