我らがヒーロー、インディ健在

Indiana Jones and the Dial of Destiny

 ハリソン・フォード扮する考古学者インディアナ・ジョーンズの冒険を描くシリーズ第5弾で最終章でもある。前作「The Kingdom of the Crystal Skull」から実に15年ぶりとあってファンならずとも待ちに待った作品だ。今年81歳のフォードが「まだまだ若いもんには負けない」的ではなく「歳相応に頑張っている」のアクションで悪戦苦闘するのが実にいい。マッツ・ミケルセン、フィービー・ウォーラー=ブリッジらが共演。監督は「Ford v.  Ferrari」のジェームス・マンゴールド。

 インディはこのところめっきり元気がない。ニューヨークの大学ではあくび交じりの学生相手に教鞭をとり、毎日スローモーションで時は過ぎていく。しかもそれさえも生活から消え去ろうとしている。来週には「長い間お疲れ様」で退職するのだ。追い打ちをかけるように息子のマットはベトナム戦争で戦死し、妻のマリオン(カレン・アレン)からは離婚を宣言されている。これ以上落ち込めないほど意気消沈の状態。スリルとスピードあふれる冒険の数々に挑戦したあの日々は遠い彼方に消え去ってしまったのか。

 そんな時に亡き盟友でオックスフォード大教授ショーの娘ヘレナがタイムマシンにもつながる秘宝「アンティキティラのダイヤル」についてインディに話を聞きに来る。「ダイヤル」は25年前の1944年、インディとショーが偶然にもナチスから手に入れたもので、今は考古遺物として保管されている。自分はヘレナの名付け親でもあり、是非これを見せてあげたい。

 しかし四半世紀ぶりにインディがこの秘宝と対面したことで突如インディの生活は一変する。そう、あのドキドキ、ハラハラの新たな冒険に向かってインディが走り始めるのだ。

 どんな冒険かは見てのお楽しみだが、アクション映画でお馴染みのカーチェイスに代わってタイなどでタクシーに使われている三輪自動車トゥクトゥクのアクロバットチェイスはインディのユーモアとのベストマッチだ。体の衰えを年輪と経験という英知でカバーし進化し続けるインディは今も健在、頼もしい限りだ。2時間34分。PG-13。(明)

(写真)インディ(フォード)はヘレナ(ウォーラー=ブリッジ)とともにアンティキティラのダイヤルの行方を追う Photo : Walt Disney Pictures


