吉田実代に祝勝会

米女子プロボクシング

応援ありがとう

勝利の直後リングで抱き合う吉田母娘(本紙撮影)

 プロボクシングの元WBO女子世界スーパーフライ級王者の吉田実代(35)が4月27日、タイムズスクエアのソニーホールでインデア・スミス(26)に判定勝ちし、米国初戦を飾った(本紙5月6日号既報)。その祝勝会が16日、マンハッタン・ミッドタウンにある「変なホテル」内日本食レストラン五助で開かれた。

(写真上)日本人ファンに祝福される吉田さん(手前)

 ブルックリンにある名門ジム「デビラ・エンターテイメント」と昨年契約を結んだが、渡米ビザの遅れで試合4日前に来米して2日間で体重を落とし、3日目に計量、4日目に試合という超過密スケジュールでの勝利だった。

 「私の勝ちたい気持ちと周りの勝たせたい気持ちがうまくシンクロして気迫で勝ちにいけたと思う。もちろん再び世界を狙う。マジソン・スクエア・ガーデンで頂点を目指します。皆さんこれからもどうぞ応援をお願いします」と挨拶した。

ジャパンパレードに課題

補習校の児童生徒ら見られず

 沿道を埋める5万のニューヨーク市民。歓声と拍手がセントラルパークウエストに響く。13日に開催されたジャパンパレードにエリック・アダムスニューヨーク市長が日の丸の小旗を振って行進する。ゲストパフォーマー、NARUTOナルトたちがメインスタンドに到着し、レッドカーペットに降り立って、アクションバトルを披露する。コスプレのアニメファンたちが大喜びしている。

(写真上)日の丸を振って行進するアダムスNY市長

アクションを披露したNARUTOナルト

 だが、そこに日本人の小中学生たちの姿はない。パレード当日は土曜日。補習授業校に通っている日本人、日系人の子供たちは、授業があるため、見たくても見れなかったのだ。

 会場にいた日本人女性は「できれば、日曜日に開催してもらいたいです。昨年は土曜日の授業を早退させましたが、今年は諦めました。郊外からおいでになる人は学校を休ませるしかないですね。夫が迎えに行ってますが、子供にナルトを見せてあげたかったです」(山田美智子さん、仮名、主婦)と残念そうに話した。

 保護者の武田秀俊さん(会社経営)は、次のように語る、「補習校の子供たちとその親たちは、日本人コミュニティにおいてある一定の規模を占めている。日本ではできない経験をする、 海外における日本の位置づけを知る、つまり日本を相対的にみる力をつける、現地校において日本を考える機会を提供するといった教育的観点からも、今後の国際交流を担う子供たちに早くから、そのような体験を、これほどの規模で経験する機会は非常に貴重だと思っている。ジャパンデーはもともと日曜開催だったのが土曜に変更された理由があるのだと思うが、来年以降に関しては、できれば補習校の子供たちも参加できる形にしてもらえれば、よりよいイベントになるのではないか」と話す。

 パレードを主催するジャパンデーインクの吉井久美子事務局長は「事務局のスタッフにも補習校に子供を通わせているママさんもいて、日曜日開催も断然候補に入れるべきと考えます。パレードは、そもそもNYPDからの許可が出ないと実施できません。で、許可が出たのが5月13日だったのです。土曜日開催か、実施しないかという二択。「テイク・イット・オア・リーブ」で泣く泣く事務局としては「許可が出た日での実施」ということで、取締役会での承認が得られたのです。この件は、種々ある課題の一つだと思っています。色々な方の生の声をシェアして頂きありがとうございます。今後の参考にさせていただきます」と話している。

 ニューヨーク補習授業校には約600人、ニュージャージー補習授業校には約400人、NY育英学園のサタデースクールに約500人、リセ・ケネディ日本人学校の土曜課程に約150人の児童生徒が在籍している。このほかにも土曜日に授業をしている日系の学校は多い。

すぐ体感!30分で体が楽になるすぐ体感!

