津山さんJWBで講演
NY日系人会ビジネスウーマンの会(JWB、長谷川久美子会長)主催のウェビナー講演会、「アメリカはどこに向かうのか、米中間選挙、トランプ出馬を分析する」が、18日開催された。元共同通信記者のジャーナリスト津山恵子さんが中間選挙の結果を踏まえ、これからアメリカが向かう方向や2024年大統領選挙の行方などを分かりやすく解説した。
中間選挙の結果は、上院が民主党50議席、共和党49議席でハリス副大統領(民主)を入れて民主党が過半数を確保したが、下院は共和党が218議席、民主党が207議席で上下両院でねじれ現象が起きた。NY州知事選で民主党現職のキャシー・ホークル候補の応援演説にヒラリー・クリントン元国務長官で2016年年の大統領候補、そして現職のカマラ・ハリス副大統領の大物2人が駆けつけたのを見て、民主党の議席喪失に対する相当な危機感を感じ、「民主党やばい」と思ったが、蓋を開けてみると、当初予測されていた共和党優勢の「赤い波」は起きなかった。共和党が用意した勝利宣言会場は「お通夜状態」だった。中間選挙では与党が大敗するのが通例だが、異変はなぜ起きたのか。
一つは「若い人が起こした変化」だ。人工妊娠中絶の権利が6月の連邦最高裁の判決で全米的なものでなくなったことに対する抗議、二つ目は「トランプ再選許すまじ」の機運台頭だ。パンデミック直後から全米で起こったブラック・ライブズ・マター(BLM)運動、警察予算削減の声、LGBTQの権利獲得運動など声を上げれば変化があると思い始めた若者が多くなったことが背景にある。一方で若者のSNS離れが顕著で、10代が使っているSNSはTikTok 33%、スナップチャット31%、インスタグラム22%、フェイスブック(FB)はわずか2%。FBのアルゴリズムとフェイクニュースに嫌気がさしたものと見る。
トランプ氏が15日に2024年次期大統領選挙に出馬を表明したのは「出馬せざるを得ない」理由があったからだ。トランプ党の敗北、デサントス(フロリダ州知事)を意識、脱税疑惑や選挙での脅迫疑惑などを捜査する司法省の動きだ。司法が動けば、立候補ができなくなるので、先手を打って出馬表明し、後日有罪判決が出ても、いかなる理由をつけてでもひっくり返すことが可能になる。
民主党は若者の神風頼り
今後アメリカはどうなるのか。民主党は若い人の時流に乗った追い風と「神風」だよりという不安定な要素がある。一方で、上下両院ともに共和党のトランプチルドレンが今回の選挙で当選して議事堂の中に正々堂々と入り込んだ。「襲撃」しなくてもトランプ氏は議会内部から影響力を高めることができる。これにティーパーティーやメガチャーチなどを利用した「票固め」がうまい共和党が今後どう影響力を高めていくのかが焦点だ。80歳になったバイデン大統領が再出馬することは、個人的には間違った道だと思う。24年の大統領選挙は、民主党ではニューサム加州知事、ウイットマン・ミシガン州知事が有望。共和党ではデサントス・フロリダ州知事、トランプ氏が有力と見ている。