NYホテル代過去最高

シェルター使用で客室不足影響

 シェラトンNYタイムズスクエアホテル(280ドル=4万2000円)、ハイアット・グランド・セントラルホテル(341ドル=5万1150円)、インターコンチネンタルホテル(409ドル=6万1350円) マリオットマーキース(451ドル=6万7650円)、オムニバークシャープレイス(385ドル=5万7750円)。日本人旅行者がマンハッタンで宿泊することの比較的多いホテルの宿泊最低料金例(今年6月10日に1泊の予約をした場合。円は1ドル150円換算・ブッキングドットコム調べ)だ。これにはすべて税金14・75%、1泊につき40ドルの観光地利用料と3ドル50セントの市税がプラスされる。

 商業用不動産のデータと分析を行っているCoStarによると、2023年のニューヨーク市内の一泊の平均宿泊料金は301・61ドルと過去最高を記録した。2022年の277・92ドルから8・5%上昇した。価格が下がるのが通例である1〜3月の平均宿泊料金だが、今年は1泊230・79ドルで昨年同期の216・38ドルより6・7%高くなっている。

 宿泊費高騰の要因にはインフレなどもあるが、原因となっているのは空室の不足である。原因として考えられているのが、移民の受け入れのシェルター・プログラムへの参加、民泊の制限、新規ホテル建設の遅れ、観光客の増加である。(写真)優雅だったルーズベルトホテルも難民シェルターとして使用され、かつての面影はない(5月28日、本紙撮影)

 シェルター・プログラムには市内のホテル約680軒のうち5分の1の約135軒が参加している。2022年後半から開始された「サンクチュアリ・ホテル・プログラム」に基づいて、移民を保護するホテルに市はお金を払うことになった。参加すると一泊一室あたり最大139ドルから185ドル支払われる。コロナ禍で打撃を受けていた頃であり、多額の負債を抱えていたり、経営危機に陥っていた不人気ホテルが飛びついた。コロナ後もプログラムを抜けるホテルは皆無で、その多くは低〜中予算の旅行者向けだったこともあり、そうしたホテルの宿泊料が大幅に上昇した。

NYホテル料金の高騰

ホテル不足に民泊規制が拍車
新規建設が進まないのも一因

 ニューヨークのホテル料金が高騰している背景にシェルター使用があるが(1面に記事)、次に指摘されているのが民泊規制である。市は昨年9月、Airbnb(エアビーアンドビー)などの住宅の短期賃貸を厳しく制限する法律を施行した。例えば30日未満の滞在ではホストが住んでいなくてはならないことを厳格化した。観光客や訪問客に貸すことで市民は住宅不足に陥っており、これ以上の悪化を防ぐためとされた。またホテル業界やホテル労働組合からは大歓迎を受けた。

 すると、30日未満の短期滞在向けAirbnb物件数は、施行前の月である23年8月の2万2247件から今年3月には83%減の3705件にまで激減。市内に残っているAirbnb物件の約90%は30日以上の滞在にしか利用できない。Airbnbはかつて、市内の観光客向け宿泊施設全体の10%以上を占めていたが、これが消えた。移民シェルター・プログラムよりもホテル料金に大きな影響を与えた可能性があると一部の観測筋は指摘している。

 また、ホテルの新規建設が滞っていることも指摘されている。現在建設中のホテル客室は8000室以上あるが、新たなゾーニング規制や特別許可制度などによりホテル開発が制限され、建設や運営にかかる費用が上昇、計画通りに進んでいないところが出ているという。

 こうしたなか、アダムス市長の広報担当者は宿泊料金の上昇は市長の政策ではなく、観光客の増加によるものだと述べている。昨年同市を訪れた人は、過去最高だったコロナ禍前の2019年の6660万人をわずかに下回ったものの約6220万人だったと強調する。一方、ニューヨーク市ホテル協会によると、昨年のホテル客室稼働率は81・7%で、最低だった2020年の46・7%よりは大幅に上昇したが、客室稼働率が86・2%だった2019年ほどは高くはなかった。