百万人を超える海外在留日本人で、日本の国政選挙で投票できた日本人が2万人から増えない現状が続いています。(1)遠すぎる在外公館、(2)短すぎる投票期間、(3)間に合わない郵便投票が主な原因です。
実は(3)の郵便投票は23年間も実施されており、日本国内よりも権威を与えられている制度です。それは選挙の根幹である立会人なしでの投票が認められているからです。ところがその郵便投票が劣化しています。途上国などでの遅配、国内での週末配達停止、選管ミスなどが理由です。(1)と(2)も改善の余地はありません。つまり、在外公館で投票できない人のセーフティーネットであった郵便投票制度が機能しない以上、いよいよ在外ネット投票しか方法はありません。総務省有識者会議が2018年に提言した制度です。
しかし、10月に竹永浩之海外有権者ネットワーク共同代表と若尾龍彦海外有権者ネットワーク日本代表を国会にお連れしましたが、まだまだ高い壁が存在します。本人認証を譲らない意見や、国内でのネット投票への波及に反対する意見などが存在するのです。各党への働きかけや、憲法裁判も検討する一方で、 (1)2024年4月に開始される海外でのマイナンバーカード利用による簡易な在外選挙人登録や(2)郵便投票用紙の在外公館からの発送と在外公館での受領、なども検討されるべきです。
そんな中、国内でもさまざまな動きが出ています。茨城県つくば市は国家戦略特区「スーパーシティ」の枠組みを生かして2024年10月の市長選挙と市議会議員選挙で、全国初のネット投票の実用化を目指しています。本人確認、買収や強要の回避、通信障害、データ改ざんなどの問題点の克服に取り組んでいます。
茨城県下妻市は12月10日投開票の市議選で通信アプリLINEを使った不在者投票用紙の交付を行います。
こうした投票率アップに対する動きも追い風にしたいものです。投票は憲法に保障された国民の権利であり、海外においてはネット投票しか道がないことが明らかになった今がチャンスです。その前に立ちはだかる壁を超える知恵とご支援を海外在住日本人の皆さんから頂きたく思います。
ふじた・ゆきひさ=慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。