JAA春のヘルスフェア

ストレッチ方法、原田大輔さん指導

 NY日系ライオンズクラブ企画、第15回JAA春のヘルスフェア「ライオンズ大学・大人の教養シリーズ第6弾」の講演「すぐ体感!30分で、からだが楽になるストレッチ!」が現在オンラインで無料受講できる。

 福岡県でフィットネス・パーソナルトレーナーをしている原田大輔さんがストレッチ方法を紹介した。手を頭に乗せて、目を閉じる。やさしく頭をマッサージする。頭をほぐすメリットは(1)頭痛改善(2)首・肩こり改善(3)よく眠れる(4)不安や緊張の緩和などの効果が得られること。やさしく、擦るだけで楽になる。次に耳を引っ張り回す。耳をほぐすメリットは(1)首、肩こり緩和(2)眼精疲労の改善(3)精神的リラックスなど。次に、右手を腰に回し、右肩を下げる運動。そして手の平で胸の皮膚を下げる。空を見て、顎をあげる。次は、頭を右に倒して、左斜め空をみるようにする。逆に頭を左に倒し、右斜め空をみる。続けて、両肩をすくめ、今度は後ろに手を回してリラックス。次は足の運動。足先を内外、ワイパー運動。股関節痛の人は、毎日50回やってみる。足首を回す。反対回しも。脚を閉じて、膝をバタバタさせる。足先を遠くへ伸ばす。この時、踵を押し出すようにするのがコツ。次は膝を左右に揺らす運動。ふくらはぎの肉をぶるぶる揺らす。次は足の指先と手の指をグーパーで逆、左右、斜め対象にする運動。これは脳トレにも役立つのでしっかり手足を見ながらすること。次は膝をパタパタする運動。膝の高さ違いを改善する運動で、左膝が上がっている人は、右に傾いて、左膝を押す、逆に右膝が上がっている人は左に傾いて、右膝を押す。このほか、手を前に背中を後ろに丸めて体をほぐす運動などを実演紹介。最後に目を閉じて眼球を左右に5回ずつ回す。視力が回復した感覚がある。

 これらの運動をすることで首も動かしやすくなる。「ぜひ、お時間のある時にやってみてください」と指導した。原田さんは、筋トレ、ダイエット、健康をテーマにYouTubeで「大ちゃんの筋トレ・ダイエットプロ情報」の動画配信もしている。詳細はhttps://mbp-japan.com/fukuoka/d-fit/

熊本編 市内で日本を満喫する

故郷自慢がおすすめする5つのポイント紹介

日本のいいとこ再発見

 アメリカで生活していると、日本との生活の違いを良くも悪くも感じ、ふとした場面で日本での生活に懐かしさを感じることがあると思う。日本への一時帰国の旅は、地元への帰郷を通じて、日本の良さを、ひいてはアメリカの良さをも再確認する機会であるとともに、まだ見ぬ日本の地を訪れ、新たな日本の良さを再発見する機会でもある。

 そこでみなさまの一時帰国の際の「日本のいいとこ再発見」の訪問先として、私の故郷である熊本を紹介したい。熊本のいいとこ全てを伝えたいところではあるが、今回は1、2泊でも満喫できるよう、熊本市内で楽しめる5つのポイントに絞ってお伝えする。

その1 熊本城 〜震災からの復興のシンボル〜

 熊本に来たら、まずは日本三代名城の1つに数えられる「熊本城」に立ち寄っていただきたい。平成28年(2016年)熊本地震により甚大な被害を受けた熊本城、令和3年(2021年)にようやく天守閣の復旧が完了したものの、元の姿に戻るまでには数十年かかると言われている。そこで、熊本城では震災による被害状況、そしてその復旧していく姿を復興のシンボルとして多くの人に見てもらえるよう「特別公開」を行っている。震災から立ち直っていく熊本城の力強さを感じとっていただきたい。なお、熊本城復興のための寄付金制度である「復興城主」に申し込めば、観光施設や協賛店で特典を受けることができる優待証「城主手形」を受け取ることができる。

(写真上)[特別公開(特別見学通路)から眺める夜の熊本城]【写真提供:熊本城総合事務所】

その2 熊本の食 〜馬刺し・からしレンコン・熊本ラーメン・酒 etc〜

[からしレンコン]
【写真提供:熊本市観光ガイド】

 旅行の楽しみの1つは「その地域の郷土料理を味わうこと」。熊本はそのような旅行者の期待に応えるたくさんの郷土料理を持っている。アメリカでは口にすることができないものも多い。

