求められる帰国生像

コロナ時代の帰国受験 最終回 田畑康 

 いよいよ本格的に受験期に突入しました。早稲田アカデミーニューヨーク校からも、受験生が「隔離期間」を計算して早めに帰国をし始めています。

 2週間の隔離期間も、受験生にとっては大事な追い込み期間です。早稲アカは国内の校舎でもオンライン授業を実施しているので、帰国後すぐに(時差ボケが治り次第)授業に参加をしている生徒が多いですが、時差をうまくクリアして、ニューヨークからの配信授業の受講を続けている生徒もいます。昨年まではなかった学習形態が生み出されたとも言えます。

 「コロナ時代の帰国入試」、最終回の本稿では「コロナ時代」だからこそ求められる「帰国生像」について考えてみます。

 2011年8月、米デューク大学の研究者キャシー・デビッドソン氏(現在はニューヨーク市立大学大学院センター教授)が、ニューヨークタイムズ紙のインタビューで「2011年度にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」と語り、大きな話題となりました。人工知能やロボティクスの発達に連動した、今では想像もつかない職業が新しく現れる一方で、既存の職種が消えていくという現実が浮き彫りになったのです。

 最近、私が授業の中で「なくなる職業」について生徒に聞いてみたところ、「コンビニの店員」や「乗り物の運転手」などの職種が挙がり、かなり情報が浸透していることがうかがえました。しかし、将来は「外科医」や「弁護士」の仕事も人工知能やロボットに奪われるかもしれないという話をし、議論を深めました。

 今年は2020年。デビッドソン氏の語った「2011年度入学」の小学生は高校生です。現在中学受験や高校受験を目指しているお子様はほとんど同じ世代ということです。

 日本の政府、文部科学省は「2020年」を目標に、「知識偏重から人物重視」へと教育改革を進めてきました。世界で競争できる人材を育てるためにです。そして、その「人物」を見極める手段として、「面接試験」が大きなカギになってきています。なぜなら、面接で判定できる「コミュニケーション能力」こそが、人工知能にもロボットにも搭載できない能力だからです。

 帰国生入試で、いわゆる学力をはかるための「学科試験」以外に面接を重視する動きが顕著になってきているのは、明らかに学校からのメッセージです。

 人類の歴史には大きな転換点がありましたが、人工知能やロボティクスの発達の真っ只中にコロナの時代が交差したというのは、ただの偶然ではないでしょう。新しい時代の足音が聞こえます。

「合格祈願!」

田畑康(たばたやすし)

早稲田アカデミーニューヨーク校校長。海外生・帰国生指導歴15年。自らも帰国生(オーストラリア、マレーシア)であった経験を生かし、「合格のその先」を見据えた指導を心掛けている。