ピアニスト辻井伸行ソロリサイタル
カーネギーホールの観客魅了
ピアニスト辻井伸行のソロリサイタルが19日夜、カーネギーホールで開催された。先天的な視力障害を持つ辻井は幼い頃からピアノに親しみ、7歳で全日本盲学生音楽コンクール(現ヘレン・ケラー記念音楽コンクール)ピアノ部門第一位を受賞、12歳で初めてのソロリサイタル開催、交響楽団との共演など幼少期から活発に音楽活動を行う。2009年にヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝、活躍の場を世界に広げた。
カーネギーホール3回目の公演となった今回のリサイタルはチケット完売となり、ホールは日本人のみならず多くの米国人ファンで満場となった。
演目はベートーベンの「月光」で始まり、リスト「ベネツィアとナポリ」、ラヴェル「ハイドンの名によるメヌエット」など3曲、カプースチン「8つの演奏会用練習曲」の4プログラム。最後のカプースチンは1937年ウクライナ生まれの音楽家で、モスクワ音楽院で学んでいた時に出会ったジャズに大きな影響を受けた。ジャズ色濃いクラシックと言うより、ほぼジャズとも言える「8つの演奏会用練習曲」を辻井は持てるエネルギーを全て注ぐかのように力強く演奏し、聴衆を魅了した。
演奏終了後鳴り止まぬ拍手と歓声に応えて再登場した辻井はアンコール曲としてバッハ「主よ人の望みの喜びよ」、グリーグ「小人の行進」、リスト「ラ・カンパネラ」の3曲を演奏、聴衆の中には感激のあまり涙する人もいた。総立ちの聴衆の永遠に続くかと思われた賞賛の拍手と歓声に満面の笑顔で応える辻井は最後にピアノの蓋をぱたっと閉めて「これでおしまい」。
辻井は今後シアトルとフロリダ州サラソータで演奏、5月にカナダのトロント、6月にロンドン、香港で公演予定。https://avex.jp/tsujii/ (東海砂智子)
Photo: Steve J. Sherman