夫が急死した場合、日本の遺族年金は受け取れるのか
最近はコロナ禍のなか、在宅勤務が増えた結果、運動不足やストレスで血管に障害が生じて急死される方がいらっしゃいます。そんな状況を背景に「米国の企業に勤める夫が死亡した場合、日本から遺族年金を受給する資格があるのか」という質問が寄せられています。以下Q&Aでご説明いたします。
Q:夫(現在57歳)は日本の会社に5年勤務ののち渡米。アメリカでの勤務経験はすでに22年あり今後とも米国で働く予定です。もし夫が先に死亡した場合、配偶者の私に遺族年金が支給されるのでしょうか?
A:奥さま(現在53歳)の場合は、これから説明します3つの要件を満たせば遺族厚生年金が支給されます。
(1)ご主人の要件 ①から④のいずれかに該当していたことが必要です。①死亡日に厚生年金の加入者であった(被保険者)人 ②加入者であった間に初診日のあるケガや病気で初診日から5年以内に死亡した人 ③障害厚生年金の障害等級1・2級の受給権者 ④老齢厚生年金の受給権者又は老齢厚生年金の受給資格期間を満たして死亡した人 以上の4つの要件をご主人に当てはめて考えてみます。
① ご主人は、渡米後は厚生年金に未加入なので当該要件には該当しないと思われがちですが、実は日米社会保障協定により、ご主人が米国企業に勤務中ということはソーシャルセキュリティーに加入中でありそのことは日本の厚生年金に加入中とみなされます。つまり厚生年金の被保険者であるとみなされ①の条件をクリアーしているとみなされます。これは非常に重要なポイントです。
② ①で説明した通り、米国年金の加入期間中は条件を満たせば日本の年金制度に加入していたとみなされますので、米国企業に勤務中の初診日の記録を書面で残しておくことは重要です。
③ 記載の通りです。
④ 現在厚生年金の受給資格は10年以上加入が条件です。一方遺族年金の受給のためには25年の加入期間が条件です。米国にお住まいの方の場合は受給資格の算定上「日本の年金加入期間」+「カラ期間」+「米国年金加入期間」を合算して25年以上あれば受給資格を満たすことが出来ます。上記の期間は重複することは出来ませんのでご注意ください。このことは、④の要件に適合する方が多くいらっしゃるはずです。亡くなったご主人の日本での年金加入が少ない期間の場合でも、米国年金やカラ期間を加算すれば遺族年金を受給できるケースがありますので是非見直されてはと思います。
(2)保険料納付要件 死亡日の前日において、死亡日の属する月の前々月までの保険料を納付すべき期間のうち、保険料納付期間と保険料免除期間を足したものが、全体の2/3以上あること。
(3)遺族の要件 ご主人に生計を維持されていた妻と子供が第1位で受給できます。妻の場合は、①再婚した時 ②死亡した時 ③直系毛血族および直系姻族以外の人の養子となった時は受給できなくなります。子供の場合は18歳に到達した年度の末日までの子で結婚していない子であることが必要です。
以上から、亡くなられた配偶者の方が日本で短期間の年金加入でも米国で働かれていれば日本の遺族年金を受給できる確率は高いと言えます。でも、そうならないようどうぞ健康管理にはくれぐれもお気を付けください。
海外年金相談センター
市川俊治
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