ゆかたは着物

編集後記


ゆかたは着物

みなさん、こんにちは。「ゆかたは着物だ」「いや、浴衣は着物とは別物だ」という長年の論争に17日、終止符を打つきっかけともなる「ゆかたを仲間に、きものは世界遺産へ」と題した世界宣言がニューヨークから発信されました。宣言したのはNPO法人きものを世界遺産にするための全国会議(本部・東京都)の代表理事、吉田重久さん(60)。着物の着付け専門学校・日本和装の創業者で元社長の吉田さんは、元々は「浴衣は着物ではない」派の急先鋒の旗振り役だった。「パジャマで外歩けますか?」と言って反対していた。それが180度の方向転換だ。10年前から生活の拠点を縫製の関係でタイに移したことがきっかけだ。「外国人から見たら、ゆかたも着物も同じなんです。その違いを説明するのがもう難しくなった。スーツだって、ウールやツイードもあればコットンだってポプリンだってみんな同じ形でスーツじゃないですか。京都や浅草などの観光地では、ゆかたを着て散策する若い男女がとても多いのですが、そのほとんどが『きもの姿』としてゆかたファッションをSNSにアップしています。また外国人にとって、ゆかたをカジュアルなKimonoとして楽しんでいます。『ゆかた』はもうすでに『きもの』なのです」と吉田さん。だが方向転換のきっかけは海外目線だけではない。このままでは着物が産業として消滅してしまいかねないという危機感がそこにある。日本は高齢化で、着物を着る人も作る人もどんどん減っている。「美術館が着物を予算を取って展示するようになったら着物は産業としては死滅しますよ」という。今回宣言の決定打になったのは、同NPOをサポートするきもの愛好者「和装家」へのアンケート(回答数493)の結果だった。きものの文化的価値を考える上で、もっとも保守的だと思われた和装家の実に77・89%が「ゆかたはきものの仲間」と回答し、予想以上にきものへの考えが自由であることが分かったそうです。同NPOでは、今回の宣言は「きもの人口をケタ違いに増やし、きものの世界を大きく変えるもの」として認識し、きものの世界遺産(無形文化遺産)登録に弾みをつけるものと考えています。着物はてっきり、もう世界遺産になっていると思っていたらそうではなかったです。吉田さんも最近まで気がつかず「日本食」のように、ゆかたもふくめて着物も世界遺産にしたいというのが夢だそうで、今後、次はロンドン、バンクーバーなどを世界を回って宣言活動をしていくそうです。海外に住む日本人として応援したくなりました。今週号の5面で記事で紹介しています。それでは皆さんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2023年7月22日号)

(1)国連を支える世界 こども未来会議開催

(2)松江の魅力NYで 上定市長がトップセールス

(3)金魚ちょうちん 久保修ワールド2023 夏

(4)鈴木亮平さん受賞の喜び NYアジア映画祭

(5)各停よ、そんなに急いでどこへ行く 

(6)新潟県南魚沼市 中高生20人が来米へ

(7)「ゆかたは着物です」NYから世界宣言

(8)米国のぬいぐるみ会社で衣装作る 谷川沙羅さん

(9)川井郁子の「響」初の海外公演

(10 ) 我らがヒーロー、インディ健在 シネマ映写室

金魚ちょうちん

 夏になるとアトリエで存在感を見せてくれる金魚ちょうちん。

 絵のモデルとなる池の金魚と違って金魚ちょうちんは、ガラス窓越しに青空を背景にして風に揺れる姿は、涼を感じる。

 この金魚ちょうちんは、山口県柳井市を代表する郷土民芸品。幕末のころ、柳井の商人が子どものために青森県弘前市の「金魚ねぶた」にヒントを得て金魚を竹ヒゴでかたちをとり、和紙を張り柳井の伝統織物の染料を用いて作られたと言われている。

 赤と白の胴体に、大きく描いた黒い目は、愛嬌のあるおどけた顔の金魚ちょうちん。

 柳井の夏の風物詩として親しまれ、毎年8月13日に開催されている「柳井金魚ちょうちん祭り」では、石畳のある漆喰の白い壁と格子窓の家が両側に並び明かりをともした金魚ちょうちんが、いたる所に飾られている。 近年は、多くの観光客が訪れている。

