トランプ米大統領が2日に「相互関税」を発表して以降、景気の先行き不透明感を背景に投資家のリスク回避姿勢が強まっており、株安の連鎖が続いている。相互関税は5日より約100か国に一律10%の関税をかけ、うち約60か国には9日よりさらに税率を上乗せするもの。合計で中国は104%、日本は24%、欧州連合(EU)が20%、英国は10%となっている。
米国は発表翌日の3日、主要企業でつくるダウ工業株30種平均が前日終値より1679・39ドル(約4%)安の4万545・93ドルで取引を終え、コロナ禍の2020年6月以来、約5年ぶりの下げ幅を記録した。S&P500種指数は約4・8%安、ハイテク株比率が高いナスダック総合指数も約6%安と下落。
中国は4日、対抗措置として米国からの全輸入品に34%の追加関税を10日から課すと発表。株式を売る動きは止まらずダウは前日比2231ドル(5・5%)も落ち込み、史上3番目の下げ幅を記録した。ナスダックも前日比6%安となるなど、ほとんどの銘柄が下落し、ウォール・ストリート・ジャーナルは、2日間でおよそ6兆6000億ドルの株式の時価総額が失われたと報じた。
トランプ大統領は6日、「何もかも下がることは望んでいない。しかし、何かを解決するためには薬を飲まなければならないこともある」と記者団に語り、株価が大幅に下がっても「相互関税」など関税引き上げは必要との認識を示した。
インフレ懸念が高まる米国だが、原油価格は6日、一時1バレル60ドルを下回り、ほぼ4年ぶりの安値となった。またトランプ大統領は、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長に対し、利下げをするよう再三、求めている。
NY市場は、9日に発動される上乗せ分の相互関税によって世界的に景気が悪化するとの懸念が強まり、ダウは先週末と比べて一時、1700ドルを超える値下がりとなった。しかし関税措置を90日間、停止することをトランプ大統領が検討しているという噂が流れ、買い戻しの動きも起きた。ところがホワイトハウスが「フェイク(虚偽)だ」と否定すると再び下落した。結局、前週末比349ドル26セント(0・91%)安の3万7965ドル60セントで終え、下げ幅を縮小した。S&P500も先週末比0・23%安と小幅の下落。ナスダックは3営業日ぶりに小幅反発し、前週末比0・099%高で終えた。(以上いずれも速報値)
(写真)NY証券取引所前に立つ「恐れを知らぬ少女像」も見守る世界経済(4日、写真・三浦良一)