幸せの法則「ポジティブ心理学」を説く

NYライフバランス研究所代表

松村 亜里さん

 NY在住のポジティブ心理学者・松村亜里さんは、海外で生活する多くの日本女性たちの悩みを見つめ、心のサポートをしている。先ごろ5冊目の著書『うまくいかない人間関係逆転の法則』(すばる社・刊)出版記念トーク&サイン会を紀伊國屋書店NY本店で開催して大盛況だった。

 松村さんは医学博士・臨床心理士・認定ポジティブ心理学プラクティショナーで、ニューヨークライフバランス研究所(https://lifebalanceny.org/)と、オンラインサロンAri’s Academiaを主宰している。自身が心理学を勉強したきっかけは、自分の自己肯定感の低さからの脱却だった。母子家庭で育ち、中卒で大検を取り、2年間朝晩働いて貯金200万円を貯めて単身来米。ラガーディアコミュニティカレッジを経て、ハンターカレッジを首席で卒業後、コロンビア大学大学院で臨床心理学で修士課程を修了、帰国して秋田大学医学研究科で公衆衛生学で博士課程修了。ラガーディアコミュニティカレッジと秋田県の国際教養大学でカウンセリングと心理学講義を約10年担当。2013年からニューヨークのウエストチェスター郡ハリソンで始めた心理学講座が駐在員の妻ら多くの在住日本人女性たちの話題となり講演依頼が州内各地から殺到。現在は、幸せになることを科学的に研究するポジティブ心理学をさまざまな分野で応用するメソッドをオンラインや世界各国のセミナーで教えている。

 「やり直せないです、頑張りすぎて」と現在にたどりつくまでの涙ぐましい努力を明るい笑顔で語る。日本で準看護学校在籍時代は、実習で血を見るたびに卒倒しそうになる自分は医療従事者は向いてないと早々と諦め、なんともしがたい自分自身の自己肯定感の低さを変えたいと自費留学した。

 鬱病など心の病にある人のマイナス3の状態からゼロにまで戻す、いわば「治療する学問」である臨床心理学と、ゼロからマイナス3にならないようにする「予防の学問」である公衆衛生学の両方を学んでいた松村さんは、「幸せな人がなぜ幸せなのか」を科学的に研究する新しい学問「ポジティブ心理学」に日本での大学でのキャリアを捨てて戻ってきたNYで出会って「これだ!」と思った。幸せな人は病気になりにくいし、落ち込んでいる人も幸せを自分で作り出せるようになると回復する。

 紀伊國屋書店で行われた講演では、5冊目の本の内容である、人生で犠牲者としてでなくクリエイターとして生きていくための方法を説明しながら、会場に集まった参加者同士が3人単位のグループを隣の席同士で作って、最近よかったことを伝え合う「感謝のピンポン」、相手の良さ、強さは何か、いま欲しいものは何かなどを口に出して相手に伝えるワークショップを行なった。幸せになるには、よい人間関係が必須の条件であることを身近に感じてもらうための実験だという。幸せだと同じ景色でも違って見えるから不思議だ。問題の原因を探るのではなく、理想の状態を思い描き、弱点ではなく強みに目覚めることが幸せへの近道だと説く。ママロネックで米国人の夫と2人の子供との4人暮らし。

 (三浦良一記者、写真も)