空室率が50年来最低に
8日発表されたニューヨーク市住宅・空室調査で、利用可能な賃貸物件の割合(空室率)が2023年に1・4%にまで減少したことが分かった。1968年以来最低の空室率で住宅不足が鮮明となった。
コロナ禍の最中、多くの人が引越し、空室率が上昇したことで家賃が急落したが、人々が都市に戻るにつれ急騰。昨年12月のマンハッタンの新規賃貸物件の月額賃料の中央値は4050ドルにまで上昇した。コロナ禍前の2017年の空室率は3・63パーセントで、市は過去2年間で約6万戸の住宅を追加したにもかかわらず、23年の空室率は1・4%と50年来の最低水準となった。
特に低所得者層を直撃しており、月額賃料が1650ドル(市全体の中央値)未満のアパートの空室率は1%未満、最も安価な住宅(月1100ドル以下のアパート)の空室率に至ってはわずか0・4%しかない。年収約7万ドルの平均的な世帯であっても収入の半分以上を家賃に費やしており、月2400ドル(約36万円)以上で借りられるアパートは4%未満と2021年の13%から大幅に減少した。
住宅費高騰で労働者が都市から追い出されて経済を脅かしている一方、移民流入でホームレス保護施設は逼迫している。「健全な」空室率は5〜8%程度であると考えられており、市当局は5%を切ると「住宅非常事態」とみなしている。
住宅危機は悪化の一途
対策は遅々として進まず
今回の調査はコロナ禍からの経済回復期に住宅危機が悪化の一途であることを示した。新規建設を抑制する政策や、潜在的な住宅購入者を賃貸住宅に押しやった金利急上昇が空室率の急低下を助長したと見られる。
住宅の専門家によれば市は数十万戸の住宅を建設する必要があると推定しているが、市も州もこの住宅危機を打開するような施策は打ち出せていない状態だ。昨年、ホウクル州知事が郊外開発促進の推進などを州議会に提案したが、可決できなかった。今年は新築建設に対する税制上の優遇措置やテナント保護を巡り、不動産業界、労働組合、テナント擁護団体の間で議論が行き詰まっている。
ホウクル州知事は今回の調査結果を受けて、「この危機を抜け出す方法を自分たちで構築するしかない」と声明を出した。
アダムス・ニューヨーク市長も「住まいの需要が住宅建設能力をはるかに上回っている」と述べ、対策の必要性を訴えた。市長は市のゾーニング規定の全面見直しを行うことで10万戸ほどの住宅が建設可能としている。これは市議会で今秋にも承認される可能性がある。しかし、住宅専門家らによれば、この程度ではニューヨークの住宅難解決にはほど遠いという。