 その1つが「馬刺し」である。熊本城を築城した加藤清正が食し始めたのが「馬肉文化」の始まりと言われている。新鮮な霜降り馬刺しは肉質も柔らかく、口の中で甘くとろける脂身とあわせて最高の味わいである。サシの入った新鮮な馬刺しは他の地域ではなかなかお目にかかることができないため、熊本の日本酒又は焼酎と一緒に是非味わっていただきたい。

 ビール党の方には「からしレンコン」、特に揚げたてがおススメである。レンコンの穴に辛子味噌を詰め、卵黄を混ぜた小麦粉の衣をつけ、油で揚げたものであり、シャキシャキとした触感にツンと鼻に抜ける辛みが特徴である。かつての城下町としての街並みが感じられる中央区新町にある「村上からし蓮根」ではからしレンコンづくり体験ができ、かつ、揚げたてが味わえる。

その3 植木温泉 〜トロトロな肌触りのお湯は別名「美人の湯」〜

[植木温泉]【写真提供:熊本市観光ガイド】

 日本に一時帰国したら何はなくとも「温泉!」という方もいるのではないか。「植木温泉」はそのような方にぜひおすすめしたい。熊本市の中心地から車で1時間弱、川沿いののどかな温泉街である植木温泉の特徴はpH8.0前後のアルカリ性の泉質。お湯の肌触りはトロっとしてまるで美容液に浸かっているよう。古い角質を柔らかくして代謝を促進するピーリング効果があり、湯上りの肌はつるつるになることから「美人の湯」として知られている。のどかな田園風景の中でカラダもココロもリフレッシュしていただきたい。

その4 旬の果物 〜スイカ・メロンは格別!〜

 海外の方が日本に来て感動するものの1つに「日本の果物」が挙げられる。アメリカで生活されている方なら、現地のスイカやメロンは「日本のものとは別物」と感じられる方も多いだろう。熊本のスイカとメロンは海外の方だけでなく、日本人でも感動するほどの品質である。

 植木温泉の近くにある道の駅 兼 直売所「すいかの里 植木」で是非熊本のスイカとメロンをご賞味いただきたい。特にメロンの「肥後グリーン」がおススメである。

その5 ポップカルチャー 〜くまモン・ワンピース〜

 子ども連れでも楽しめるのが熊本のいいところ。漫画「ONE PIECE」を書いた熊本出身の漫画家・尾田栄一郎氏が、熊本地震の際に多大な支援を届けてくれたことからスタートした「ONE PIECE 熊本復興プロジェクト」。その象徴として、県内各地に麦わらの一味の銅像が設置された。主人公であるルフィ像は熊本県庁に設置されている。熊本での思い出の1枚をルフィとその仲間たちと一緒に撮ろう。

 また、世界的に有名なゆるキャラ「くまモン」は、ほぼ毎週県内のイベントに出演しており、旅行中でも会える可能性大。スケジュールをチェックして是非会いに行こう。

(安浪真、熊本市職員)

協力・自治体国際化協会NY事務所(CLAIR)

