ウエストチェスターの隠れ家的ギャラリー キノサイトウ

 ウエストチェスター北部の町ピークスキルの南、ハドソン川にほど近いバープランクという町に「キノサイトウ」がある。「キノサイトウ」は晩年をこの地で過ごしたアーティスト斎藤規矩夫(さいとうきくお)の意志を継いで創立された学術アートセンターで、二つのギャラリーと多目的パフォーマンススペース、教室、定期的に常駐アーティストが入れ替わるスタジオ2つとカフェを備えている。読者の皆さんに教えたい気持ちと教えたくない気持ちのせめぎ合いを経て、とても素敵な場所なので、やっぱりご紹介。

■アーティスト斎藤規矩夫

 1939年東京出身。22歳で日本画家に弟子入りした後、1966年に来米。ラ・ママ劇場創始者エレン・スチュアートとの出会いをきっかけに舞台装置、衣装、照明、小道具をデザインす

るほか、自らの演劇も演出した。ニューヨークのアート・スチューデンツ・リーグに在籍後、ラリー・プーンやケネス・ノーランドなど著名画家のアシスタントを務める。斎藤は長い間、絵画と演劇の2つの世界を行き来しながら活動したが、最終的に絵画制作に専念。現実と想像両方のモチーフや記号を取り入れ、大胆かつ予想外な色使いで独自の表現方法を確立した。1996年にデューク大学のアーティスト・イン・レジデンスに、2003年には武蔵野美術大学客員教授に招かれる。2014年にバーパンクの旧カトリックスクールの建物と敷地一帯を購入し移住。2016年逝去。

■「キノサイトウ」

 2020年、斎藤のスタジオは彼の遺志を継いで、抽象芸術創作と実践に根ざしたさまざまな実験を育む非営利アートセンター「キノサイトウ」としてオープン。境界や定義にとらわれない芸術に対する斎藤のビジョンを推進している。古い建材を最大限に活かしてリノベーションした煉瓦造りの本館がとにかく美しい。1階には自然光が豊かに差し込むギャラリーが2つ、水彩画やオブジェ作成などのワークショップを開催する教室とカフェがあり、ギャラリーの一つでは常に斎藤の作品を展示している。2階にはギャラリーとしても使用可能な多目的ホールがあり、5月18日までアーティスト2人による参加型インスタレーション「Sound Forest / Between Worlds」を展示している。 主に木材を使ったオブジェに音響装置を組み込んだもので、作品の一部に座り込んで音を聴くユニークなアートだ。

 1階のカフェでは美味しいコーヒーをリーズナブルな値段で淹れてくれる。カフェ前のテーブルで一服するも良し、敷地内の広々したガーデンにはあちこちに椅子が置かれているので、天気が良い日にはガーデンでのんびりするも良し。他の美術館やギャラリーでは体験できない、静かで穏やかなエネルギーを全身で感じることができる「キノサイトウ」を是非訪れて、ニューヨーク郊外ならではのアートを体験して欲しい。

■4月のワークショップ *キノキッズ以外は全て要予約

□大人向け水彩画 12日(土)午後1時から3時 参加費20ドル

□子供向け「キノキッズ」毎週日曜午後1時から4時 参加費無料

□大人向け卓上オブジェ 19日(土)午後1時から3時 参加費25ドル

□大人向けミックスメディア 26日(土)午後1時から3時 参加費25ドル

KinoSaito

115 7 th St. Verplank, NY 10596

ホワイトプレーンズから車で約30分、マンハッタンからはメトロノース・ハドソンラインに乗って66分、ピークスキル駅で下車してウーバーで8分ほど。

金〜日 10:00〜17:00(感謝祭後の金曜日はクローズ)

入場無料(任意寄付)  www.kinosaito.org