■上映館■

Regal E-Walk 4DX & RPX

247 W. 42nd St.

AMC Empire 25

234 West 42nd St.

AMC Loews 34th Street 14

312 W. 34th St.


AI との会話

編集後記

 みなさん、こんにちは。今年に入って世界中が震撼したのがチャットGPTの人類への脅威です。NYタイムズ紙が2月に掲載したAIの書いたラブレターがいかに相手の心を打つか大反響を呼んだのですね。今週号の書評で掲載した『チャットGPTvs. 人類』には、会社の企画書も人事評価もすべてAIによってなされ、ホワイトカラーのやっている職種はどんどんと、なくなって最後には消滅してしまうのではないか、その「凄さ」と「怖さ」が書かれています。本の内容はさておき、米国の市民生活にすでに入りこんでいるAIの卑近な例を今回書評で紹介しました。前にもひょっとしてこの欄で書いたかもしれませんが切り口を変えて。実は、私はニューヨークタイムズ紙を郊外の自宅で定期購読してかれこれ15年くらいになるのですが、昨年あたりから、早朝に配達されるはずの新聞が、来たり、来なかったり、いいかげんな配達状況になり始めたのです。日本の新聞配達の事情から考えたら、これは絶対あってはならない信じられないことなのですが、配達されるのが週に2回くらいになってしまい、しかも曜日も時間もバラバラになってきました。日本なら、販売店に苦情電話を入れて、責任者が電話の前で頭を深々と下げて、新聞を抱えて飛んで来て、それ以降は絶対にこんなことは起こらないというのが常識です。でも、アメリカは違うのですよ。新聞の遅配、不配に対する対応は2択しかなくて、翌月のインボイスから代金を1部分差し引くリファンド(払い戻し)か翌日に配達するかのどちらかです。状況に応じて、リファンドや、翌日配達を繰り返した挙句、なぜ、こんな信じられないバカげたことが毎日起こるのか、オンラインの説明を細かくみていくと、リファンドと翌日配達以外に「チャットで(ボブ)と会話する」というボタンが見つかりました。もっと早く気がつけばよかったと、このいい加減な配達が起こっている理由を問いただしたい一念でボタンをクリックすると、すぐ先方のボブからテキストが返ってきました。「はい、こんにちは、私はボブです。いつもご愛読ありがとうございます。今日はどんな御用件でしょうか」と短い挨拶。
 「新聞が来たり、来なかったり、いいかげんなのはなんで?」と怒りをグッと抑えたこちらのメールにもすぐ、しかし今度はレターサイズ一枚ほどの文字量のタイプでびっしり書かれたお詫びのテキストが瞬時に返ってきて、末尾には、「二度とこのようなことが起こらないように販売店に厳しく指導します」とあり、これでもう大丈夫かととりあえず納得したのも束の間、翌日以降も改善されませんでした。そしてまたカスタマーセンターで今度はもっと厳しく苦情を伝えようとすると「はい、こんにちは、マーガレットです。今日はどんな御用件でしょう。伺わせてください」とテキストがくる。翌日はチャーリーと、その翌日はフランクとチャットして苦情を言ったが、フレンドリーなボブも、マーガレットもチャーリーもフランクもみんなAIのロボットだと気がつくまでに1週間もかかってしまいました。AIロボット相手に苦情を言い続けていると、「メールで連絡しますか」という答えが唐突に現れました。メールの向こうには人の気配がしたのでこう書きました。「私はNYタイムズを15年以上愛読している日本人のジャーナリストだけど、こんなに嫌な思いを毎日させられているのは、今流行りのアジアンヘイトですか? 」と。すると2分もしないで短いメールが返ってきて「あなたの配達の苦情の履歴を見ました。すぐに対応します」という簡潔なメールがきて、翌日から、いいかげんな配達はピタッと止まりました。人間同士なら理解しあえますが、相手がロボットだと、感情がないので前に進まないことしばし。しかし、いい加減な配達をしていたのは人間なので、宅配業務がコスト削減によって、まともな人材を確保できていないという別の問題も今度は露呈するハメに。人類とAIの共存生活はもう始まっていることを痛感させられました。それでは皆さんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2023年7月15日号)

(1)熱中症死亡者が急増 NY市保健衛生局統計

(2)日本人の犯罪被害状況 NY総領事館が事例発表

(3)小舟がクーラー

(4)燕市・三条市がNY物産展 滝沢三条市長が来米

(5)バービーカフェ マリブビーチをイメージ

(6)観光バス衝突事故 乗客68人が負傷

(7)日本アニメに影響受けた 米国で活躍する若き才能

(8)メジャーリーガーにも脳トレ 瞑想指導する兼下真由子さん

(9)チャットGPT vs. 人類 ホワイトカラー消滅?

(10 ) NYアジア映画祭 鈴木亮平が受賞

熱中症死亡者が急増

NY市保健精神衛生局過去 10年の統計で

 NY市保健精神衛生局が6日に発表した報告書によると、5月から9月までのニューヨーク市において熱中症による死亡者数が毎年推定350人と、夏の気温の上昇とともに過去10年間で増加していることがわかった。これらの人々の多くは死亡診断書に「暑さによるもの」と記載されているわけではないが、例えば心臓病などの基礎疾患があり、それが暑さによって悪化したものと思われる。

 調査結果によると2000年代の死亡者数は約100人であったが、近年は300人台に急増。死亡診断書のデータでは、熱中症で直接死亡する人は年間7人と推定され、60歳以上の高齢者で男性、黒人、貧困地域の住民の死亡率が最も高い。また、黒人が熱中症で死亡する確率は白人の2倍以上であった。報告書には「この不公平は、経済、医療、住宅、エネルギーなど、白人に有利で有色人種に不利なシステムを作り出している、過去と現在の構造的人種差別によるものである」と書かれている。

