DANCING IN THE NEW YEAR
依田洋一朗(52)は香川県で生まれ、生後3か月で両親と共にニューヨークに移住した。タイラー・アート・スクール(学士号)とクイーンズ・カレッジ(修士号)を卒業し、ニューヨークを拠点に創作活動を続けているアーティストだ。
フレッド・アステアの絵は「1992年ごろNYのフィルムフォーラムで見た映画『トップ・ハット』(1935年作)がきっかけでした。笑い転げるほど面白いコメディで素晴らしいフレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのダンスを見て夢中になりました。絵を描く時、表面だけでは描けなくてアメリカン・タップダンス・ファウンデーションに通って3か月ほどタップダンスのレッスンを受けたんですが、とても難しくて、クラスの女の子がクスクス笑っていたので、腹が立ってやめました」と話す。
ハンバーガーを食べている情景は「大草原の小さな家」にインスピレーションを得たもので、原作者ローラ・インガルス・ワイルダーが幼いころ育ったミネソタ州ウォルナットグローブにまで実際に今年夏に行って、現地で開催されていた地元のダンス祭りの参加者とジューシー・ルーシーという現地独特のチーズを指でつぶして食べるバーガーの光景を描いたものだという。依田の作品に描かれる人物や動物たちの表情はどれも一種独特な屈折した不思議な雰囲気を醸し出している。パブリック・コレクションとしてセゾン現代美術館、高松市美術館、三鷹市美術ギャラリーに作品が所蔵され、2020年に香川県文化芸術選奨受賞している。今年は第6回瀬戸内国際芸術祭に参加する。
父親、依田寿久と母親、順子もまたニューヨークを拠点に活動するアーティストで、共に武蔵野美術大学を卒業後、60年代に来米した。マンハッタンのソーホーにある巨大なロフトで3人で暮らすアーティスト一家だ。(三浦良一、写真も)