日本ブランドに魅せる力を

グラフィックデザイナー

佐地真梨子さん

 国際基督教大学(ICU)を卒業後、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)に入構し、海外企業の日本投資を促進する業務に従事した。2年間勤めたあと、ブランディングデザインの分野にキャリアチェンジを目指し退職して留学。パーソンズ美術大学でデザインを学んだ。卒業後は、ニューヨークの広告会社やブランディングエージェンシーなどに勤めながら日本企業の米国での企業イメージの構築、ロゴやパケージの作成、ウェブサイトや広告などを手がけながらグラフィックデザインとブランディングデザインをしている。

 ジェトロ時代、日本の中小企業と海外のスタートアップ企業とを結びつける仕事をしていた。感じたことは、日本企業は、優れた技術で高品質の製品を作るが、「魅せる力」が弱いということだ。同時に、結びつけた企業の仕事に自分がもっと踏み込んでお手伝いができないものかとの葛藤が生まれた。ジェトロの構造的な役割に限界も感じ、自分の力で手伝える方法を手にいれるために日本を出た。海外からの視点でビジネスの融合とブランディングを考えるポジションに軸足を移しアメリカに来て2年半、いまのところ自分が予定していたプラン通りの生活だが「コツコツと努力する」ことは日本時代から変わっていない。日本の経済力が現在、かつてほどの勢いがない一方で、働き方改革が提唱され、労働時間を1日8時間から7時間へ短縮、1週間35時間労働を基準にするなど、「日本人がだんだん働かない方向に向かっているのではないか心配ではないか」と水をむけると「いやいや、そうでもしないと日本人は働きすぎるんですよ」との答え。行政が歯止めをかけないとサービス残業あたりまえの世の中は変わっていかないのだと。

 海外での日本製品、ブランドに対する評価は極めて高く、ユニクロ、無印などシンプリシティーを強く発信することでその存在が際立っているとも言う。「便利さ、扱いやすさ、技術力に裏付けされた精度の高さ、デザインなど、日本が誇れる分野はまだまだいっぱい残されています。これから自分たちで未来を変えていきたい」という気概を持って仕事ができるようになったのも、海外に出てみて、日本の外から日本や日本企業、日本製品を客観視できる立場に身を置いたからにほかならない。

 パーソンズを卒業してからは米国のブランディングを主軸とするデザイン会社数社を経験すると同時に、自身でプロジェクトも幾つか担当し、医療機関や食品会社、スポーツメーカーなどさまざまなジャンルのプロジェクトで経験を積んだ。この秋、再び米国のデザイン会社に就職する予定。企業のイメージや商品の個性を印象つけるブランド戦略は、日本以上にロジック(論理)が求められる。デザインにはすべて意味がある、意味を論理的に説明できなくてはならない。「自分の作ったデザイン、ブランドで人の心を動かしたい」という気持ちが常に自分の支えになっている。働く会社や住んでいる国が変わっても仕事に対する向かい方にブレはない。兵庫県出身の27歳。

 (三浦良一記者、写真も)