株式会社ファーストブランド代表取締役社長
河本 扶美子さん
河本扶美子さんは、日本国内で2400人を超える経営者、個人事業主のコンサルティングを含めたサポートを行いながら、日本で唯一、全国のメディアと連携して専門家紹介サイト「マイベストプロ」を47都道府県に1サイトずつ全国で展開している。2017年にジャパンエキスポ・パリでマイベストプロ登録者をパリ在住者に紹介するなど本格的に海外への取り組みをスタートし、昨年は、当地ニューヨークでもマイベストプロの登録者とニューヨークの人々をつなぐイベントを成功させた。今月27日(土)には再びニューヨークで日本から専門家4人を連れてイベントを開催する。
1年半前に「プロフィフティプラス」という50代以上の人たちの独立を支援するプロジェクトを立ち上げた。「シニアという言葉は日本ではネガティブな意味で使われることが多いんです。第一線で活躍していた人が、定年を境に突然プロテクトされる側の立場になってしまう、それは絶対に違うと思う。30年以上勤めて培った知見を使わない手はない」と。専門的な知識や経験を社会に生かすことができるのに、その経験を必要としている人との出会いがないまま消えていくのは「日本の損失」だと言い切る。同社で国内登録している2400人のうち1000人以上が50代以上。マイベストプロの大きな役割の一つは「エイジレスの社会を作ること」だという。銀行勤務を経てノースウエスト航空の客室乗務員と機内通訳をしていた時代、さまざまな外国のビジネスパーソンたちと接し、80代になってもバリバリ仕事をしている姿を見て、人が一生輝いて生きていけることがとても素敵だと思った。日本では定年後のサービスの多くは、余生を楽しむ、健康をいかに保つかといったことに偏りがち。知見を生かし社会で活躍できる場を、というサービスがなかなかないのが現状だ。
「どんなことにも真摯に向き合う。そして新しいことにチャレンジすることを恐れない」。河本さんの自分評だ。そんな河本さんにも実は大きな挫折があった。3歳から始めたピアノはコンクールで入賞することもあり「世界的なビアニストになる」のが夢だった。中学3年の時、まさに世界コンクールレベルのピアニストたちの演奏を目の当たりにし、「中学生ながら絶対に勝てないと思った」。努力しても勝てないものがこの世の中に存在することを知った。祖父が実業家であったこともあり、努力すればできる世界で頑張ろうと音楽への道は諦め、普通高校に進学したあと91年に獨協大学経済学部を卒業、太陽神戸三井銀行(現三井住友銀行)に入行。以来ピアノには触れていない。
16年前にいまのビジネスを立ち上げ、7年間は赤字。9つのビジネスで失敗したどん底時代の自分を支えたのは、ピアノで努力したいのに努力しても報われない世界を知った自分が「今は苦しいけどここは頑張れば行ける世界だから」と背中を押したから。
「志を諦めず」が好きな言葉だ。「最近、ビジネスで進む道が見えたせいか、クラシックではなくて、ジャズピアノをやってみてもいいなと思ってるんですよ」と笑った。それもまた、もうひとつの志だ。
(三浦良一記者、写真も)
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マイベストプロのイベントは、27日(土)午前10時からニューヨーク日系人会(西45丁目49番地11階)で開催される「サクラヘルスフェア」に参加するNY日系ライオンズクラブの「ライオンズ大学大人の教養講座」で実施される。講師は司法書士の山口里見さん、心理カウンセラーのつだつよしさん、建築士の鈴木弘樹さん、臨床心理士の三木潤子さん。参加無料だが要予約。電話212・840・6942またはEメールinfo@jaany.org