 研究者らがまとめた年次調査データによると、1970年にエアコンを設置している家庭の割合は40%だったが、2000年代半ばには80%を超えるまでに急増した。熱中症になった人のほとんどはエアコンのない家庭で死亡している。現在、NY市の世帯の90%以上がエアコンを使用しているが、その割合は社会経済的地位によって異なり、低所得者層では76%にとどまっている。近年、暑い日は増え続けており、熱中症による死亡者数が最も多い7月の平均最高気温は、過去50年間で5度上昇した華氏88度を記録した。

小舟がクーラー

 バシャッ。

水しぶきの音が水面を走る

オールを漕ぐたびに舟はゆらゆら

灼熱の太陽が翳りを見せた土曜の昼さがり

池の小舟は自然のクーラー

(8日、セントラルパークで、写真・三浦良一)

日本人の犯罪被害状況、NY総領事館が事例発表

 NY日本総領事館は10日、在留邦人が犯罪被害に遭った事例を発表し、注意を促している。未遂を含む同館管轄地域内でNY総領事館に報告のあったものを紹介している。▽4月下旬、夕方タイムズスクエア駅の階段を降りていた女性が、突然、女5〜6人に背後から押された。一緒にいた友人が女達に注意したところ、無言で立ち去っていった。▽4月下旬、夕方フィラデルフィア市地下鉄Market-Frankford線15番街で降車した女性とその子供2人が、ホームにいた男4人から突然「ここから出ていけ」と暴言を吐かれ、菓子袋及びペットボトルに入った牛乳を投げつけられた後、男達は早口で罵り、立ち去っていった。▽6月上旬の夕方、ニューヨーク市内マンハッタンの11番街44丁目付近を歩行中の女性が、付近を徘徊していた女を追い越した際、その女に突然背後から髪を引っ張られ、地面に突き飛ばされて後頭部を殴打された。周囲の人が警察へ通報してくれたが、警察が到着するまでの間、女は信号待ちの車のボンネットに乗っかるなど不審な行動を続け、警察に身柄を拘束された。

バービーカフェ

実写映画 21日から全米公開で70年代マリブビーチをイメージ

 バービー人形の実写映画『バービー』が7月21日から全米で公開されることを記念し、ニューヨークのシーポートに「ザ・マリブ・バービー・カフェ」(フルトン通り19番地)が登場した。ピンク色のポップアップカフェに一歩足を踏み入れると、レトロな魅力あふれる1970年代マリブ・カリフォルニアにタイムスリップ。たくさんのバービー人形やマリブビーチをイメージした砂浜、実物大バービーボックスなどがあり、自身がバービーになりきって、ケンやミッジ、スキッパーと一緒に過ごせる人気スポットとなっている。ダイニングでは「パシフィック・パラダイス・パンケーキ」や「カリフォルニア・ドリーミン・クラブサンド」などが提供され、ここでしか手に入らない限定グッズも販売している。9月15日まで。

 入場料は大人39ドル〜、子供22ドル〜(2歳以下無料)。料金には食事(メインディッシュとサイドメニュー)、90分のテーブル予約が含まれる。ドリンク、デザートの追加購入も可能。予約・詳細はウェブサイトhttps://bucketlisters.com/experience/malibu-barbie-cafe-new-york

燕市・三条市がNYで物産展

滝沢三条市長が来米

ジャパンビレッジで8月

 新潟県の三条市、燕市、隣り合わせである金物の産地の両市がブルックリンのジャパンビレッジ2階部ロフトで、燕三条の物産展「TSUBAMESANJO FAIR」(主催・公益財団法人燕三条地場産業振興センター)を8月19日(土)と20日(日)の2日間開催する。午前11時スタートで初日19日は午後6時、翌20日は午後5時まで。

