移民受け入れに限界

NY市避難所確保の免除求める

 ニューヨーク市のアダムス市長は5月22日、連邦の移民流入制限措置「タイトル42」が5月11日に失効し、先週は5800人以上、先々週は4200人以上の移民が市内に到着し、ホームレス保護施設(避難所)の確保や受け入れ業務に負担がかかっており、市の福祉サービスを脅かしていると語った。

 アダムス市長は、市には求めた人には避難所を提供しなくてはならないとする「避難所法」があるが、全員を受け入れる能力を超えていると主張、義務の一部を免除する許可をニューヨーク市裁判所に求めた。「安全で適切な避難所を提供するための十分な避難場所、人員配置、警備を確立し維持する資源と能力が不足している」場合には、ホームレスの成人や成人の家族への避難を拒否できる」と条文を変更するよう求めた。

 テキサス州のアボット知事(共和党)は昨年春より、移民問題の深刻さが分かっていないと国境に押し寄せる中南米からの不法移民をニューヨークなど移民に寛容な都市にバスで移送しているが、ホームレスを支援している団体はテキサス州からの不法移民はホームレス増加の一部分に過ぎないと主張している。ホームレス連合によれば移民で避難所利用を申請した人は1日あたり100人ほどで、市の予算局が述べている約600人よりはるかに少ない。ホームレス・サービス・ユナイテッドのキャサリン・トラパニ事務局長は、「誰が亡命希望者で、誰が避難所を探している人なのかを市当局がどのように判断しているのか不明だ」と語った。

 コロナ禍で移民を制限する緊急公衆衛生命令「タイトル42」の失効でメキシコとの国境に押し寄せる移民が増加すると予想された。しかし連邦当局によれば失効直前の数日間こそ1日あたり約1万人と急増はしたものの失効後は5000人ほどに半減したという。アボット知事の広報担当者は、先週数百人の新規の移民希望者をニューヨークに送ったとしており、アダムス市長の5800人といった数字とはかけ離れている。移民支援を行っている団体によれば、先週到着した移民は550人未満だという。これとは別に旅客機で空港に到着する移民も1週間で数百人程度という。

移民に寛容なNYに影

連邦政府に財政支援の訴える

 ニューヨーク市は不法移民に対して寛容な政策を取っているいわゆる聖域都市(サンクチュアリ・シティ)の一つ。移民の増加に対応するためアダムス市長は昨年10月、非常事態を宣言し10億ドルの特別予算を組んだ。ホテルや学校の体育館を避難所として利用したり、移民の一部をバスで北の郊外の町に送るなどしている。市の推計によれば、昨年1年間に保護施設に来た移民や亡命希望者は約7万3000人。うち約4万4000人市が運営するホームレス避難所や緊急住宅に住んでいる。 

 アダムス市長は5月10日、避難所法にある「バス、トイレ付き」の条件や夜10時までに来た子連れの移民には必ず寝床を提供しなくてはならないとする決まりを一時停止する行政命令を出した。現在では学校の体育館も避難所に使っている。ルーズベルトホテルなど緊急避難用ホテルでの30日以上の滞在は認めない方向だ。市は財政負担が大きいため連邦政府や州の支援が必要だと訴えている。