米人高校生に日本語を教え続けて

NY市立フランシス・ルイス高校日本語教師をこのほど退職した

木村 光子さん

 ニューヨーク市の公立高校で、第二外国語の選択科目に日本語を取り入れているクイーンズ区のフランシス・ルイス高校で16年間、日本語教師として米国人高校生に日本語を教えてきた木村光子さんが7月1日付で同校を退職した。

 ニューヨークでの教師生活60年に及ぶ木村さんは、福岡県生まれ。宗像郡宗像高校から奈良女子大の理論物理学科で数学の教員免許を取得して1960年に卒業。結婚後来米し、ニューヨーク補習授業校の創設に関わり、NY補習校と全日制ニューヨーク日本人学校の数学の教師を長年務めた。4人いる米国生まれの子供達はそれぞれアイビーリーグやNY大を卒業して立派な社会人になっているが、米国の教育を受けながら育っていく子たちを見て日本語教育の必要性を感じたのが、米国で日本語教師に転向する動機となった。

 日本では理系だったため、米国で文系の教員免許を取得するのには苦労したそうだが、2007年に資格試験に合格し、NY市立高校の日本語の教師となった。木村さんの学校での日本語教育は、第二外国語としての日本語だ。

 そして授業の副教材として選んだのが、本紙「週刊NY生活」だった。「『週刊NY生活』は日本の文化の行事やイベントが目白押しに紹介されます。とくに新年号は、新年登校日の授業に間に合わせて、数日前から食料品店をまわり、20部ずつ取り寄せました。その全生徒分120部を学校へ運ぶのは、車の運転をやめているので、大変な仕事でした。でもNYで日本語を勉強した生徒たちは、国際感覚を身に着けた生徒たちで、これからの日本の人口減少による人手不足を救う日が必ず来ると信じています」と話す。また長年教壇に立って感じることは、中国と韓国の本国政府による自国語を広める資金援助の力の入れ方だ。国策として市の教育関係者に働きかけているの見て、日本政府も海外での日本語教育に力を入れて欲しいということが心残りだ。今後は「日本語を話す人たちが一人でも多くなるようなボランティア活動を有志と続けていきたい」という。(三浦良一記者、写真は本人提供)