原作はマリア・センプル著のニューヨークタイムズ紙ベストセラー小説。キャリアと名声を捨てて主婦として暮らしてきた建築家が人生の壁にぶち当たる。舞台となるシアトルのフリースピリット雰囲気と主人公キャラが妙にマッチするコメディーだ。
大の人嫌い、というか人付き合いを極端に嫌う。誤解されやすく、それが近隣住民とのもめ事を引き起こす。不満とストレスがどこから来るのか、解決する方法は何か、周りを巻き込みながら主人公バーナデットは地球の端っこに逃げていく。
脚本・監督は「ボーイフッド」(2014年)で第64回ベルリン国際映画祭監督賞を受賞したリチャード・リンクレーター。翔んでるバーナデットには「ブルージャスミン」(13年)でアカデミー賞、英国アカデミー賞を含む数々の賞を受賞しているケイト・ブランシェット。ビリー・クラダップ、クリステン・ウィグ、ローレンス・フィッシュバーンら個性豊かな俳優陣で脇を固めている。
バーナデットの世界に入れる人間は夫エルジン(クラダップ)と15歳の娘ビー(エマ・ネルソン)だけだ。彼女には買い物やサービス発注などの一切を頼めるパーソナルアシスタントがいる。リモートで指示を出し、たまにバーナデットの愚痴も聞いてくれる便利で信頼のおけるマンジュラ。コミュニケーションは電話かメールでバーナデットが苦手な対面を必要としない。しかもマンジュラは遠く離れたインドにいて、絶対安心の距離感もある。
そのマンジュラが実はロシア詐欺組織のフロント一味でFBIがバーナデットのところへも捜査に来る。近所とのトラブルや心の奥にある喪失感などで最近の自分の精神衛生が危ない域に達しつつあることを感じたバーナデットはマンジュラ事件を機に蒸発してしまう。彼女が向かったのは南極だった。自分の夢とエネルギーをぶつけられるものを探しに。
原作は登場人物らの手紙、ファックス、Eメールなどで物語が構成されている。映画はコンパクトにまとまっているが読み手が想像力を駆使してビビッドな物語を紡いでいく本独特のエッセンスがビジュアル化の過程で少々薄まってしまったのが残念。1時間54分。PG-13。(明)
■上映館■
Regal E-Walk Stadium 13 & RPX
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