坂本龍一を映す、バーチャル公演スタート

 ニューヨークに長く拠点を置き、今年3月28日に71歳で亡くなった坂本龍一さんの複合現実(バーチャルリアリティ:VR)コンサート『KAGAMI(鏡)』が7日から、ハドソンヤードにある劇場ザ・シェッド(西30丁目545番地)で始まった。

 坂本さんとVRコンテンツ制作スタジオ「ティン・ドラム」によるKAGAMIの会場に入ると、80ほどのイスが円形に並べられ、観客はVRヘッドセットを装着。すると中央にピアノと鍵盤に向かって座る坂本さんが浮かび上がった。超リアルというよりはフォノグラムのような坂本さんが演奏を始めると、その周囲が宇宙空間のようになったり、古いNYの街並みがモノクロ映像で映し出されたりと曲に合わせた立体的アートも登場。観客は席を立ち自由に歩き回ることができ、ピアノを弾く手や顔を覗き込んだり、坂本さんに重なるようにその場に座り込んだりして1時間のコンサートを楽しんだ。演奏曲は坂本さんの代表作品である「エナジーフロー」や「メリー・クリスマス・ミスター・ロレンス」など全10曲。7月2日(日)まで。詳細はウェブサイトhttps://theshed.orgを参照。 

 坂本さんは今年の初めに「現実としてバーチャルな自分も存在します。そのバーチャルな自分は年を取らず、ピアノを何年も、何十年も、何百年も弾き続けるのです。その頃、まだ人間は存在しているのでしょうか?」と語っていた。KAGAMIはNYのあと、マンチェスター国際芸術祭、シドニーのオペラハウス、テネシーのビッグイヤーズフェスティバル等で公演される予定。坂本さんの演奏はテクノロジーの力を借りて今後も世界中で上演され続ける。(高田由起子、写真も)