●ご帰国観光のご案内コーナー

 ■熊本城・特別公開・復興城主の情報:https://castle.kumamoto-guide.jp/

 ■熊本の郷土料理の情報:https://kumamoto-guide.jp/foods/

 ■からしレンコンづくり体験の情報:https://murakami-karashirenkon.jp/trial

 ■植木温泉の情報:http://ueki-onsenkumiai.com/

 ■道の駅「すいかの里 植木」の情報:https://suikanosato-ueki.com/

 ■「ONE PIECE 復興プロジェクト」の情報:https://op-kumamoto.com/

 ■くまモン出動スケジュールの情報:https://kumamon-official.jp/

編集後記 2023年 5月13日号

【編集後記】 みなさん、こんにちは。今週末の土曜日、5月13日午後1時、セントラルパークウエストの81丁目からジャパンパレードが67丁目まで行われます。日本からのスペシャルゲストとして、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト」を迎えるほか、御神輿や和太鼓、民謡盆踊りなど日本をテーマにした98団体が華やかにパレードを繰り広げます。グランドマーシャルはフィギュアスケート冬季五輪米金メダリストのクリスティ・ヤマグチさん。パレード先頭に行進するNY市警騎馬警官のすぐ後のオープンカーから手を振ります。最初の見ものは、大型国旗の行進です。NY市役所、消防署、日系退役軍人協会、NY総領事の森大使のオープンカーと続きます。スタンド前にパレード開始から30分後には紐育太鼓愛好会の和太鼓、寒川神社、NY長崎県人会、NY広島会と愛知県人会のお神輿が到着します。ジャパン・パフォーミングアーツの踊り、鼓舞、NY茨城県人会神輿、パレード中盤には慶應義塾NY学院のバトントアラーたち、そしてスペシャルゲストの公式フロート「ライブスペクタクル NARUTO」は前から56番目に登場します。午後2時から2時半にメインスタンドに到着し、演技を披露する予定です。行進は僧太鼓、殺陣波涛流NY、再び日米の大型国旗と続き、民舞座・花笠会が86番目に華やかな衣装で登場。NY日本人美術家協会に続いて誠道塾の空手は92番目に。最後はNYでボランティアで終わる予定です。ここには書ききれないほどに団体や全日空や東京海上などスポンサー企業のフロートも登場します。開会式は午後0時30分から70丁目と71丁目の特設スタンドで開催されます。また同日午前10時から隣接の西72丁目でジャパンストリートフェアが開催され、文化紹介やジャパンフェス参加のフードなど約30余りのテントが並びます。以前、ジョン・レノン、オノ・ヨーコさんが住んでいたダコタハウス前には日章旗が並んでジャパンストリート祭りとなります。賑やかなジャパン一色のお祭りになりそうです。ぜひお出かけください。(この原稿は5月10日現在のものです)。それでは皆さんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2023年5月13日号)

(1)ジャパンデー13日に セントラルパークウエストで1PM

(2)日系写真家、井高雄一 戦前戦後を米国で生きる

(3)ミカ・ストルスツマン カーネギーでソロ公演

(4)イブラ音楽財団 カーネギーで邦人4人が演奏

(5)アジア系への暴力に泣き寝入りするな 冷泉彰彦

(6)検察局は殺人と断定 地下鉄ホームレス死亡事件

(7)日本はもっと世界に目を デヴィ・スカルノさん

(9)NYでボランティア 現地高校生に日本文化紹介

(10)小西翔さん仕事を語る NYエンタメの会

ジャパンパレード13日、 セントラルパークウエストで午後1時スタート

 5月13日(土)午後1時、セントラルパークウエストの81丁目からジャパンパレードが67丁目まで行われる。日本からのスペシャルゲストとして、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト」を迎えるほか、御神輿や和太鼓、民謡盆踊りなど日本をテーマにした90余りの団体が華やかにパレードを繰り広げる。グランドマーシャルはフィギュアスケート冬季五輪米金メダリストのクリスティ・ヤマグチさん。開会式は午後0時30分から70丁目と71丁目の特設スタンドで開催される。また同日午前10時から隣接の西72丁目でジャパンストリートフェアが開催され、文化紹介やジャパンフェス参加のフードなど約30余りのテントが並ぶ。

日系写真家、井高雄一のNY展

戦前戦後をアメリカで生きた男

 日系写真家、井高雄一の写真展「戦争の絆」がブルックリン・ダンボ地区のハイヤーピクチャーズ写真館で今月13日まで開催されている。井高は、1914年ワシントン州シアトルの日系移民の子として生まれた。幼少期を日本で過ごした後、1928年にシカゴに移住し、1930年代にシカゴ大学を卒業し、化学を専攻。42年から45年までシカゴのインスティテュート・オブ・デザインで学び、45年から47年まで同校で非常勤講師を務めながら、フリーランスの写真家として活動し、主に建築写真を専門に扱った。