(くぼ・しゅう/切り絵画家/東京都在住)

松江の魅力NYで

上定市長がトップセールス

 ジャパン・ソサエティー(JS、東47丁目333番地)は17日18日の両日、松江市と共催で特別企画「Get to Know Japan Series:〜松江市〜」を開催した。17日は、午後6時30分から「歴史ある城下町と茶の湯文化」と題する講演と実演が行われた。上定昭仁市長が来米し、松江の魅力である武家文化の歴史や、豊かな自然・文化遺産、魅力的な地元の食文化を「オーセンティック・ジャパン・松江」のキャッチフレーズで紹介した。また『出雲国風土記』にも登場する名湯「玉造温泉」、広大な日本庭園「日本庭園 由志園」、神秘的な鏡の池がある「八重垣神社」、世界でも珍しい花と鳥の公園「松江フォーゲルパーク」などさまざまな観光名所が動画で上映された。1611年に完成した松江城は、創建当時の天守閣を今もなお残す数少ない城のひとつで国宝に指定され、来場者が映像に見入っていた。

お茶と和菓子が大人気

 ジャパン・ソサエティー(JS、東47丁目333番地)は17日、18日の両日、松江市と共催で特別企画「Get to Know Japan Series:〜松江市〜」を開催した(1面に記事)。「水の都」として知られる歴史ある松江市は、日本の西部、北は日本海に面し、宍道湖と中海の2つの湖を有する、周辺すべてに水辺がある自然豊かな場所。島根県の県庁所在地である風光明媚な街は、全国で5つしかない国宝天守の一つ「松江城」で知られている。特別企画では未だ知られざる歴史のある松江市の魅力を2日間に渡り紹介した。

 17日は、午後6時30分から「歴史ある城下町と茶の湯文化」と題する講演と実演があった。『出雲国風土記』にも登場する名湯「玉造温泉」、広大な日本庭園「日本庭園 由志園」、神秘的な鏡の池がある「八重垣神社」、世界でも珍しい花と鳥の公園「松江フォーゲルパーク」などさまざまな観光名所が松江市にはあるが、松江市は、武家屋敷や茶室、松江城など、歴史にも彩られた街だ。1611年に完成した松江城は、創建当時の天守閣を今もなお残す全国でも数少ない城のひとつで、国宝に指定されている。本イベントでは、松江市長の上定昭仁氏が松江の魅力である武家文化の歴史、豊かな自然・文化遺産、そして魅力的な地元の食文化を紹介した。

 ステージ上では、お茶と和菓子文化を学べるライブデモンストレーションが開催された。日本茶インストラクターで裏千家准教授の原田由美さん(株式会社千茶荘常務取締役)が抹茶のお手前を披露した。続いて和菓子職人の大津光博さん(株式会社彩雲堂製造部課長)が桜花と鶴の和菓子を作って見せて会場を沸かせた。レセプションでは、松江の美味しいお茶やお菓子、地酒などの試食試飲を来場者は楽しんだ。 

 2日目の18日にはワークショップ「抹茶と和菓子・松江のお茶文化」が午後6時30分から開催された。松江市は、抹茶と和菓子を中心とした茶の湯文化でも有名な都市で、京都・金沢と並ぶ日本三大菓子処としても知られている。

国連を支える世界こども未来会議

平和実現のアイディア国連本部に決議提出

MIYAVIさんがライブも

 一般財団法人ピースコミュニケーション財団(一木広治代表理事)は19日、国連本部DDRで「国連を支える世界こども未来会議〜プロジェクト発表イベント・イン・NY」を開催した。第1部「国連本部セレモニー」では、グテーレス事務総長への親書と、キッズアンバサダーが3月に開催した「第3回国連を支える世界こども未来会議の決議」をまとめたアイデアブックを国連本部に提出した。

