イケメン男子服飾Q&A 83
ケン 青木
春分の日も過ぎ、気温も少しづつ上がり、確実に陽が長くなってきました。そうなるとまだまだコロナ禍の昨今ではありますが、健康のためにも外で散歩やジョギングをしたくなりますよね。そんな時、自然に身につけたくなるのがスウエットシャツとスウエットパンツですね。
僕と同年代の皆さんは、おそらく「トレーナー」と言っていたかと(笑)。特に学生時代には、ボートハウス、クルーズ、バークレーなどファッション専門店のロゴが大きく胸に描かれた華やかなデザインの「トレーナー」が大流行でした。そして「体育会」ほど厳しくない、「愛好会」のテニスサークルで全員お揃いの「トレーナー」にスタジャン(これも和製英語スタジアムジャンパーの略語、英語では一般にAward Jacket)でキメたものでした(笑)。
御存知の方もおられるかと思いますが、トレーナーとはアイビーファッションで一世を風靡したVAN JACKET INC. 通称VANの創業者、石津謙介さんの造語だと言われております。とても良く出来た造語であったので、アメリカに来てメンズショップで「トレーナーが欲しい」とお店の方に言って問題を起こした方少なくない人数と言われております(笑)。石津さんはその他スイングトップ(ウインドブレーカーのこと)も造語され、sneakersもこそドロでは良くないとsneekersに換えて靴箱に印刷させたりされています。ユニークと言いますか、石津さんの確たる哲学がおありだったのでしょう。
東京五輪、どうなるのかなんとも言えませが、次は100年ぶりにパリで五輪。1900年、1924年に次いで3度目になりますが、映画Chariots of Fire邦題:炎のランナー、御覧になられましたか? 1924年のパリ五輪での英国男子陸上競技の選手たちの活躍を描きました。当時、選手たちはトレーニングやウォームアップの際、スウエッターsweater、文字通りセーターを着ていたのでした。
実はパリ五輪の4年前、1920年にアメリカのRussell Manufacturing Corporationが、綿素材で表地が平織り、裏地がパイル(タオル地)のニット素材を開発したのですが、まだ広まってはいなかったのでした。綿素材なのでウールよりも洗濯など手入れが楽ですし、価格も安価。アスレチックウエアとしてアメリカから世界に広まっていったのでした。今でも大学の売店では学校のロゴマークの入ったスウエットシャツが販売されています。コロナ禍ですが、お気に入りのスウェットシャツを着ていい汗を流しましょう。それではまた次回。
けん・あおき/日系アパレルメーカーの米国代表を経て、トム・ジェームス・カンパニーでカスタムテーラーのかたわら、紳士服に関するコラムを執筆。1959年生まれ。