井高の娘ナンシーさん

 彼の作品は、フロリダ・アーキテクチャー誌、アーキテクチュアル・ダイジェスト誌、ニューヨーク・タイムズ紙などの出版物で紹介されている。85年まで、シカゴで自身の写真業を営み、広告代理店、雑誌や新聞のアートエディター(シカゴ・トリビューンのフェミニン部門)、シカゴマガジン、建築ダイジェスト、インテリアデザイン誌などで活躍した。51年に近代美術館で開催された写真展に出品。78年、出版デザイナー協会功労賞を受賞。コダック・フィルムのコンサルタントも務めた。写真アーカイブは現在、バウハウス・シカゴ財団に所蔵されている。2012年1月22日ニューハンプシャー州リンジで97年の生涯を閉じている。娘のナンシー・イダカ・シェランさんは「 彼の抽象表現の写真を見たのは今回初めてでしたが、高い技術を持っていたことが分かります。1940年代の白黒フイルム写真から晩年はデジタルカメラも使う長い写真家としての人生でした。仕事場での姿は知りませんが、旅に行く時はいつもカメラを持っていました」と写真を見ていた。

Exhibition: War Bonds: Yuichi Idaka and László Moholy-Nagy, photographs from 1925 to 1946
Dates: March 15 – May13, 2023, Higher Picturess: 16 Main Street, Ground Floor, Brooklyn, NY 11201

ミカ・ストルツマンがソロ公演

カーネギーホールの聴衆魅了

村上春樹さん客席から拍手

 ボストン在住のマリンバ奏者、ミカ・ストルツマンが2日カーネギーホールでの11回目となるコンサートを行った。当日はバッハ作品のシャコンヌ、無伴奏チェロ組曲第3番、ポール・サイモン、ジョエル・ロス、チック・コリア、ジョン・ゾーンが書き下ろしたソロマリンバ作品、またムーンリバー、オーバーザレインボー、あんたがたどこさ、などのアレンジ作品7曲を演奏した。今回のカーネギーリサイタルは、初めてマリンバソロ曲だけによるリサイタルとなった。当日は、最後2曲は夫でクラリネット奏者のリチャード・ストルツマンと、アンコールをソロで1曲、デュオ1曲、全2曲演奏した。

 会場では作家の村上春樹さん夫妻も2階客席から鑑賞し、拍手を贈った。村上さんは今回発売となったミカの新アルバム「マリンバ・ソウル」の帯を書いている。そこには「マリンバは日頃あまり耳にする機会のない楽器だけど、その響きは深く、柔らかく、いったん気にいると病みつきになってしまいます。まるで森の奥に腰を下ろし、どこからか聞こえてくる生き物たちの声の集積にそっと耳を澄ませているような、そんなとくべつな気持ちになれるかもしれません。聴いてみてください」と書いてある。

 ミカは2000年トロント大学上級演奏学科修了後、2001年東京とカーネギーホールでリサイタルを開催して本格的に演奏家としてデビューした。2008年熊本県天草市からニューヨークに移住し、NYを拠点に演奏活動を展開。過去10回に渡るカーネギーホールでのリサイタル開催を始め、現在までに世界22か国66都市で公演を行っている。

 ミカさんは「今回のリサイタルは、マリンバのソロに特化したリサイタルで、お客様に喜んで頂けるか不安でしたが、自分の持ち前であるジャンルを超えた音楽の世界が表現出来るプログラムで、無事カーネギー公演を終える事が出来て安堵しています。ご来場頂きました沢山のNY在住の日本人の方々に心から感謝申し上げます。有難うございました」とコメントした。

イブラ音楽財団カーネギーホールで公演

デヴィ・スカルノさんが名誉会長

 イブラ音楽財団主催の2023年度ニューヨークアワード音楽会が9日夜、カーネギーホールで開催された。同財団は1990年にデヴィ・スカルノ氏を名誉会長に、イタリア人ピアニストのサルバトーレ・モルティサンティ氏によって、ニューヨーク市で創設された。同財団は、年齢 ・音楽大学卒業や有名教援の推薦状などを問わず、また経済的な理由などで機会を得られない才能溢れるアーティストを発掘・育成・アシストすることを目的に作られた。毎年6月末から7月初頭にかけて、シチリア島のローマ帝国時代の古都イブラに於いて、200人程のコンテスタントが世界中から集まり、2週間に渡ってコンクールを開催する。「イブラ・グランド・プライズ」を与えられた優勝者と入選者には、カーネギーホール、リンカーン・センター、国連のダグラス・ハマーショードル・ホール、NYのカサ・イタリア大学などでのコンサートの機会と、奨学金に相応する応援をしている。