 会場では、燕三条の製品販売(包丁、生花鋏、盆栽鋏、卸金、アウトドア製品、ダッチーオーブン、爪やすり、寿司トングなど)のほか、和包丁作り&研ぎ、苔玉作りのワークショップ、造園業の集積地としても知られている三条市から鍛治と園芸を表現したアート展も開催、三条市によるインバウンドPR活動も併せて海外展開をはかっていくため、滝沢亮三条市長も今回来米してトップセールスを行う力の入れようだ。出展団体は7企業、三条市営業戦略室、三条商工会議所青年部ら総勢25人が来米する。

 主催の燕三条地場産業振興センターは、毎年SHOPPE OBJECTに出展しているが、ニューヨークでのB to Cでの販売会は初の試みとなり、アメリカでは今までにない規模での燕三条製品の販売会となる予定だ。

 目玉として、プロジェクションマッピング、金属、植木を用いて燕三条を表現するアート展示、世界でも有名な包丁職人の日野浦刃物の職人による包丁作り&研ぎと特別販売が見逃せない。特に日野浦の刃物は現在日本国内では数年待ちとあってニューヨークのプロ職人にとっては垂涎の的だろう。植木職人も来米し、苔玉ワークショップも行う。

 燕三条の金物製品は、日本では有名だが、海外での知名度は日本ほどではない。多くの企業が海外への販路開拓を模索しているが、職人の匠の技術で作られた製品は、価格面で気軽に買ってもらえないところが課題となっている。今回の展示即売会では、イベントを通して、まずはニューヨーカーに燕三条という良質な金属製品を作っている土地の名前を知ってもらうこと、そして製品を実際に手にとってもらって、質の高さを感じてもらいたいという出展者一同想いを込めてニューヨークで開催する。今回の展示物産展はNY新潟県人会(大坪賢次会長)とジャパンビレッジの好田忠夫社長との強い要望から実現した。問い合わせはEメール makiaiba@gmail.com 相場さん。

観光バス衝突

乗客ら68人が負傷

マンハッタン23丁目で市営バスに

 6日午後7時過ぎ、マンハッタンの東23丁目と1番街の交差点で、観光バスとMTAバスの衝突事故があり、運転手を含む68人の乗員・乗客が近くの病院で手当てを受けた。乗客の負傷の程度は軽い切り傷から打撲、骨折までで死者はいなかった。消防署第一分署によると、23丁目を高速道路のFDRに乗るために東に走っていたMTAバスと、1番街の交差点に信号無視をして走ってきた観光バスが追突し、バスの前方とドアなどが大破した。乗客ら複数の通報で出動した消防隊員が、梯子やロープを使って二階建てバスの乗客を救出した。事故原因は調査中だが事故の責任は追突した側のツアーバス運行会社にあると都市交通局(MTA)のリチャード・デイビー局長は述べている。ニューヨーク日本総領事館によると日本人乗客はいなかった。

(写真)事故を起こして前方が大破した観光バス(6日午後10時、本紙・三浦良一撮影)

日本アニメに影響受けた米国で活躍する若き才能

NY日本ギャラリーで展示と講演会

 「世界を席巻、日本のアニメ」と題した展覧会が7日から今月26日(水)まで、日本ギャラリー(西57丁目145番地、日本クラブ7階)で開催されている。

 日本のアニメが、いかに現代アメリカのアーティストたちに影響を与え、ファインアートやエンターテイメントという垣根を超えて華々しい世界を繰り広げているかを紹介している。出展作家は、ダニエル・フィッシュキン、大塚弘樹、ジェシカ・ブルーノ(ルナ)、ジューン・キム、久木田成樹、リチャード・フォード3世、ドラゴン76、ライナー・ハイドン。