 第2部「国連を支える世界こども未来会議」では、プロジェクト発表とサムライギタリスト MIYAVIによるライブパフォーマンスが行われた。

 プロジェクトの概要、来年度以降の展望を発表するとともに、同プロジェクトへ協賛している日本電信電話株式会社が、ニューヨークの会場にいるキッズアンバサダーと日本にいるキッズアンバサダーをオンラインで繋ぎ、遠くにいる人の鼓動を光と振動で感じる遠隔触感コミュニケーション体験を実践。また、キッズアンバサダー3人が「第 3回国連を支える世界こども未来会議」で考えた平和実現に向けたアイディアを発表。ライブパフォーマンスでは、『シェイプ・オブ・フューチャー・プロジェクト』と題し、こどもたちの未来に向けた「声」を集めるプロジェクトをもとにMIYAVIが楽曲プロデュースで制作した、国連を支える世界こども未来会議のテーマソングを披露した。

新潟県南魚沼市、中高生20人が来米

ワシントンDCとNYを訪問、見聞広め故郷に貢献

 新潟県南魚沼市の中学生と高校生合わせて20人がワシントンDCとニューヨークを訪問し、ホームステイなども含め8月1日から7日まで来米する。一行には林茂男南魚沼市長、岡村秀康南魚沼市教育長はじめ、市役所職員が同行し、ワシントンDCでホワイトハウスやリンカーン記念堂、アーリントン墓地、スミソニアン国立自然博物館などを見学する。

 生徒たちは、アメリカン大学を訪問して学校生活などを日本人留学生から話を聞く。ニューヨークでは国連を見学し、石兼国連大使を表敬訪問するほか、NY総領事の森大使が一行の歓迎会を開催する予定だ。

 ツアー後半の週末は、自由の女神島上陸やメトロポリタン美術館見学、最終日は分散してニューヨーク新潟県人会が迎えるホストファミリー宅に宿泊するなど盛りだくさんの1週間の滞在となる。主催は南魚沼市で、選抜は成績評価だけで決めるのではなく、一生懸命努力をしている子や、芸術やスポーツに熱心な子などさまざまな観点から市教育委員会が選んだという。  

 この新潟県の生徒たちをアメリカに招くきっかけとなったのは、ニューヨーク新潟県人会の会長で南魚沼市出身の大坪賢次さん(不動産会社社長)の発案からだ。昨年亡くなった大坪会長の妻、理恵さんがパンデミック前から「故郷が発展するには人材の育成が大切で、それにはまだ進路を決めていない中学生の時が良いと思う」とかねがね言っていた事が心残りで、亡き妻の夢を叶えたいとの思いもあり「中学生をアメリカに招いて、政治の中心地のワシントンDC、学問の中心地のボストン、それに経済・文化あらゆる面で世界最高の地であるニューヨークを見せてあげたい」とニューヨークから故郷新潟に何度も足を運んで実現に漕ぎ着けたものだ。そういう事情で「南魚沼市中学生海外派遣事業」と銘打った市の事業は、今回は中学生だけではなく、数年前に中学生だった時に選ばれていたがパンデミックで来れないまま高校生になった生徒も含まれている。大坪会長は「今後毎年20人から30人の中学生を招きたいと思っている」と話している。

 南魚沼市からの参加学校は、中学校が、大和中学、六日町中学、八海中学、塩沢中学、秀明中学。高等学校が、新潟高校、六日町高校、十日町高校、国際情報高校、長岡高校。参加者は井口咲楽、加藤有純、笠原結、笠原八尋、桑原つぼみ、髙野七実、室橋スミレ、小島涼、小林咲月、松田夏穂、杉山誇和、渡邉夏央、富士野美幸、福田名菜、原澤桃花、本間ほのか、野澤樹季、齋喜璃音、白井紗那、井上陽南(敬称略)以上20人。

鈴木亮平さん受賞の喜び語る

「アジア映画の存在感増大の一つになれば」

第22回ニューヨーク・アジア映画祭

ライジングスター・アジア賞「エゴイスト」主演で

 第22回「ニューヨーク・アジアン映画祭(NYAFF)」が14日から30日まで、フィルム・アット・リンカーンセンターとNJ州にあるバリモア・フィルムセンターで開催されている。15日夜、リンカーンセンターで松永大司監督『エゴイスト』が上映され、上映後の質疑応答に松永監督と、ともに来米した主演の鈴木亮平さんが大きな歓声のなか登壇した。

 映画『エゴイスト』は日本で今年2月に公開。ひと組のゲイカップルとその周辺の人間模様を描き、愛とは何かということを真正面から問いかけた、大きな話題となった作品。2020年に50歳の若さで亡くなったエッセイスト、高山真の自伝的小説『エゴイスト』を映画化したものである。

