日米ソーシャルサービス(JASSI)理事長
望月良子さん
ニューヨークの日系社会で駆け込み寺として知られる日米ソーシャルサービス(JASSI)の理事長に7年前になった。理事になってからは25年になる。JASSIはニューヨークで、言語や文化の違いから支援を必要としている人へ無料で福祉サービスを提供している非営利団体で、生活に困り果てた時の最後のセーフティーネット、駆け込み寺として機能し、今年で40周年を迎える。
生活に行き詰まったり、経済的な困窮者となって日本に帰国することもアメリカで安定した老後を送ることも難しい高齢者たちに手を差し伸べている。昨年度JASSIが支援したニューヨークに住む日本人および日系人のうち、822人が公的支援を受けられる低所得者であったという。多くが永住者で、チップや現金収入で生計をたててきた料理人やミュージシャン、アーティスト、個人の自営業など自由業が多い。現地採用でも会社員としてソーシャルセキュリティー(米国社会保障年金)や401(K)
を長年自動天引きされて積み立てて収めてきた人たちと違い、個人の自営業だと十分な積み立てがなされていないケースが多く社会保障の恩恵を受けられていない。
「ホットライン・プログラム」では、生活面で問題を抱え困っている人を支援している。昨年度は、多くの人からNY州医療保険加入を含めたヘルスケア、コロナウイルス、公的支援、メンタルヘルスに関する問い合わせが多かった。2020年7月1日から2021年6月30日までのコンタクト数は過去最高で延べ6925件で、平均で一週間に133件にも上る。クライアント数は1270人で、そのうちシニアのクライアントは432人。クライアントの8割が貧困層に近い低所得層だ。運営は企業の寄付と政府補助金だけで登録者から会費はとっていない。そもそも援助を求める人からお金は取れないのだ。
望月さんは、1980年に米国に憧れて来米した。一人でグレイハウンドバスに乗って米国を2か月間かけて走り回り、ヒューストン大学卒業。その後フランス系企業勤務中にCPAと弁護士資格を取得し、日系コミュニティーを個人的に支援したいと思うようになり、1996年KPMGのニューヨーク事務所に入ってすぐJASSIの理事となった。今も弁護士としての仕事を続けながらJASSIの仕事を続けている。
「困った人たちに必要な情報を提供するホットラインのサービスは、いつの時代でも必要なサービスだと思います。しかし、ニューヨークの日系企業の数は減少する傾向にあり、資金集めは年々難しくなっています。引き続き、皆様からのご支援を頂きますようお願いいたします」と話す。
(三浦良一記者、写真も)