進化する迷路の立体アート 大樫 健さん

アーティスト

 昭和レトロな迷路ゲーム。慎重に揺らして小さな銀のボールを動かし、ゴールに持っていく。その立体版は、複数の迷路で組み立てられたカエルやカメレオン、サイなどのオブジェで、持ち上げると小さくカランとボールの音がする。一面をクリアしたら次の面にボールを移動し、根気よく迷路をクリアしゴールに到着。

 この「3D Maze Art」を発明したのは、イーストチェスター在住のアーティスト、Ken Augushi(大樫健)さん。小学校6年生の頃、工作の宿題のために参考にした迷路の作り方の本が「迷路の道」の始まりだった。ミドルスクールに入ると参考書は要らず、頭に浮かんだ構図を段ボールと接着剤で現象した。ビデオゲームのマリオがジャンプする姿で「重力」に気づき、それまで平面だった迷路を立体にしてみた。最初の立体作品は、6面の迷路を組み立てたリンゴ。学校で物理や数学、幾何学を学ぶにつれ、迷路はさらに進化する。友人のために作ったバレエシューズやギターなどが評判となり、フットボール好きの先生のためにはヘルメットを作った。この頃から材料をアクリル樹脂に変えた。パーソンズ美術大学に進学し、3Dソフトウェアやプリンター、レーザーカッターの使い方を学び、迷路作品はさらに発展した。

 現在、日系の照明会社に勤務しながら、自宅のPCと3Dプリンターで製作している。2023年、迷路アートがソフトウェア企業サイボウズ米国法人を立ち上げた山田理氏の目に留まり、東京での展示の提案があった。山田氏の人脈で、岐阜県在住の宗像剛毅さんと知り合う。宗像さんには失読症の障害があるが手先が器用で、職業能力開発校で木工を学んでいた。そして3Dソフトウェアとプリンターを持っていた。東京での展示に向け、2人のZoomで話し合う日々が続いた。大樫さんがアメリカで作品をデザインし、宗像さんがプリンターでパーツを作る、そして部品の組み立ては愛知県の就業移行支援施設「きずな」に依頼した。

 1月21日、東京都庭園美術館(港区白金台5ー21ー9)での展示「ランドスケープをつくる 3D Maze Art」が始まった。前日の会場準備で、大樫さんと宗像さんは初めて対面した。思いがけない人との出会いで、迷路アートの可能性はどんどん膨らんでいる。2月24日(月)まで。大樫さんの作品の詳細はhttps://3dmaze-art.ktgc.co.jp、同美術館の詳細はhttps://www.teien-art-museum.ne.jpを参照。

(浜崎都、写真も)