 また今回、鈴木亮平さんは同映画祭による「ライジングスター・アジア賞」を受賞。多くの人が観にきてくれたことや受賞について、また原作の高山氏や監督に対して感謝の言葉を述べた。受賞について「アジア映画の存在というものが近年本当に増してきている中で、今回の受賞で、自分がそのパワーの一つになれているのであればとても嬉しく思う。アメリカ映画の中でアジア・コミュニティーからも映画が生まれ、ハリウッドでも活躍するアジア人俳優がいるが、自分もそんなチャンスがあればいつでもという思いは昔からあります」と語っていた。上映後の質疑応答では、鈴木亮平さんは通訳をつけずすべての質問に英語で受け答えした。

松永監督「原作を読み、ゲイの人たちの物語であるとともに、大きな愛の物語であると思った」

ーなぜこの映画を作ろうと思ったのか?

 松永監督「原作を読み、ゲイの人たちの物語であるとともに、大きな愛の物語であると思った。この物語を自分を含めて異性愛者が中心のチームでどのように形にするのかを考えた時にそこにはやはり対象に対して誠実に向き合いたいという気持ちがあったので、ゲイ当事者の方たちにたくさん入ってもらって丁寧に作った」

 鈴木「オファーをもらった時、異性愛者の自分がこの役を演じるべきかどうか迷った。しかし調べてみると当時日本でゲイだと公表して活動している俳優はまだ一人も見つけられなかった。日本では俳優がゲイであることを公表することに大きなリスクが伴う。まずは社会や我々映画業界が前に進んでいくために、この映画を作ることが何より大切なのだと思った。少なくとも現時点においてはLGBTQ+を取り巻く社会の状況や日本映画を前に進める上で、大きな一歩になったのではと誇りに思っています」

ーこの秋、北米で『エゴイスト』の公開が決まったそうですね。

 松永監督「映画はお客さんに届いて初めて完成すると思っている。アメリカの映画を観て僕は映画を作りたいという気持ちが生まれた。北米で僕の大切な映画が公開されることは本当に本当に幸せです」

 鈴木「この映画を観て感じた良いことも悪いことも、友達に話したりSNSで感想を書いたりしてもらえたら嬉しい。それは僕らにとって新たな力となり、今後のより良い作品につながるから」

■映画を観たニューヨーカーのコメント

ラッセルさん「とても良かった。主人公とその恋人の母との関係の描き方が美しく、人間同士の繋がりに感動した。僕はシンガポール出身でゲイだけど、ゲイを公表しづらい日本の状況は同じアジアだからよくわかるよ」

チョルソさん「ストーリーを知らずに観たが、監督のカメラワークがとても良かった。BGMがほとんどなく、カメラが接写したり離れたりすることでその場の彼らの気持ちをよく表していたと思う」

ジェンティさん「とてもエモーショナルな映画だった。特に主人公の優しさに心を打たれた。僕もゲイだけど同じような状況になったら僕も主人公と同じように恋人の母を気にかけ、彼がやったように身の回りの世話をしたりするかもしれない」

各停よ、そんなに急いでどこへ行く

 地下鉄がそんなにいい加減なわけがない。作り話だろう。

 拙著『ニューヨークのとけない魔法』の読者が、ブログか何かでこう書いているのを見つけた。

 その人がこの街を訪れたら、拍手で迎えてあげたい。

Welcome to New York!

ようこそ、ニューヨークへ!と。

 急行が突然、各駅停車になるのはまだ許せるが、各停が急行になるのは、ほとほと迷惑だ。

 つい最近も、友人と私が急行から各停にわざわざ乗り換えたのに、目の前を次々に、駅のホームが過ぎ去っていく。思わず叫び声をあげたら、周りの乗客たちが目を細めて笑っている。余裕を見せるではないか。

 まさに、Welcome to New York! と言いたげな表情で、肩をすくめながら私にほほ笑む人もいれば、どこで降りたかったの? と親切に声をかけてくる人もいる。

 夫との待ち合わせの時間はとうに過ぎているのに、電車は無慈悲にも、停まるはずだった七十二丁目を五十三ブロックもすっ飛ばし、百二十五丁目のハーレムを目指し、快調に走り続けているのである。地下鉄の運転手冥利に尽きる区間に違いない。

 変更について車内放送が流れることもあるが、電車の音や乗客の声がうるさくて聞こえにくい。

 運よく聞き取れたとしても、突然のことだから、瞬時に飛び降りたり、飛び乗ったりしなければ、間に合

わないことも少なくない。

 ドア付近の人の動きにも、注意が必要だ。が、これは各停か、とほかの乗客に聞いても、らちが明かない。

 返ってくる答えも、のんびりしたもの。

 I hope so.

