長倉 顕太・著
すばる舎・刊
新しい時代が来るという。5年後、10年後にいまの仕事はあるだろうか。20年前はインターネットがやっと普及していたような時代。その前はファクシミリ、その前はテレックスというもはや担当者が受け送りする通信機器を介しての情報伝達。
現在から過去はつぶさに見ることができるが、現在から未来は正確には描けない。想像はできる。働き方が変わってくるらしい。確かに、終身雇用制度が崩れて、いまや日本の就労者の4割近くが非正規社員だともきく。働き方が変わってきても不思議はない。
この本、GIG WORK(ギグワーク)とは、ジャズの飛び入り演奏、その場限りの一発勝負的な演奏のような働き方を指すらしい。組織に殺されずに死ぬまで「時間」も「お金」も自由になる「ずるい働き方」があるという。仕事、人間関係、SNS、副業、転職、アウトプットにインプット、やりがいも充実感も収入もアップする「ギグエコノミー時代」を生き抜く新しい生き方、仕事術を解説しているのが本書。
意思が弱く、やりたいことがなかった28歳フリーターが1000万部のベストセラー編集者×年収1億円プレーヤーになれた「スゴイ人生戦略」と本の帯にある。同書では「編集者たれ」と説く。それも組織に属した宮仕え的な働き方ではなく、プロジエクトベースでの働き方を奨励する。そして筆者は言う。「オリジナルのコンテンツを持て」と。つまり、どこかの誰かさんが著作権を持っているものにお金を払って編集して何かを作ったとしても、それが読まれ、感動を与えたとしても、自分の所以外でもそれは露出している。どこかの誰かさんに向けて書かれた記事や写真を、お金を払って使わせていただく。それら買い集めた情報で、もし万が一、大きなヒットがあったとしても、おそらくは、自分のところで弾けるまえに、コンテンツの根元を持っている物がしっかりとその利を得ているはず。となれば、他人の集めた記事や情報をそのままはりつけていても、「どうしても必要な存在」には永遠になりえない。たとえ5行の短い記事でも、それがまだ世の中に出ていない情報で、誰も知らない出来事であれば、読まれるし、価値ある情報となる。働きかたもそうだと同書はいう。取り替えの効く仕事ではなく、「あんたに頼まないとできない」というなにかを持つこと。それがあれば、時代が変わっても仕事はなくならない。いずれAIが、今迄人間がやってきた分析や計算、路線管理などはどんどんAI化されていく。料理でも音楽、絵画、スポーツなど他者にできない物を持ち磨くこと。それさえブレなければどんな時代が来ようともかなり自由な生き方ができるのではないかと、言い方は違うが、キモはそこなのだろうなと気付かせてくれる一冊だ。(三)