オックスフォード大学に赴任してから3週間が経ちます。この間欧州は米国から無視される存在となっています。ウクライナを巡るサウジアラビアでの米国とロシアの会談にウクライナの大統領も欧州の首脳も招かれませんでした。欧州の首脳会議が連日開催されていますが、最近のドイツを含め政権交代も続いている欧州諸国の首脳間の連携も不安定です。他方、防衛予算や軍事連携を強化して欧州を守ろうという危機感と連帯意識も増していますが、移民問題や国民生活の低下に直結する問題となります。
トランプ政権誕生で、世界の外交が劇場化していますが、以下を冷静に見据えることが重要です。①政権が代われば政策が変わるのが当然。②紛争仲介には当事者と直接交渉するのが肝要。ロシアとの直接交渉がいかに重要かが明確になった。拉致問題では北朝鮮との交渉が肝要であるように。③欧米主要国は対立するロシアや中国などと政府間以外の多様な接触点を保有している。日本ではこれらの視点が欠けており、激動する世界に対応する立て直しが必要です。
したたかな欧州は、世界中に築いた植民地から撤退する際には、インドとパキスタン、イスラエルとパレスチナなどの対立構造を作って分割統治を行ってきた旧悪もあります。それに対し私の英国やフランスの友人などは、それを贖罪しながら紛争地域の人々への支援活動を行なっています。
先日ここの大学で開催された政治家や有識者の講演会で以下が指摘されました。米国はカナダ、メキシコ、パナマなどに強権を発動しているが、その先に来る英国に対する強権への対応を準備すべきだ、と。米国を友人というより脅威と感じ、自信喪失の兆しすら見られます。中国、インド、ASEAN、アフリカなどグローバルサウスなどと米国以上に強い関係を誇る欧州でのこうした状況は世界全体の大問題です。
そして、その次は日本となった事態への備えが必要です。前述した冷静な対応、外交体制の整備、そして、したたかな国家運営(ステートクラフト)が日本に必要です。これから2年間、激動する世界の鼓動と日本のとるべき対応を欧州からお伝えして参ります。
ふじた・ゆきひさ=オックスフォード大政治国際問題学部客員研究フェロー(英国在)。慶大卒。国際MRA(現IC)や難民を助ける会等の和解・人道援助活動を経て国会議員、財務副大臣、民主党国際局長、等を歴任。現在、国際IC日本協会長、岐阜女子大特別客員教授も兼任。