魅惑のアメリカ旧国道「ルート66」なんでもベスト10

その10:国立・国定公園 後編

 ルート66ファンの皆さん、こんにちは。新年明けましておめでとうございます! このコラムが掲載される頃は1月も下旬だと思いますが、2019年第1回目としてご挨拶いたします。今年もよろしくお願いします。
 さて、先月に続き国立国定公園の話をしていますが、何ともタイミング悪く、議会での予算案決議が難航していることが理由で政府機関が閉鎖状態にあります。皆さんがこれを読むころには解除されていると信じていますが、私の知人に年末年始恒例の国立公園の旅を泣く泣くキャンセルした人がいます。一般的に国立公園へ出向くのは夏季が多く、冬場は悪天候の影響から比較的旅行者が少ないことも事実ですが、冬の国立公園にも素敵な所が多々あります。多くの旅行者が断念せざるを得なくなる前に1日でも早く正常化されてほしいものですね。 
 さて、今年度第1回目は引き続き「国立・国定公園編」。ルート66を訪れた際に「ちょっと脇道ドライブ」感覚で寄れる場所を厳選しました。筆者が独断と偏見で選んだベスト10、第5位から第1位の紹介です。
 第5位国立史跡、英語で言えばNational Historic Siteの扱いとなりますが、ルート66を愛するものとしては外せない場所です。イリノイ州と言えばシカゴですが、同州の州都はスプリングフィールド、ご存知でしたか? そのスプリングフィールドの街中、「リンカーンの家国立史跡」には実際にリンカーンと彼の家族が住んでいた住居が残っています。史跡はリンカーンの家のほかにも周辺の家々や歴史的建築物も保存されており、エリア全体が19世紀の街を再現したテーマパークのような感じです。もちろんツアーに参加すれば家の中にも入ることができますよ。その他にも近隣にはリンカーンのお墓、図書館、博物館、それに共同経営をしていた法律事務所の一部も残っています。彼の影響力の大きさを実感できるお奨めスポットです。
 続いて第4位は、カリフォルニア州より「ジョシュア・ツリー国立公園」。先月ご紹介したモハーヴェ砂漠の一部と考えられることもありますが、1994年立派に国立公園に制定されました。広さは約3200平方キロメートルで、東京都のおよそ1・5倍の大きさです。高度、湿度が高いわりに比較的涼しいモハーヴェ砂漠はジョシュア・ツリーの特別生息地となっており、公園名はそこから採られたものです。多くの読者の皆さんにとってジョシュア・ツリーと言えば、やはりアイルランドの伝説的バンド、U2の5枚目のアルバムタイトルではないでしょうか。日の入り、夜間、明け方の景色は写真好きのあなたにピッタリです。
 第3位は少しマイナーかもしれませんが、ニューメキシコ州の州都サンタフェより25マイル(約40キロ)南東に下ったところにある、「ペコス国立歴史公園」を紹介します。ここはペコスのアナサジ族の末裔と、植民地支配を狙うスペイン人たちが出会った場所と言われています。歴史を書き始めると今月はそれで終わってしまいそうなのでお伝えしたいことを要約しますと、ペコス国立歴史公園にはペコス族の14世紀のプエブロ式住居、スペイン人ミッションが建てた教会の跡、そのそばに残る「キバ」と呼ばれる聖なる集会場の跡などが残されています。また、この公園の一部は南北戦争の戦いのひとつ1862年3月のグロリエッタ峠の戦いの跡も敷地内に含まれています。見渡す限りの静寂、ぜひ体験してみてください。
 さあ残りは2つ、これらも「脇道ドライブ」というには結構な距離がありますがトップ10には入れたい場所です。まずは第2位、同じくニューメキシコ州から「ホワイトサンズ国定公園」です。ホワイトサンズを知らない方は少ないと想像しますので細かい説明はやめておきますが、簡単に言えばニューメキシコ州アラモゴードの南西15マイル(約25キロ)、標高4000フィート(約1200メートル)に位置する白い大砂丘地帯、でしょうか。当時のフーバー大統領によって1933年、アメリカ合衆国国定記念物に指定されました。筆者がホワイトサンズの話をするとき多く聞かれるのが「ホワイトサンズって国立公園ではないの?」という質問です。ホワイトサンズでは定期的にミサイル実験があるため、公園自体が閉鎖されることもあります。国立公園は国が定めて管理していますから、その要綱のひとつに「戦争や紛争時でも、国立公園は破壊されずに残されるべき特別なもの」というものがあります。場所的にも軍事関係の基地が存在し、ミサイル実験も行うようであれば、州や郡の管理する国定公園レベルに留めておこうという配慮があるのかも、という話を聞いています。
 さて最後、第1位は何といっても「モニュメントバレー」ではないでしょうか。ここも多くの説明は不要と思いますが、モニュメントバレーはユタ州南部からアリゾナ州北部にかけて広がる地域一帯の名称となり、「メサ」といわれるテーブル形の台地や、さらに浸食が進んだ岩山「ビュート」が点在し、まるで異なる惑星に舞い降りたかのような光景に目を奪われます。また、古くからのナバホ族居住地域であり、居留地となった現在ではその一部はナバホ族管轄のもと一般に開放する形で公開されており、ナバホ族の聖地となっています。まだ行かれていない方は、とにかくまず行って体感していただきたい。筆者の陳腐な言葉では表現できない感動と発見が必ずあるはずです。
 今月も駆け足で紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。もっと詳しく知りたい方は筆者まで直接ご連絡ください。それではまた来月お目にかかります!(後藤敏之/ルート66協会ジャパン・代表、写真も)