 だといいんだけど。

 Well, we’ll find out.

 ま、そのうち、わかるんじゃないの。

 you(あなた)ではなく、we(私たち)と答えるところが、同じ電車に乗る運命共同体のようで、まあ、一緒に運に任せてみますか、と思わなくもないが、遅刻しそうなときには、そんな悠長なことを言っていられない。

 ときには、この地下鉄の気まぐれさを、都合のいいように利用する人もいる。

 自分のせいで約束の時間に遅れても、地下鉄に無実の罪を着せるというわけだ。

 また、地下鉄のせいよ。わかるでしょ、まったくニューヨークの地下鉄は、と。

 ああ、それは、私か。

 このエッセイは、シリーズ第5弾『ニューヨークの魔法のじかん』に収録されています。

https://www.amazon.co.jp/dp/4167717220

米国のぬいぐるみ会社で衣装を作る

テキスタイル・デザイナー
イラストレーター

谷川 沙羅さん

   谷川沙羅さん(23)は、テキスタイルを使ったイラストレーターとデザイナー。幼い頃すべてが魔法のように感じた平和でよろこびにあふれた世界を再び体験できるような作品を制作している。目には見えない魔法の世界、それは幼かった頃の谷川さんの心を育てた大切なぬいぐるみの仲間たちとの物語だ。幼稚園や小学校時代、魔法のとびらが開いて夢の国へとつながって行き、そこでぬいぐるみの仲間たちが生きていると思っていたそうだ。

 昨年、米国の美術大学、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインのテキスタイル科を卒業。社会人1年生の現在、ブルックリンにあるオーガニックぬいぐるみ会社Hazel Villageで商品デザインに関わっている。さまざまなコレクション作りの中、主にぬいぐるみの洋服や小物のデザインを担当し、不思議さや魔法のような力といったテーマをイラストやテキスタイルで表現している。

 Hazel Villageは、人形アーティスト、ジェーン・ヴァンクリーフが創設した会社で、森の奥の村に住んでいる豊かな仲間たちの世界がテーマ。絵本に登場するする、こぐまやうさぎ、ねずみなどの小動物が主人公だ。環境と人々に優しい製作にこだわり、海外の職人とフェアトレードパートナーシップを組んで商品を世界中に発送している。

 「幼い頃からぬいぐるみがかけがえのない家族と思う私にとって、社会のために長くもちこたえられるように大切にぬいぐるみを製作している会社で働くことはとても幸せなことです。自分がデザインした洋服をぬいぐるみに試着させる時はドキドキとうれしさとがいっぱいです」と金縁眼鏡の奥で目を輝かせる。

 谷川さんは、1999年、埼玉県深谷市生まれ、23歳。親の都合で2歳から海外暮らし。中国上海から米国オハイオ州へ、再び上海へ。転校が多く、引っ越すたびに環境や友達が変わったが、いつも一緒にいてくれるぬいぐるみが自分のそばにある味方だと思えるようになった延長線に今の自分がいる。

 「作品を見た人が自分の子どもの頃に戻った不思議な感覚になるような、あるいは、大人になるにつれて忘れていったあの時の感動や驚嘆をそっと思い出させてくれるような作品づくりを目指しています。作品にふれた人全てが少しでも笑顔になることを常に願っています」とホタテ貝の縁どりに囲まれたチューリップのイラストが描かれたクッションを抱きしめて笑顔になった。現在作品は、日本クラブのWEBギャラリー(https://nippongallery.nipponclub.org/Artists/Details/67)で展示中だ。

(三浦良一記者、写真も)

ゆかたは着物です。NYから世界宣言

論争に終止符、世界遺産登録へGO!

