ニューヨークタイムズ紙
日米同盟を確認
日本の石破茂首相とドナルド・トランプ米大統領による初の対面による日米首脳会談が7日にホワイトハウスで行われた。
ニューヨーク・タイムズ7日付電子版は、石破首相は「大統領に媚びへつらう最新の外国指導者」となったと報じた。共同記者会見での石破首相の「テレビで見るような有名人に会えてとても興奮しました。テレビでみると声高で、かなり個性強烈で、恐ろしい方だという印象がなかったわけではない。しかし、実際にお目にかかると、本当に誠実な、アメリカや世界に対する強い使命感を持たれた方だということをお世辞をまったく抜きに感じた」との発言を取り上げた。
記事では、石破首相が記者団に「トランプ大統領への賛辞は「彼に媚びへつらう」ためではなく、むしろ「世界平和」と「地域の安定」を確保するための努力の一環である」と語ったことにも触れている。しかし、4日に首脳会談が行われたイスラエルのネタニヤフ首相の「(トランプ氏は)イスラエルの最高の友人」発言や米国人犯罪者を自国に収監すると提案したエルサルバドルのブケレ大統領などを例にあげ、「お世辞外交」と報じた。第1次トランプ政権時にフランスのマクロン首相やカナダのトルドー首相も「お世辞外交」を行ったが、成功はしなかったと付け加えた。記者会見では大きな失態もなく、USスチール問題も一刀両断で切り捨てるのではなく「買収ではなく投資だ」と一定の理解をトランプ大統領自らが示したのは、石破首相への最大限の気遣いと配慮を見せた場面だった。
NYタイムズ紙は会談前の直前報道で、ゴルフを利用して親密な関係を築けた故安倍晋三首相とは違い、プラモデル作りが好きな石破首相が、どう打って出るのかお手並み拝見といったニュアンスで報じていた。当初の目的である日米同盟関係の確認はできた会談となった。
日米首脳会談 米メディアの論調
「ベストを尽くした」ワシントン・ポスト紙
石破首相とトランプ大統領との日米首脳会談(1面に記事)で、ワシントン・ポストは7日付電子版で「日本の首脳、関税回避のためトランプ氏を喜ばせようとした」との見出しで報じた。2022年に暗殺された安倍晋三首相のようなカリスマ性もなく、ゴルフを利用して親密な関係を築くことができない石破首相を「トランプ大統領を惜しみなく賞賛、お世辞で笑いを誘うなどベストを尽くした」と評価した。会談後の記者会見でトランプ大統領は石破首脳の印象を「彼は首相として素晴らしい仕事をするだろうと思う。とても強い人だ。彼がそんなに強くなければいいのに。もう少し弱ければいいのにと思うが、それが私の得たものだ。私は常に強い人を得なければならない」と答えたことに言及している。「会談は関税の警告で終わった。日本側からの賞賛により緊張は緩和された」と報じた。
他の米メディアは日米間の経済問題を個別に報道したものが多かった。ウォール・ストリートジャーナルは、日本製鉄によるUSスチールの買収問題について「買収ではなく投資」であるとの共同記者会見での発表を報じ、ロイターはこれに加えて米国産液化天然ガス(LNG)の輸入拡大で合意したことを、AP通信はトランプ大統領が石破首相に対日貿易赤字を削減したいと述べたことを報じた。
CNNテレビなど大手テレビ局が会談後の共同記者会見を生中継するなどした。両首脳のやりとりは時折記者団からも笑いが出る和やかなものだったが、記者団からの質問の多くが日米関係ではなくトランプ氏の政策についてだった。
(写真)各国首脳のお世辞外交について報じる10日付NYタイムズ紙