 今回日本から招待されて舞台に立ったのは、ギタリストの岩松知宏さん(34)、バスーン奏者の宮崎航大さん(23)、バスの杉尾真吾さん(32)、チェロ奏者の渡邉伶音さん(14)の4人。デヴィ夫人とニューヨークでの古くからの友人で、ラジオパーソナリティーとして活躍する青木恵子さんも会場とレセプションに駆けつけ、旧交を温めながら共に音楽会を盛り上げた。参加者たちはニューヨークのカーネギーホールでニューヨーカーそのものともいえる社交界や音楽関係者らの前で思い切り歌や演奏を披露できたことに大満足の笑顔を見せていた。

(写真)カーネギーホールのコンサート後、五番街のユニバーシティークラブで開かれたディナーで青木恵子さん、出演者らと歓談するデヴィ夫人(中央)

「アジア系への暴力には泣き寝入りするな」

 アメリカ社会はコロナ禍からほぼ脱したと言える一方で、アジア系へのヘイト暴力は依然として発生が続いている。5月上旬には、日本国ニューヨーク総領事館から地下鉄における安全対策の「注意喚起」がされたが、3月から4月までの短い期間にも日本人が被害に遭うケースだけでも数回起きている。何ともイヤなニュースであり、このまま泣き寝入りするわけには行かない。

 4つの対策を緊急に提言したい。

 1つは、何としても検挙率を上げるということだ。暴力を受けた被害者が実行犯を追跡したり、特徴を記憶して捜査当局に適切に情報提供を行うというのには限界がある。何としても、周囲の目撃者に「見て見ぬふり」をさせないことが大切だ。

 そのため、現状について、アジア系だけでなく、ニューヨークの社会一般に改めて広く情報を共有し、意識を高める活動が必要だ。こんな恥ずかしい状況では、国際観光都市復活などというのは夢のまた夢だということを知らせて、全てのニューヨーカーに危機感をもってもらわねば困る。

 2つ目は、これはあくまで仮説だが、マスク、それも白いマスクを着用することが衝動的な犯行を刺激していないか、についての検証が必要だ。マスクは「病者と悪漢の象徴」という誤った認識が「アジア発のウィルスが自分たちの生活を破壊した」という一方的な思い込みと重なって衝動犯行の原因になっているという仮説は成り立つ。仮に、相当程度の危険因子であるならば、そのことは共有すべきだし、仮に相関関係が「ない」のであれば、それだけ人種差別的な衝動が強いということになる。相関関係があったとしても、マスクを外せというのではなく、全市で「マスク着用の自由と権利」を確認するように持ってゆくべきだ。重要な点なので再調査を強く望みたい。

 3点目は、改めてアジア系の結束を見せる必要だ。何よりも、東アジア各国の連携は重要だ。日本、中国、韓国に加えて台湾代表にも加わってもらい、事件の正確な実数を集計することは可能だろう。その上で、当局やメディアに強く広報活動を要請するのだ。

 また、直接の被害者だけでなく、営業を脅かされた飲食店や商店などがあれば、結束して民事訴訟を起こすなど、法的な戦術に訴えることも必要と思われる。仮に、当局の対応に無作為を含む落ち度があれば、しっかり告発して権利を主張してゆくべきだ。更に言えば、アジア系として地下鉄を恐れ、避けるだけでは弱みを見せることになる。NYPDとMTAに厳戒態勢を敷いてもらう代わりに「アジア系による地下鉄一斉乗車運動」の日などを設けて、人種コミュニティの存在感を示威することも必要ではないか。

 4点目は、幅広い啓蒙活動だ。多くの事件が衝動的であることから、加害者像としては、「どちらかと言えば有色人種の貧困層」「ニュース情報にはリーチしない層」「少ない情報から思い込みをしてしまう層」「麻薬使用や精神疾患などで判断力の低下している層」といった像が浮かんで来る。だからと言って、自衛するしかないというのでは消極的だ。この種の潜在加害者層にも訴えるための方策もあり得ると思う。

