確トラに対抗

吹くかハリスの旋風

 民主党のジョー・バイデン大統領(81)が21日に11月の大統領選からの撤退を表明、米国の各メディアはすぐさま報じるとともに評価・分析記事を掲載した。

 リベラル系だがバイデン氏の撤退を社説で2度にわたり訴えるなど「バイデン降ろし」を先導してきたニューヨーク・タイムズは「バイデン氏は勇気ある撤退をした。民主党はチャンスをつかまなければならない」との社説を21日付電子版に掲載。「バイデン氏はトランプ氏が決してやらないことを成し遂げた。自身のプライドや野心よりも国益を優先したのだ」と称賛し、撤退により「トランプ前大統領再選の危険から民主党が米国を守る可能性を大きく高めている」と期待を示す。

 一方、保守系のFOXニュースは21日、バイデン氏が撤退と同時に後任候補にカマラ・ハリス副大統領(59)を推薦したことに対し、「もはや一般の有権者は民主党の大統領選指名候補者を選ぶことができない」と指摘。党大会に招集される代議員など「数千人のエリートたち」が決めることになり、「これは建国の父たちが築き上げた民主国家にふさわしいプロセスではない」と批判した。また、ハリス氏の資質を疑問視し、民主党には「偉大な米国を率いる人物は誰一人いない」としている。

 リベラル系のワシントン・ポスト21日付電子版は、大統領候補にハリス副大統領が既定路線かのようになっていることに対し、「民主党は開かれたプロセスを受け入れるべきだ」と注文。予備選は必要はないが、有力候補同士の討論会は実施可能だと訴えた。ハリス氏が「唯一の選択肢ではない」とも主張している。撤退したバイデン大統領に対しては、ガザの紛争解決やインフレ・物価高からの脱却など、「米国をより良い状態にすることに取り組むことで選挙戦を助けることができる」と主張した。

 リベラル系のCNNは、撤退表明があって数分後にトランプ氏が「ハリス氏のほうがバイデン氏よりも倒しやすい」と電話インタビューで述べたと伝えた。一方で保守系のウォール・ストリート・ジャーナル21日付電子版は、「撤退は必ずしも共和党に有利とは言えない」と分析。共和党内にはバイデン氏が高齢であることがトランプ氏に有利になるため、バイデン氏は撤退しないほうがいいという見方もあったためだ。ブルームバーグ22日付電子版はトランプ氏の大統領返り咲きを以前から想定し、暗号資産の買いを増やすなどの動きが見られたが、投資家は難しい見極めを迫られていると報じた。選挙まで14週間に迫るなかハリスの旋風が吹くのか注目される。