自分の世界取り戻す時間NYで

俳優
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岩田 華怜さん

 東日本大震災で引き裂かれた父と娘の絆を描いた映画「最後の乗客」で主役の遠藤みずき役を演じた。ニューヨーク在住で宮城県出身の映画監督、堀江貴氏の作品で、これまでサンディエゴ芸術映画祭、カンヌ世界映画祭、スウェーデン国際映画祭、モントリオール映画祭など数々の映画賞に輝き、グローバル・ノンバイオレント・フェスティバルでは主演女優賞を獲得した。日本国内での劇場上映も始まり、今年の日本アカデミー賞選考対象作品にもリストアップされるなど、岩田さんにとっては、同時期に日本初演オリジナルキャストとして舞台出演した「ハリー・ポッターと呪いの子」と共に、女優としての出世作となった。

 実は仙台市出身の岩田さん自身、まだ小学6年生だった時に東日本大震災で被災して家族と避難所生活を送っている。それだけに、堀江監督が、ニューヨークに戻る当日の朝、空港へ向かう前にぎりぎりで岩田さんに会いに来て、出演を依頼した時には二つ返事で快諾。「脚本を読ませていただいた時に、こちらの方からオーディションを受けさせてもらいたいと思ったほどでした」と話す。

 岩田さんは13歳でAKB48に当時最年少メンバーとして加入後、18歳でグループを卒業、本来の夢であった俳優に転身した。日本大学藝術学部写真学科を卒業後、25歳でNYへの渡米を決意、一昨年末に来米した。現在、写真家や脚本家としても感性を磨いている。

 「NYでの生活は、本当に一難去ってまた一難といった感じでかなりドタバタ、サバイバルしていますが、その分楽しいこともたくさんあり、毎日挑戦できる喜びを感じています。私が行きたかった演劇の大学がロサンゼルスにあったのですが、アーティストビザが取れたので、だったら働きながら舞台を学べるNYにしようと思ったんです。ニューヨークで開催された映画祭の際には、ニューヨークにお住まいのたくさんの方に足を運んでいただきました。あれが私にとっての人生初NYだったわけですが、あの訪米がなければ今こうしてNYにいなかったかもしれないと思うと、『最後の乗客』が、私の人生に与えてくれたものは本当に大きいなと感じます」と笑顔で答えた。

 将来については「まだわかりませんね。日本にいたときは、色々な目標がありましたが、NYに来てから、良い意味で形に囚われなくなりました。焦らずに、自分の人生と向き合って、『どういう人間になりたいか』をまず考えたいと思います」と話す。が、実は一つだけ実現したいことがあるという。来米前に東京と宮城で上演した舞台「10年後の君へ」のNY上演だ。自身が脚本、演出、主演、制作、プロデュースをした朗読劇。東日本大震災で被災した子供が都会に出て人生に向き合う話だ。2年前の来米時に「また、必ず女優としてしっかりと実力をつけてこういった場所に戻ってこれたらなと、もっともっと高みを目指していけたらなと思っております」と語った言葉がいま現実のものとなっている。

 (三浦良一記者、写真も)
衣装・田中恵介