グラフィティアーティストSHIRO
1970年代にニューヨークで生まれたグラフィティ。「落書き」なんて昔話、今や「ストリートアート」として世界中で大ブーム。アート界では「ミューラル(壁画)スタイル」とも言われる。
20年のキャリアを持つSHIROは、日本らしいキャラクターとニューヨークで培った感覚がミックスされたユニークな作品で、世界を駆け巡る。画風だけでなく、「グラデーションが強み」と言うように、スプレー缶で立体的に見せる陰影のつけ方は一目置かれている。「速さ、質、大きさ」を問われるグラフィティは、「缶コントロールが難しい。ちょっとの風向きや湿度でも違ってくる」そうで、お気に入りはドイツ・モンタナ社のスプレー缶、「匂いだけで分かる」と目を細める。
3歳の時におたふく風邪が原因で右耳が聞こえなくなったこと、転校が多かったことなどから、会話の代わりに絵を描くことが自己表現ツールになった。高校生の頃に夢中だったヒップホップダンスが靭帯を切って踊れなくなり、グラフィティの世界へ。故郷の静岡県焼津市では、その頃から定期的に描いている。2002年にニューヨークに来て、次第に「僕たち描くけど参加する?」と声をかけてくれる仲間に交ざってブロンクスやブルックリンで描き始めた。「ワイルドスタイルという映画に出ていた人たちと、今は一緒に仕事している」とにっこり。1982年にサウスブロンクスで始まったヒップホップを捉えた伝説的映画だ。
07年からはドイツを始めとして海外にも活動の場を広げ、ヨーロッパ各地、インド、フィリピン、中国など世界18か国で発表している。「そこに住んでいる人が毎日、私の絵と暮らしていると思うと、生きている実感がある」。発展途上国では、あえてスラムでも描いている。
日本では看護師。小さい頃から夢だった看護師の仕事も大好きでいつでも戻りたいが、「今はアートのスタイルを確立する転換期」と覚悟して、しばらくはニューヨークを拠点にするつもり。20周年の記念個展は「イッツ・オーケイ」。「人生シンプルでいいと思う。なんとかなるから、自分なりに生きるというメッセージを送りたい」。(小味かおる、写真も)
■SHIRO個展=1月16日(水)まで、サウスブロンクスにある画廊ウォールワークスNY(ブラックナーブールバード39番地)で開催中。キャンバス画やペン画、新作壁画約20点を展示。オリジナルブランド品も販売。入場無料。開廊時間は平日は午前11時から午後5時、週末は予約制。問い合わせは電話347・726・3479、詳細はウェブサイトwww.wallworksny.comを参照。SHIROウェブサイトwww.bj46.com