 オープニングレセプションが7日夕開催された。英語でマンガが読める新しい定額制アプリ「Azuki」の共同設立者で、ライセンスおよびマーケティング・ディレクターを務めるエヴァン・ミント氏が、日本のアニメやマンガが海外のニッチな娯楽カテゴリーから大人気の文化現象へと変貌を遂げた経緯や、現代アメリカのポップカルチャーに与えた影響について解説した。ミント氏は、日本アニメの創世記の作品やアストロボーイの名前で全米で放映された鉄腕アトムの作品などを紹介しながら、現代に至る日本の漫画、アニメについて語った。米国では1980年代初めにロサンゼルスの日本漫画愛好家たちで作られたカートゥーン・ファンタジー・オーガニゼーションの創成期の活動や、サンディエゴで始まったコミックコンベンションのその後の爆発的な発展ぶり、アメリカで発行される書籍の収益の4割が漫画で占められている現状などを解説した。

 展示作家は、キュレーターの佐藤恭子さんが独創的な活動をする若き才能の作家8人を選び、作者がそれぞれ自己紹介して作品を語った。ドラゴン76 は滋賀県出身、大阪芸術大学附属大阪美術専門学校卒。主に壁画やライブペインティングや個展の開催等の活動を行っている。2016年からは拠点をニューヨークに移し活動中。 リチャード・フォード3世はイースト・ビレッジの日本酒バー「でしべる」の和服ギャルを描いた人物。大塚弘樹は「バックステージ・イン・ニューヨーク」、「自由な女神」を発表。韓国系のジューン・キムは、花咲アキラ作画の「美味しんぼ」に触発されたフード漫画を描く。ジェシカ・ルナは、イタリア人イラストレーター。作品は今敏(こん・さとし、1963〜2010)のエモーショナルなシーンと「おジャ魔女どれみ」などキュートな要素をミックスした作品を発表。久木田成樹は、アジア人として西欧スタイルの画風に日本的タッチを取り入れた。ライナー・ハイドンはドイツ人で、奈良美智とポケモンを足して2で割ったような油絵を展示した。ダニエル・フィッシュキンは、ダクソフォンという前衛的な音楽を奏でる古典楽器を演奏して披露した。会場で講演を聞いていた日本人アーティストの野田正明さんは佐藤さんのチョイスに「日本の漫画に影響された新しい若き世代のアメリカの作家の台頭を感じさせてとても新鮮だ」と評した。詳細は日本クラブWEBギャラリーhttps://nippongallery.nipponclub.org/を参照。オンラインでは7月20日(木)から8月8日(火)まで公開される。

ホワイトカラー消滅?

平 和博・著
文藝春秋・刊

 会社の企画書も人事評価もすべてAIによってなされ、ホワイトカラーのやっている職種はどんどんと、なくなって最後には消滅してしまうのではないか、その「凄さ」と「怖さ」を知るための必読書とでも言おうか。米国の市民生活にすでに入りこんでいる卑近な例を一つ紹介したい。

 ニューヨークで、ニューヨークタイムズ紙を郊外の自宅で定期購読してかれこれ15年くらいになるが、昨年あたりから、早朝に配達されるはずの新聞が、来たり、来なかったり、いいかげんな配達状況になり始めた。日本の新聞配達の事情から考えたら、これは絶対あってはならない信じられないことなのだが、配達されるのが週に2回くらいになり、しかも曜日も時間もバラバラになった。

 日本なら、販売店に苦情電話を入れて、責任者が電話の前で頭を深々と下げて、新聞を抱えて飛んで来て、それ以降は絶対にこんなことは起こらない。だが、アメリカは違う。新聞の遅配、不配に対する対応は2択しかない。翌月のインボイスから差し引くリファンド(払い戻し)か翌日に配達するかのどちらかだ。状況に応じて、リファンドや、翌日配達を繰り返した挙句、なぜ、こんな信じられないことが毎日起こるのか。オンラインの説明を細かくみていくと、リファンドと翌日配達以外に「チャットで(ボブ)と会話する」というボタンがあった。もっと早く気がつけばよかったと、このいい加減な配達が起こっている理由を問いただしたい一念でボタンをクリックする。すぐ先方のボブからテキストが返ってきた。「はい、こんにちは、私はボブです。いつもご愛読ありがとうございます。今日はどんな御用件でしょうか」と短い挨拶。

