カナダ欧州連合の誕生 海外日本人サポート

 カナダのカーニー新首相は就任直後、米国ではなく先ず英仏両国を訪問しました。カナダの国王でもあるチャールズ国王は破格の歓迎を行い、本年中のカナダ訪問も検討中と言われます。旧宗主国でもあるフランスのマクロン大統領は「関税よりも国際ルールを尊重する公正な貿易が望ましい」と新首相を支援しました。

 両国とカナダは特別の関係を有するとともに、外国人で初めてイングランド銀行(中央銀行)総裁を務めたカーニー首相は金融危機対応経験もある欧州の指導者としての定評もあるのです。カーニー首相は「欧州以外の国々の中で最も欧州的なのがカナダである」とも強調しました。

 トランプ大統領による関税攻勢に対し、カナダは欧州との包括的経済貿易協定(CETA)を結び貿易額が7%増加した他、安全保障面での協力も拡大しています。米国製品に代わるカナダ製品の輸入拡大はアジアなどへも広がっています。またカナダは石油や天然ガスの対米輸出を減らして日本や韓国に回す動きも始めています。

 しかし、関税以上に「カナダを米国の51番目の州に」とのトランプ大統領の発言に反発したのは、政府以上に国民のナショナリズムであり、国民と企業でした。米国製品ボイコットのSNSが爆発し、約1か月で米国製食品、衣類、家庭用品などの売り上げが20%減。米国への旅行の激減などにより、米国人雇用が1万4000人減、などと言われます。カナダ国旗の掲揚も増大しました。 

 加えて、カナダはエネルギーを戦力的武器として活用する検討を始めました。米国の輸入の約60%を占める石油を始め、天然ガス、水力発電、ウランなどの対米輸出を減らして、他の国々へと多角化する政策です。

 カナダ欧州連合の誕生は、こうして、米国中心の世界市場構造に代わる新しい市場構造が、世界全体に拡大する象徴となっています。これは米国や米国民も大きな打撃を受ける可能性を秘めており、米国とカナダ政府間での大人の対応が望まれるところです。

 私はかつて、国境を接する大国米国に対して、はっきりモノ申すカナダの姿勢が日本にも必要だと指摘したことがあります。今回のカナダ欧州連合の動きは日本にとっても大いに参考になると思います。

ふじた・ゆきひさ=オックスフォード大政治国際問題学部客員研究フェロー(英国在)。慶大卒。国際MRA(現IC)や難民を助ける会等の和解・人道援助活動を経て国会議員、財務副大臣、民主党国際局長、等を歴任。現在、国際IC日本協会長、岐阜女子大特別客員教授も兼任。