編集後記
日本クラブで3月27日、ニューヨーク日本人歴史博物館(デジタル・ミュージアム)の新しいデジタル展示「Japanese Artists in New York City: Artistic Traces from the 1910s to 1940s」のプレビュー・イベントが開催され50人が参加しました。この展覧会は、1910年代から1940年代にニューヨークの日本人芸術家の活動を、アメリカと日本の20以上の美術館やアーカイブ所蔵の作品画像とともに美術展覧会の図録、英字新聞と日本語新聞の美術欄をもとに紹介したものです。また、これまで歴史に埋もれてきた無名の芸術家にも着目し、彼らが創作活動をした時代と作品が生み出された意図を明らかにしようとするもので、イベントでは、キュレーターの立命館大学国際言語文化研究所客員研究員の佐藤麻衣氏をゲストに迎え、バードカレッジで美術史を専門にするボブ・ウルフ教授と対談形式で内容を紹介しました(今週号1面で記事)。今回の新企画で、デジタル・ミュージアムでは、20人を超える日本人芸術家の約130点の作品を紹介しています。主な作家は、国吉康雄(くによし・やすお)・保忠蔵(たもつ・ちゅうぞう)・石垣栄太郎(いしがき・えいたろう)・清水登之(しみず・とし)・古田土雅堂(こたと・がどう)・臼井文平(うすい・ぶんぺい)などで、彼らの作品について、映像での紹介も交えつつ、日本の伝統的な美意識と当時のモダンな感覚の融合に焦点を当てています。戦後を経て60年代以降現代まで続いたオノ・ヨーコや草間彌生、河原温、篠原有司男、千住博などニューヨークでアートを開花させた多くの作家たちの先達とも言える戦前の日本人アーティストたちの息吹を感じさせる展示です。アートをデジタルで見るというのは、迫力はリアルには当然及びませんが、学術的に理解を深めるという意味ではかなり有用なメソッドです。当時の「紐育新報」、「日米週報」など日系新聞の記事による美術報道の紹介も載っています。あと半世紀くらいしたら(私はもう生きてはいないでしょうけど)、その未来の人たちに、21世紀の初頭にNYで活躍した日本人アーティストたちの様子を「週刊NY生活」という日系新聞の記事で知ってもらえたら嬉しいですね。
ニューヨーク日本人歴史博物館 日本人作家の活動と展示(1910年~1940年代)のサイトは
https://www.historyofjapaneseinny.org/jp/japanese-artists-during-the-prewar-period-in-new-york-city/