芸術の秋でアート巡り

編集後記

みなさん、こんにちは。芸術の秋ですね。時間のない人のためにニューヨークで半日で見て回ることができるいま旬なお勧めの展示スポットを3つご紹介します。メトロポリタン美術館近くにあるアルベルティーヌ書店(5番街972番地、79丁目)の庭の外側に、アントワーヌ・ド・サンテグジュペリの児童文学に登場する「星の王子さま」のブロンズ像が登場しました(今週号の1面に掲載)。高さ4フィートのブロンズ像はフランス人彫刻家ジャン=マルク・ド・パスによる作品で、「星の王子さま」出版80周年を記念してル・スヴニール・フランセ米国協会とアントワーヌ・ド・サン・テグジュペリ青少年財団が製作しものです。塀にちょこんと腰掛け空を見上げる星の王子さまと同じポーズで並んで座って記念写真を撮影する女性が多くいましたよ。次は、チェルシー地区の共に同じ24丁目にある大手有名画廊2軒です。一つは美術館なみの広さを持つガゴシアン・ギャラリー(西24丁目555番地)で、9月12日から故石田徹也(1973~2005)の絵画展「My Anxious Self」を開催中です。1990年代まで続いた日本の「失われた10年」と呼ばれる不況期に世に出た彼の絵画は、この時期の日本社会を特徴づけていた絶望感、閉塞感、断絶感を、急速な科学技術の進歩の後でも捉えていて不気味ですが、カフカのような不条理を湛えた絵画や作品によって、現代人が直面する課題を寓意的に描いています。見る人によって好き嫌いがはっきり分かれる作家でしょうけど、屈折した深層心理を描いた部分、怖いもの見たさでぜひどうぞ(今週号の3面に掲載)。そして最後は、画廊に行かなくてもマンハッタンの6番街の55丁目の南東の交差点角に突っ立っている親父さんの像といえば、あれかと思う人もいるでしょうが、キャバリア・ギャラリー(西24丁目530番地)では、アーティスト、ジム・レナートの新作彫刻、ドローイング、ペインティングの個展「Balance」を開催しています。プロトタイプの台座に置かれた粘土彫刻には、詳細なスケッチが添えられてデッサン力と造形力が凄いです。文章表現力が乏しいですがなんとも凄いとしか言いようがないです(今週号6面に掲載)。以上3点の美術案内でした。実際に足を運んでいる時間すらない人は、せめて今週号の本紙でお楽しみください。それでは皆さんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)