『地球の歩き方』と『ムー』のコラボ

地球の歩き方編集室・編集
学研プラス・刊

 本書のページをめくったら、昭和後期に小学生だった人ならば懐かしいと思うはずだ。ページをめくる度に、あの時の記憶の引き出しが開かれる。

 夜7時半から放映された水曜スペシャル川口浩探検シリーズと木曜スペシャルの矢追純一のUFO特番シリーズ。それと夏休みのお昼に放映された「あなたの知らない世界」の幽霊特集だ。夜のチャンネル権は親にあったので中々観せてもらえなかったが、翌朝の教室は未知の生物、UFO、超能力の話題で持ちきりだった。小学生向けに出版されたUFOの本や世界七不思議の本をお小遣いで購入して読んでいた。土曜日の夕方はNHKで『アトランティスから来た男』というアメリカのドラマの吹き替え放送があり、沈没したアトランティス大陸の生き残りの主人公がドルフィンキックで泳ぎ、悪と闘うアクションドラマも大好きだった。オカルト雑誌『ムー』も大人気だったが、小学生の私には難しかった記憶がある。

 成長して思春期になると、恋愛やファッション、アイドルの方に興味が行き、UFO、幽霊、未知の世界へのドキドキ感は思い出になってしまった。しかし、いつか世界七不思議であるモアイ像のあるイースター島やナスカの地上絵を見てみたいなとは頭の片隅にはあるし、アメリカ人の友人がバミューダにバケーションに行くと聞いた時は魔の三角地帯が過った。

 2020年3月、突如世界が封鎖された。Covid-19という新型のウイルスが発生し、分刻みで日常生活を脅かし、人々の不満が爆発し暴力に発展するという超現実的な怖さにも直面した。日常を取り戻しつつあるが、以前のように治安は良くなく不安がいつも心にある。そんな状況で本書を見た瞬間、現実の恐怖感がぶっ飛ぶほど子供時代の未知に対する怖いけど知りたいというドキドキ、ワクワク、ハラハラの気持ちが蘇った。

 ニューヨークでコレを持っている人は日本からの旅行者だとすぐ分かる黄色の表紙の旅のガイドブック『地球の歩き方』と荒唐無稽と言ったら怒られるかもしれないので、夢があるオカルト雑誌『ムー』がコラボレーションをしたのだ。ともに1979年に創刊だという。本書のユニークで面白い点は世界旅行の達人である『地球の歩き方』といえばの歴史や行き方の交通の説明があり、その一方で、世界の不可思議な謎に迫ったムーならではの話も掲載されているところだ。ミステリーの定番であるエジプトのピラミッドはもちろん、UFO、イエティ、日本の縄文遺跡のページなどもあり、世界中を網羅している。MAPは両面になっていて2つのサイドが載っている。また地球の歩き方とムーの編集長の対談も掲載されている。

 コロナ禍で旅行ガイドブックが売れず企画されたという。今年2月に発売されるや現在も売れている。副題がパラレルワールドと言っている通り、現実の世界と、あるかもしれない平行する異次元の世界の両方の世界を堪能できるガイドブック。子供の頃を思い出させてくれて、読み物としても楽しいし、それにこれから実際に旅行に行く準備にも使えるし携帯もできる。(山河藍)