 NPO法人きものを世界遺産にするための全国会議(本部・東京都、吉田重久代表理事)は17日、ニューヨークで「ゆかたを仲間に、きものは世界遺産へ」と題したニューヨーク世界宣言を発表した。これまで長年続いてきた「ゆかたはきものか?」論争に終止符を打ち、きものの世界を大きく広げ、世界遺産登録への可能性をより高めることが目的。ゆかたはきものかを実際にネットで検索しても、ゆかたときものの「違い」だけが知識的に強調され、明確な答えがない。業界の中でも「ゆかたはきものではない」という意見が根強くあり、日本和装の創業者で元社長だった同NPOの吉田代表理事も以前は「浴衣はパジャマ、きものではない」と名言していた時代があった。

 今回の宣言に至る過程の中でも、NPO関係者から「やはりきものとゆかたは別物」という意見もあったが、若者や外国人はどうか。

「京都や浅草などの観光地では、ゆかたを着て散策する若い男女がとても多いのですが、そのほとんどが『きもの姿』としてゆかたファッションをSNSにアップしています。また外国人にとって、ゆかたをカジュアルなKimonoとして楽しんでいます。『ゆかた』はもうすでに『きもの』なのです」と吉田さん。現在はタイに在住し、海外に住んで外国人目線でものを捉えられるようになったそうだ。

 今回宣言の決定打になったのは、同NPOをサポートするきもの愛好者「和装家」へのアンケート(回答数493)の結果だ。きものの文化的価値を考える上で、もっとも保守的だと思われた和装家の実に77・89%が「ゆかたはきものの仲間」と回答し、予想以上にきものへの考えが自由であることが分かった。

 同NPOでは、今回の宣言は「きもの人口をケタ違いに増やし、きものの世界を大きく変えるもの」として認識し、きものの世界遺産(無形文化遺産)登録に弾みをつけるものと考えている。

 特定非営利活動法人 きものを世界遺産にするための全国会議活動の目的は、法人名の通りにきものを世界遺産にすることで、和装業界に貢献しようというものだ。2014年にきもの業界各社が設立。同時に活動を開始。2023年7月現在、139社の業界各社が本会員、賛助会員として加盟している。

(写真)NYで浴衣着物宣言した吉田代表理事(17日朝、写真・三浦良一)

「響」初の海外公演

川井郁子の和洋楽団、音楽と立体映像で壮大なロマンを演出

ジャズ・アット・リンカーンセンター

9月9日に開催

 バイオリニスト/作曲家の川井郁子が率いる和楽器と西洋楽器の混合オーケストラ「響(ひびき)」による初の海外公演「イースト・ミーツ・ウエスト」が、9月9日(土)午後7時から、コロンバスサークルにあるジャズ・アット・リンカーンセンター内ローズホール(59丁目とブロードウエーの角)で開催される。北斎の浮世絵や桜、能など、最新の映像技術(ホログラム)を駆使した演出により、音楽とダイナミックな立体映像が壮大なロマンを演出するコンサート。

 オーケストラ響は、川井が自身のライフワークである越境を体現するオーケストラとして設立したプロジェクト。日本を代表する若手和楽器演奏家たちと現地のオーケストラによる越境のコラボレーションにより、音楽が持つ新しい可能性を広げる新たな存在として注目されている。アジア各国からシルクロードを渡って日本に伝わった和楽器は、雅楽や能・歌舞伎などの文化と共に発展し、独自の響を追求しながら発展を遂げてきた。川井のオリジナリティ溢れる音楽性は、日本人の根底に流れる和楽器の音色と世界的に広く馴染みのある西洋楽器のオーケストラを融合させ、国境やジャンルといったあらゆる垣根を越境する。

 出演は川井郁子(バイオリン、作曲、編曲、プロデュース)のほか、和楽器(篠笛、尺八、琴、琵琶、小鼓、笙、ひちりき、和太鼓)、NYフェスティバルオーケストラ、The Ukrainian Chorus Dumka of New Yorkを迎え、国境を越えた平和の響きで祈りを捧げる。舞台映像は、日本で歌舞伎やテレビドラマなどの映像を手がけるアートディレクターのタキ・ウエダ。

 入場料は40ドル〜150ドル。チケット・詳細はウェブサイトhttps://2023.jazz.org/を参照する。