編集後記 2023 11_18

編集後記

 みなさん、こんにちは。エリック・アダムスNY市長とアシュウィン・バーサン同市保健精神衛生局長が今月1日、ニューヨーク全市民の寿命を延ばすことを目的とする新たな健康計画を発表しました。「ヘルシーNYC」と名付けられたこの計画では、糖尿病を含む慢性病や栄養関連の疾患、早期発見可能な癌、薬物の過剰摂取、自殺、産婦死亡、暴力、新型コロナウイルス感染を含む早死の原因に取り組み、2030年までにニューヨーカーの平均寿命を83歳まで引き延ばすことを目的としています。2019−20年の同市の平均寿命は、新型コロナウイルス感染の影響で、過去5年で初めて78歳まで低下していました。新目標を達成するためのいくつかの施策の中に、いかにもアメリカ的だなあ、日本にはないなあという項目がありました。例えば、薬物過剰摂取に対しては、ナロキソンや承認されたハームリダクション、治療のアクセスを増やし、リハビリ施設を増設する。人種コミュニティやLGBTQA+の若者に早期に介入し、精神的なヘルスケアや社会支援を拡大、SNSの若者のメンタルヘルスや自殺に対する影響と問題に対処するというものです。若者が薬物過剰摂取で死亡するケースが米国ではことさら深刻で、とりわけニューヨーク市では若者の死亡原因のトップクラスになっています。若くして死亡する人が多ければ、当然、平均寿命は短くなります。NYではたばこを吸う人はめっきり少なくなりましたが、電子たばこや大麻の使用が大手をふるっています。喫煙人口の多い日本では、肺がんで亡くなる人が多いですが、長年たばこを吸って健康を害するのは大体大人になってからです。一方、鎮痛剤など薬物大量摂取で米国で亡くなっている人の多くは十代の若者です。若者が死ななければ平均寿命は伸びるという算段です。ですので、薬物で死亡する若者さえいなければ、本当は、ニューヨークやアメリカの平均寿命はきっともっと長いのかもしれませんね。私は40歳の時にたばこをやめました。長生きするかどうかは分かりませんが、NYの目標平均寿命年齢まであと20年もないことを考えると、人生は案外短いものかもしれません。「何もしないでいるには人生は長過ぎ、何かを成し遂げるには人生は余りにも短すぎる」と誰か偉い人が言ったのを覚えていますが、何もしないのに人生が短く感じるのはいったいどうしたものでしょう。それでは皆さんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)