 「新聞が来たり、来なかったり、いいかげんなのはなんで?」と怒りを抑えたこちらのメールにもすぐ、しかし今度はレターサイズ一枚ほどの文字量のタイプでびっしり書かれたお詫びのテキストが返ってきて、末尾には、二度とこのようなことが起こらないように販売店に厳しく指導します」とあり、これでもう大丈夫かととりあえず納得したが、翌日以降も改善されなかった。そしてまたカスタマーセンターで今度はもっと厳しく苦情を伝えようとすると「はい、こんにちは、マーガレットです。今日はどんな御用件でしょう。伺わせてください」とテキストがくる。翌日はチャーリーと、その翌日はフランクとチャットして苦情を言ったが、フレンドリーなボブも、マーガレットもチャーリーもフランクもみんなAIのロボットだと気がつくまで1週間かかった。AIロボット相手に苦情を言い続けていると、「メールで連絡しますか」という答えが。メールの向こうには人の気配がしたのでこう書いた。「私はNYタイムズを15年以上愛読している日本人だけど、こんなに嫌な思いを毎日させられているのは、今流行りのアジアンヘイトですか? 」と。2分もしないで短いメールが返ってきた。「あなたの配達の苦情の履歴を見ました。すぐに対応します」という簡潔なメールがきて、翌日から、いいかげんな配達はピタッと止まった。人間同士なら理解しあえるが、相手がロボットだと、感情がないので前に進まない。しかしいい加減な配達をしていたのは人間なので、宅配業務がコスト削減でまともな人材を確保できていないという別の問題も今度は露呈した。 (三浦)

メジャーリーガーにも脳トレ瞑想を指導

株式会社WINZONE代表

兼下 真由子さん

 2021年に日本で誕生し、今やメジャーリーガーやサッカー日本代表選手など多数のアスリートやアーティスト、主婦、ビジネスマンまで自身の能力を高める脳神経トレーニングメソッド「WINメディテーション」を考案した。1回5分、思い立った時にできるのが特徴で、一流アスリートたちに支持されている理由について、兼下さんはこう語る。「脳神経に有効であると実証されたエビデンスのある手法のみ採用しており、脳を鍛えられるからです。WINメディテーションは脳の前頭前野を活性化させ、大脳辺縁系の活動を抑制。また海馬の密度も高まります」と。  恒常性ホルモン、ホメオスタシスの作用を瞑想により底上げすることで、自己実現の可能性を高めることに着目したメソッドだ。同ホルモンは、人間が、身体の外から受ける環境や内部の変化にかかわらず、身体の体温・血糖・免疫状態を一定に保つ働きをする。 優れたアスリートがイメージトレーニングという手法で自己実現と成功を導くといった話をよく耳にするが、「実際に自分の求める目標以上の、到底達成できないような不可能に近い高い目標をイメージすることで、いわば自分の脳を錯覚させて、ホメオスタシスの作用を目標に近い自分の姿の方にシフトさせ、集中力を高めることができるんです」と説明する。

 兼下さんは19歳の時に日本テレビ系オーディション番組『歌スタ』に合格しソロメジャーデビュー。吉本興業に所属し、2枚のシングルを発売。TVタイアップやCM、雑誌、ラジオレギュラーなど、メディア出演を数万件以上経験した。 

 自身のメンタルマネジメントの一環として10年以上、日課としてヨガに取り組む中で、 更に学びを深めたいと2016年渡米。NYで『ゼロトレ』考案者の石村友見氏に師事し、全米ヨガアライアンスの講師資格を取得。帰国後、講師の育成やアスリートメンタルサポートを日本だけに留まらずアメリカやヨーロッパでも行うなど、パフォーマンスUPに特化したメディテーションメソッド提供に励んでいる。今月5日、NY初のセッションをマンハッタンで開催した。オンラインパーソナルセッションの申し込みはホームページから可能でNYからも受講でき、来年5月に本格的にNY上陸を計画中だ。

(三浦良一記者、写真撮影・根尾ゆうき)

https://www.win-zone.co.jp