 まず考えられるのはコロナ禍の初期に「武漢ウイルス」とか「中国ウィルス」などという無責任で差別的な言動を繰り返したドナルド・トランプ氏本人に登場願うことだ。何よりも「本人」の口から、「アジア系へのヘイトは誤り」だというメッセージを強く出してもらう必要がある。故安倍晋三氏には多くの借りのある同氏のことである。そのぐらいは当然だろう。

 トランプ氏だけでなく、アフリカ系やヒスパニック系、あるいは保守系白人の歌手、芸人、俳優、スポーツ選手などのビッグネームにも登場願いたい。彼らが、アジア系の著名人と抱き合い、肩を組む姿を見せ、そこにアフリカ系のアダムス市長、白人のホークル知事、保守系のパタキ元知事やジュリアーニ元市長なども一緒になって、アジア系ヘイトを撲滅するキャンペーンをやってもらいたい。その際には、マスクに関する「着用の自由と権利」ということの発信もお願いしたい。過去50年にニューヨークという街に対して東アジア諸国が行った経済貢献を考えれば、当然過ぎるぐらい当然のことではないかと思う。

 とにかく、現状に屈することも、また黙ってスルーすることも適切ではない。この恥ずかしい状態を改善することはニューヨークに関わる全ての人の義務であると考える。

(れいぜい・あきひこ/作家・プリンストン在住)

検察局は殺人と断定

地下鉄ホームレス死亡事件

実行者逮捕されず

 ニューヨーク市の検死局は5月3日、地下鉄の車両内で元海兵隊の男性に取り押さえられ死亡したジョーダン・ニーリーさん(30)の死因は首への圧迫によるもので殺人だと発表した。殺人と裁定されたが故意や過失があったことを意味するわけではなく、マンハッタン地方検事局は調査中としている。8日時点で元海兵隊の男性は逮捕されていない。

 事件は5月1日午後2時30分頃、ブロードウェー・ラフィエット駅に向かう地下鉄F線北行きの車両内で起きた。目撃者やソーシャルメディアに投稿されたビデオなどによると、ニーリーさんは「食べ物も飲み物もない、刑務所で終身刑を受けることを気にしない」「死ぬ準備ができている」と叫んでいた。乗り合わせた乗客の多くは駅に着くと一斉に逃げ出したが、うち男性数人がニーリーさんの取り押さえにかかった。この時、元海兵隊員のダニエル・ペニーさん(24)がニーリーさんの首を絞め、別の男性が腕を押さえた。警察が駆けつけ、ニーリーさんはレノックス病院に搬送されたが、死亡が確認された。ペニーさんは警察に事情聴取されたが逮捕されず、帰宅した。

 ブロードウェー・ラフィエット駅では3日、ニーリーさんの追悼集会が行われた。黒人のニーリーさんは地下鉄でマイケル・ジャクソンの物真似をする大道芸人で、ソーシャルメディアでも人気のダンサーだったという。一方でニーリーさんは過去、少額の窃盗や改札を飛び越える行為や女性への暴力などで40回以上の逮捕歴があり、ホームレスになっていた。精神疾患を患っており、父親の話によれば幼い頃に母親を殺されたことがずっと精神的トラウマになっていたという。

 エリック・アダムスNY市長は3日、「人命が失われたのは悲劇だ。ただ何が起きたのか分からないことがたくさんあるため、ここではコメントを控える」としつつ、「深刻なメンタルヘルスの問題が発生している、必要としている人にケアを受けられるようにしたい」との声明を発表した。

 市のブラッド・ランダー会計監査官は「精神障害者が自警団員によって首を絞められて死に至るような都市になってはならない。もしくは殺人者が正当化され、応援されるような場所には」とツイッターにツイートした。これに対しアダムス市長は「捜査が進行中であり、無責任だ」と批判した。

 ダニエル・ペニーさんの弁護士は、「ダニエルはニーリー氏に危害を加えるつもりはなく、彼の早すぎる死を予見することもできなかった」と述べている。

(写真) 事件があったブロードウエー・ラフィエット地下鉄駅(写真・中村恵理)