風の環定期コンサート今年で最終回

音楽監督

白田 正樹さん

 第15回風の環コンサートが11月5日ニューヨークのマーキンホールで開催される。いまその準備に追われているが、コロナ禍中断を挟み16年間続いた定期コンサートの一区切りの最終回となる。思いはひとしおだ。

 きっかけは2001年9月11日の米国同時多発テロだった。母校東北大学の先輩の子供が犠牲になった。自分も投資銀行勤務時代にワン・ワールドセンターの84階にいたことがある。人ごとではなかった。仙台二高時代から合唱部に入り、学生時代もコーラスを続けたが、社会人になって1976年川崎重工の駐在員としてニューヨークに赴任、LNG船の受注やメキシコ湾で使用する石油掘削リグを受注するなどがむしゃらに働いていた。

 文化的なことなどする余裕も時間もなかったが、84年に退社、サプリメントの製造販売会社を立ち上げて独立、会社が軌道に乗って落ち着いた時に9・11と遭遇した。 51歳だった。社会のために何かしたい。仕事以外で自分にできることはなんなのか自問した。歌が自分にあった。合唱する仲間がいた。

 被災者追悼が目的で始まったコンサートは、毎年テーマを変えながらも、東日本大震災、ハリケーンサンディー、そして熊本地震の被災地支援には、歌手の水前寺清子さんをNYに招いてコンサートを行うなど、いつも、被災者に寄り添う目線でプログラムが組まれた。今年は2月にトルコを襲った巨大地震の犠牲者追悼と早期復興を支援するチャリティーコンサートを予定している。

 ニューヨークでコンサートのあとは、すぐ故郷仙台に戻り、仙台フィル50周年記念コンサートに参加する。「セビリアの侍」という曲があるからだ。400年前、伊達政宗の命を受けてスペインに渡った支倉常長の末裔たちが今なおハポンさんという名前で生きている。2012年スペインのコリア・デル・リオ市に住むハポンさんたちとの文化交流を白田さんは開始した。ハポンさんたちを宮城やNYへ招待した。合唱団TOMOや風の環少年少女合唱団の子供たち、石巻の子供たちのスペイン・イタリア訪問ツアーを毎年のように開催し現在はハポン・ハセクラ後援会の会長を務めている。今年からは、大阪国際音楽コンクールの理事として若手の発掘と支援に力を入れている。「若い才能のある人を応援したくなるんですよ」顔が綻ぶ。今後は活動の後継者の育成と、いままでの経験を生かして、日米の音楽演奏公演のサポートなどをしていきたいという。

 (三浦良一記者、写真も)

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 チケット(20ドル)は 会場のウェブサイトwww.kaufmanmusiccenter.org またはKaufman Music Center 電話212・501・333で販売中。詳細はwww.jch-tomo.orgまたはhttp://kazenowa911.blog6.fc2.com