2011年のブラックフライデーセールで、パタゴニアブランドのジャケットを新規購入せず修理か再利用するように呼び掛ける広告が話題となったパタゴニア。今年9月、創業者であるイボン・シュイナード氏が自身の所有する全株式を環境保護活動に従事する非営利団体や信託へ譲渡するとの発表は、業界関係者のみならず一般消費者にも衝撃を与えた。同社は、サステナビリティを真剣に追及する非上場企業で、どう事業を拡大するか?ではなく、どこまで事業を拡大すべきか?という議論が真剣に経営陣の中で行われる。パタゴニアの主要購買者層は、週末にアウトドアスポーツを楽しむような機能性重視で環境意識と所得が高い消費者であり、どうしても都市部に集中する。LAもその一つだ。シュイナード氏自身もサーファーであり、同社はLA北部のベンチュラに本社を構える。
これまでW2NXTチームは、ニューヨークやロサンゼルスを中心に街角ファッションインタビューを行ってきたが、環境意識の高さは共通するものの、東海岸と西海岸ではファッションテイストに差がある。NYは年間通して温暖の差が激しく、重ね着時の色合わせに拘ったり、極寒の冬を終えた春の到来時には華やかなプリントの服を好んで着る傾向がある。一方で、常夏のLAは着心地を含む機能重視だ。例えば、ニューヨークでVANSのシューズはカジュアル感への評価からだが、LAではスケートパークと滑り止めラバーソールの相性が支持されている為だ。また、LAではNYでは耳にしないようなサーフィンに特化した地元の中小ブランドへの人気も高く、インタビュー後の文字起しに一苦労することもあった。今回のインタビューに答えるサーファーの女性は、サンタモニカビーチに到着するとパロ・サントスのスエットを脱ぎ捨て、ソリッド&ストライプトのトップとシッドウェイのボトム。ビキニ上下を別ブランドで合わせる拘りようだ。一番のお気に入りはHeidi Merrick。サーフィンとハイファッションを上手く融合させたハイファッションブランドで、サンタバーバラ出身の女性サーファーによって立ち上げられた。
NY、LA共にインスピレーションを求めてデザイナーが集まる都市だ。その為か消費者のファッションテイストも洗練されている。ニューヨーカーのファッション研究も楽しいが、西海岸との比較を通して見えてくることも多い。ファッションは文化を反映する。主要都市を訪れた際には現地ファッションに着目すると、改めて広大な米国文化の多様性が垣間見えるかもしれない。
(Wear 2Nextチーム/アパレル業界関係者によるファッション研究チーム)