アメリカでは誰もが知っている「Pledge of Allegiance」(忠誠の誓い)。国旗に向かい、右手を左胸に置き、起立して暗唱する「I pledge allegiance…」で始まる例のフレーズだ。
「神の下」という言葉が入っているため政教分離に反するなどの違憲訴訟も出たいわゆる論争多き事柄で本作はこれをネタに普通の家族がいかに日々、お互いの不満を募らせそれを我慢しているかをあぶりだすブラック・コメディーだ。 コメディー映画「Neighbors」シリーズなどで知られる俳優アイザック・バリンホルツの監督デビュー作で主演・脚本・製作も兼ねた一人四役。人気上昇中のアフリカ系アメリカ女優ティファニー・ハディッシュが存在感のある骨太演技で物語に喝を入れる。 米政府は忠誠を誓う「The Patriot’s Oath」への署名を国民に呼びかけた。提案したのは権力欲満々の大統領。署名は「任意」とはしているものの実情は異なる。署名した人には税金の優遇措置があり、しない人は場合によっては政府の管理局シチズン・プロテクションのエージェントの訪問を受ける。署名の期限は感謝祭の翌日、つまりブラックフライデーまで。ターキーとパンプキンパイをたらふく食べ、翌日にバーゲンをあさる恒例のノーテンキ行事はこの際後回しだ。 それでなくとも人種や不法移民、テロなど問題は山積みで国民の意見も割れに割れているところに忠誠署名の是非で連日のように各都市でデモが繰り広げられ暴動まで起こるありさまだ。 クリス(バリンホルツ)とカイ(ハディッシュ)夫婦はリベラル派。一年前に署名のニュースが流れて以来、一貫して反対を唱えている。今年も感謝祭には両親、姉弟ら家族が集まるが署名問題にはなるべく触れないつもりだ。というもの家族でもノンポリもコンサバもいるし、政治の話は裂けた方がいいに決まっているからだ。 しかしクリスの弟パットの新しいガールフレンドがびしばしのネオ・コンサバで和気あいあいの感謝祭ディナーは大荒れに。しかも忠誠署名が掘り起こした家族の問題は表からは見えない深い闇に眠っていたのだった。1時間33分。R。 (明)