ニューヨークで活動した20人の130点展示
1910年代〜1940年代
NY日本人歴史デジタル・ミュージアムに新企画
日本クラブで3月27日、ニューヨーク日本人歴史博物館(デジタル・ミュージアム)の新しいデジタル展示「Japanese Artists in New York City: Artistic Traces from the 1910s to 1940s」のプレビュー・イベントが開催され50人が参加した。
この展覧会は、1910年代から1940年代にニューヨークの日本人芸術家の活動を、アメリカと日本の20以上の美術館やアーカイブ所蔵の作品画像とともに美術展覧会の図録、英字新聞と日本語新聞の美術欄をもとに紹介している。また、これまで歴史に埋もれてきた無名の芸術家にも着目し、彼らが創作活動をした時代と作品が生み出された意図を明らかにしようとするもの。イベントでは、キュレーターの立命館大学国際言語文化研究所客員研究員の佐藤麻衣氏をゲストに迎え、バードカレッジで美術史を専門にするボブ・ウルフ教授と対談形式で内容を紹介した。
デジタル・ミュージアムでは、20人を超える日本人芸術家の約130点の作品を紹介している。主な作家は、国吉康雄(くによし・やすお)・保忠蔵(たもつ・ちゅうぞう)・石垣栄太郎(いしがき・えいたろう)・清水登之(しみず・とし)・古田土雅堂(こたと・がどう)・臼井文平(うすい・ぶんぺい)など、1910年代から40年代にかけてニューヨークで活躍した日本人アーティストたちで、彼らの作品について、映像での紹介も交えつつ、日本の伝統的な美意識と当時のモダンな感覚の融合に焦点を当てた講演と質疑応答が行われた。
1917年に結成された日系芸術協会の紹介、22年「画彫会」の展覧会、20年代の独立系展覧会、「紐育新報」、「日米週報」など当時の日系新聞の記事による報道の紹介や、大恐慌時代の日本人芸術家、戦前、戦後の作品などもデジタル展示している。
戦前、ニューヨークに渡った日本人画家たちの足跡を綴った『ニューヨークの日本人画家たち』(六花出版)の著者でもある佐藤氏は、講演の中で当時の日系画壇に対する評価が米国の新聞と在米日系新聞とでは大きく見方が異なる点を指摘した。
それによると、米国の新聞は、作家たちの画法について西洋の技術をうまく取り入れてマスターしているという比較的好意的に評価する記事だったのに対し、日系新聞は、アメリカのエキゾチックな趣味に迎合したセンチメンタルな西洋画法の模倣であると厳しい記事がみられた側面を紹介し、日米の報道ぶりを対比できる形で展示していると解説した。
佐藤さんは「実際に現在は絵がなくカタログでのみ見ることができる貴重な作品と、実際に現存する作品を同時にデジタル博物館で紹介できたことが特徴だ」と述べた。詳細はデジタル博物館で日本語と英語で見ることができる。
(写真)石垣栄太郎《失業音楽隊》(フェリーボート・トルバトール) (1928年) 東京都現代美術館所蔵
Eitaro Ishigaki, A Musical Band Out of Work (Ferry Bout Troubadour, Unemployment Band), 1928, Courtesy of Museum of Contemporary Art Tokyo
日本語サイト https://www.historyofjapaneseinny.org/jp/japanese-artists-during-the-prewar-period-in-new-york-city/