安価で上質な学習塾を目指す

ブックエンド・チュータリング代表
和子ブラッドレイさん

 クイーンズ区のアストリア地区で、現地校生向けの学習塾、ブックエンド・チュータリングを2015年に立ち上げ、現在講師9人、在籍生徒数は小学3年生から12年生まで80人いる。
 塾のモットーは「安価で上質なアフタースクールの教育を通してアメリカ社会に貢献する」こと。
 移民大国アメリカ。その中でもアストリアは、ギリシャ系、アジア系を中心に移民の街として知られるメルティングポット。和子さんは「移民教育によりマイノリティーをバックアップしたい」という。教室に生徒がやってきて、少数人数の家庭教師型の指導を行っている。「ニューヨークの家庭教師代の相場、1時間150ドルのプライベートレッスンと同質の物を40ドルでお届けする」のが信条。「教育は、金持ちだけの特権ではないのです。良い物を見極める知識と経験を得て行くこと、それは人間形成の礎であり、心の成長の元だと思うんです。学歴成金上等です、勉強して成り上がりなさいって子供たちに言ってます」ときっぱり。子供の頃、父親が毎朝出勤する前に算数を見てくれた。苦労人の祖母の口癖は「先生になって人の役にたて」。その言葉が今でも耳に焼き付いている。
 本人は、もともとは歌手で、米国に来てからアルトサックス奏者から教師の道へ転向したユニークな経歴の持ち主。日本でリクルートに就職した後も演奏活動を続け、音楽家への道を志して退職、ニューヨークへ。ニューヨーク・シティカレッジで音楽と少数民族教育で学位を1994年に取得。卒業まで8年間に及んだ苦学生時代は、ジャズベースの巨匠、ロンカーターに師事した。その後、日系銀行など日本の企業で2年間働いた後、アストリアの公立小学校に音楽教師枠で採用された。しかし実際は、多くのプロミュージシャンが集まるニューヨークで、外国人にとって音楽教師は狭き門だと分かり、数学教師に抜擢されて10年間勤務。そのあとクイーンズ図書館の家族向け放課後教室で、スペイン系、中東系、アジア系移民の子供達に数学を教えた。そこで多数の移民のための教育強化推進プロジェクトやイベントに邁進するが8年後にプログラムが予算削減で図書館ををレイオフされた。それを機会に独立、学習塾を立ち上げ現在5年目に突入したところだ。家庭では大学生の娘と息子を持つ2児の母でもある。今後は、スポーツや芸術活動に忙しい子供たちのためのオンラインレッスンに力を入れていくのと同時に、マンハッタンからの生徒を積極的に受け入れていくことを目標にしている。今年、スペシャライズドハイスクールの同塾合格率が5割を超えた。
 数学教師としての硬い顔を持つ一方で、音楽家としての心もまだしっかりと持っていて、好きなコンサートなどには今も忙しい合間を縫って出かける。トシ・カブチーノのキャバレーショーは常連のファンで、キャーと嬌声をあげている女性がいたら、それは和子さんだ。(三浦良一記者、写真も)