ニューヨーク市では9月13日から屋内飲食でのワクチン接種証明と身分証明書の提示を義務付けているが、23日午後5時ごろ、マンハッタンのアッパーウエストサイドのレストランで、店先で接種証明を求めた店員が州外から訪れていた3人組の客の一人から顔を何度も殴られる事件が起こった。周りにいた従業員が止めに入ったが、大声を出して暴れ、指示に従わないため、男性従業員が間に入って取り押さえて警察に通報、駆けつけた警察官が三人の身柄を拘束して連行した。
被害に遭ったのはブロードウエー90丁目のイタリアンレストラン、カーマインの22歳の女性従業員。身柄を拘束されたのはテキサス州から訪れていた観光客のサリー・ルイス容疑者(49)、カエイタ・ランキン容疑者(44)、タイニー・ランキン容疑者(21)の3人を傷害容疑で身柄を勾留。(写真:来店客のワクチン接種証明を求める従業員(事件翌日の24日昼、カーマインレストランで))
同店を経営するアリカート・レストラングループのジェフリー・バンク社長は「1年半の長きにわたり、レストランなどの飲食業界はコロナ禍で苦しんできたが、従業員一人一人が、お客様の安全のためにこれからもできる最善のベストを尽くしていくことに変わりはない」とコメントした。同店では翌日からの週末には私服の警備員を店頭に配置し、従業員と客の安全対策を行った。
事件直後、ゲール・ブリューワー・マンハッタン区長は「レストラン従業員を襲わないで欲しい。客の安全を守るために働いている彼らの安全を市民は守らなくてはならない」と記者会見で訴えた。
レストラン業界警戒
NY市内のレストラン業界団体であるNYCホスピタリティー連合のアンドリュー・リッジ・エグゼクティブ・ディレクターは「レストラン関係者に危害を加えた者に対する罰則の強化を市と州に対して要請する」と声明を発表した。
また、事件を受け、ニューヨーク日本食レストラン協会(ボン八木会長、加盟168社)は25日、加盟レストランに「今後もこのような事件が起こる可能性はないとも限らないのでくれぐれも注意して頂きたい。万が一事件が起きた際は即時警察へ連絡すると同時に, 邦人の方が巻き込まれた際には日本領事館(電話・212・371・8222)にも報告するように」と警告を発した。
八木会長の話「コロナ禍の中、ワクチン効果で室内飲食は順調ですが、経営者達は従業員不足に悩まされている最中の事件は危機感を感じていると思います。また、アジアンヘイトクライムで悩まされた時を思い出させます。お客様には安心、安全な環境の中で美味しい食事を楽しんで頂くために、経営者はお客様、従業員の身の安全確保も視野に入れ営業しているので、ひと休みも出来ず大変な状況です。私達はエッセンシャルワーカーですので、お客様が、このような事件を起こさない様にお互い協力して楽しい食事をして頂きたいの一心です」。