旅が育む生涯の友 Green Book

 1960年代初頭、黒人への人種差別が色濃く残るアメリカ南部で黒人ピアニストと彼のもとで働く白人運転手が旅をしながら織りなす人間ドラマと固く結ばれた友情物語。実際にあった話に基づき「There’s Something About Mary」(メリーに首ったけ、98年)の脚本・監督ピーター・ファレリーが制作・脚本・監督を担当。今年のトロント国際映画祭で最高賞の「ピープルズ・チョイス・アワード」を受賞している。
 主人公二人は実在した人物。英才教育を受け数か国語を話すジャマイカ出身のピアニスト、ドン・シャーリーには「ムーンライト」(16年)でアカデミー助演男優賞を受賞したマーシャハラ・アリ。ドンと旅をするトニー・バレロンガには「イースタン・プロミス」と「Captain Fantastic」(始まりへの旅、16年)でアカデミー賞にノミネートされたビゴ・モーテンセン。いずれもハリウッドきっての演技派だけに甲乙つけがたい熱演ぶりだ。
 ドンは18歳でボストン・ポップスと共演、イタリアオペラ界の最高峰スカラ座で公演するなど著名なジャズピアニストだ。トニーはブルックリン育ちのイタリア系でニューヨークの人気ナイトクラブでフロント兼用心棒をつとめるタフガイ。この二人の出会いはともに30代半ば。
 黒人が一般公共施設の利用を禁止制限される「ジムクロウ法」が廃止される2年前の1962年。ニューヨークを拠点にするドンはレコード会社との契約による南部でのコンサートツアーを前に運転手兼ボディガードを探していた。トニーは勤め先のキャバレーが2か月間休業するというのでバイト先を当たっていた最中でタイミングよくドンの話を引き受けた。ボスが黒人ということに幾分抵抗はあったが仕事と割り切った。が、最初に訪れたピッツバーグのコンサートでドンのピアノ演奏に圧倒され敬意を持つと共にドンと旅をすることを誇らしいと思った。
 後部座席に座る黒人とハンドルを握る白人運転手との組み合わせは人目を引いた。二人はさまざまな出来事に遭遇し、怒り、悔しさ、悲しさを共有し、人々の心の温かさにも触れる。かけがえのない友情を育んだ最高の旅だ。2時間10分。PG-13。(明)

■上映館■ 

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