「獺祭」米に製造蔵

ニューヨーク州ハイドパーク

旭酒造が現地生産

米国でのSAKE認知向上目指す

予約制で10月末から見学ツアーも開始する敷地内の製造蔵

 日本酒「獺祭」のブランドで人気の山口県岩国市の旭酒造がニューヨーク州ハイドパーク市に製造蔵を開設した。そのオープニング・セレモニーが9月23日現地で行われ、桜井博志会長、桜井一宏社長が挨拶をした。セレモニーには卸売り業者や酒米の栽培農家の方、レストラン関係者ら約400人が集まり、ニューヨーク総領事の森美樹夫大使も参加した。

 米国のブランド名「Dassai Blue」は、中国の儒学者「荀子」の言葉「青は藍より出でて藍よりも青し」に由来、日本の「獺祭」を越えるという想いからこの名が当てられたという。

 また、今後は現地にある学位を付与する料理学校カリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ(CIA)とも協力し、米国でのSAKEの教育と認知向上も目指す。

 「Dassai Blue」は9月25日からニューヨーク州内のリカーストアやレストランで販売を始めた。720ミリリットルで精米歩合50%の「Dassai Blue 50」の希望小売価格は34ドル99セント。敷地内にはテイスティングルームも併設され、10月19日以降からは製造蔵の見学ツアーも開始する。(石黒かおる、写真も)

日本の静かなるリーダーシップ

出版記念講演会

「インド太平洋の地政学上重要なプレーヤーに変貌」

■スピーカー
ブルッキングス研究所東アジア政策研究センター長
ミレヤ・ソリス氏

■モデレーター
コロンビア大学名誉教授
ジェラルド・カーティス氏

 コロンビア大学と国際交流基金ニューヨーク日本文化センター、中国世界研究項目は9月27日、ブルッキングス研究所のミレヤ・ソリス博士=写真中央=を講師に招き、新著『Japan’s Quiet Leadership』(ブルッキングス・インスティチュート・プレス刊)についての講演と質疑応答を行った。モデレーターにコロンビア大学のジェラルド・カーティス名誉教授=写真右=が解説した。

 本書は、日本の経済的・政治的進化の過去30年間を俯瞰し、グローバリゼーションの経験、経済的国家運営の影響と再調整、そして日本の安全保障のプロファイルを徐々にではあるが大きく変化させる引き金となった地政学的挑戦の数々を紹介する。そうすることで、変化し、不完全で、より結果的な日本の物語を伝えることを目的としている。

 カーティス名誉教授は、「重要なメッセージは、日本がインド太平洋地域の再構築と自由主義的国際秩序の擁護において重要な指導的役割を果たしているということだ」と話す。

ネットワーク大国日本

ミレヤ・ソレス・著
ブルッキングス研究所出版・刊

 コロンビア大学と国際交流基金ニューヨーク日本文化センターは9月27日、ブルッキングス研究所のミレヤ・ソリス博士を招き、新著『Japan’s Quiet Leadership』についての講演と質疑応答を行った(1面に記事)。

 モデレーターにコロンビア大学のジェラルド・カーティス名誉教授が解説した。本書は、日本の経済的・政治的進化の過去30年間を俯瞰し、グローバリゼーションの経験、経済的国家運営の影響と再調整、そして日本の安全保障のプロファイルを徐々にではあるが大きく変化させる引き金となった地政学的挑戦の数々を紹介する。そうすることで、変化し、不完全で、より結果的な日本の物語を伝えることを目的としている。カーティス名誉教授は、「重要なメッセージは、日本がインド太平洋地域の再構築と自由主義的国際秩序の擁護において重要な指導的役割を果たしているということです」と話す。

 本書は、9月1日に発売され、インド太平洋の地政学における重要なプレーヤーへと変貌を遂げた日本について掘り下げ、民主主義の回復力、社会の安定性、積極的な外交といった日本の強みを強調する一方、過疎化、不平等の拡大、地域平和の脅威といった差し迫った問題にも取り組んでいる。

 なぜ日本は「失われた数十年」からポピュリズムの波から無傷で抜け出し、インド太平洋の地政学においてはるかに重要なアクターとなったのか。この問いに答えるため、『日本の静かなるリーダーシップ』は、日本の国内経済と政治の進化、経済的な国家戦略、そして日本の安全保障のプロファイルを徐々にではあるが大きく変化させる引き金となった地政学的な課題の数々について、包括的な考察を提供している。過去30年にわたる日本の軌跡を深く掘り下げる本書は、民主主義の回復力、社会の安定性、積極的な外交といった日本の隠れた強みを強調する一方で、過疎化、格差の拡大、有権者の離反、アジアの長い平和への脅威といった、日本が直面する深刻な課題についても考察している。本書は、日本の政治と外部環境を貫く深刻な変化の潮流をたどり、日本の経験が、低成長、人口動態の悪化、経済のグローバル化への適応、強力で自己主張の強い中国の出現に対処している国々にとって、より適切なものとなっている無数の方法を明らかにする。これは、相対的な能力の低下という厳しい現実を克服するために、日本がネットワーク大国として再出発した物語である。インド太平洋を再構築するにあたり、東京は貿易統合とインフラ資金調達という強固な経済戦略を展開し、地域および域外の主体との新たなパートナーシップを培い、米国との同盟関係を深めるという積極的な安全保障外交を展開した。とはいえ、地政学的な軋轢、日本のパンデミック的な偏狭さ、国際経済関係の安全保障化によって、日本の「連結性」という国家戦略が試されている。グリーン、デジタル、人的資本の変革を実現し、国家の舵取りにおける優柔不断な政治の復活を避け、民主主義のダイナミズムを育むことを紹介し、本書は、日本の政治、経済、そして国民が、安倍時代を経て2020年代、そしてその先へと向かう先を照らし出す。(三浦)

第15回風の環コンサート

トルコ巨大地震復興チャリティー公演

宮城完爾 Photo: K. Seki

 第15回風の環コンサート(白田正樹音楽監督)が11月5日(日)午後4時30分(開場午後4時)からMerkin Hall at Kaufman Music Center(西67丁目129番地)で開催される。

 第15回目となる今年の風の環定期コンサートはトルコの伝統音楽継承を目的に活動しているTurkish & International Music Ensemble=写真上=を迎え、今年2月にトルコ南東部で発生した巨大地震の犠牲者追悼と早期復興を支援するチャリティコンサートを予定している。この地震ではトルコの11都市が壊滅し、犠牲者5万人をはじめ2千万人を超える被災者を出した。中でも多様な文化遺産を有する地方として知られていたハタイ地方は壊滅的な打撃を受け、数千年の歴史を持つ多数の文化遺産をはじめ音楽ホールなどの施設や楽器も失われた。

 コンサートには風の環少年少女合唱団、風の環室内アンサンブル、混声合唱団のJapan Choral Harmony“TOMO”が出演する。風の環室内アンサンブルには、福島県いわき市出身で札幌交響楽団のオーボエ奏者である宮城完爾が加わり、モリコーネの「ガブリエルのオーボエ」等を演奏する。

ジャパン・コーラルハーモニー「TOMO」

 なお、毎年9月に開催してきた風の環コンサートの定期演奏会は今年の第15回をもって終了予定である。

チケット20ドルは www.kaufmanmusiccenter.org またはKaufman Music Centerのボックスオフィス (212・501・3330)にて販売中。詳細はwww.jch-tomo.orgまたはhttp://kazenowa911.blog6.fc2.com

 問い合わせはEメールmikeshirota125@gmail.comまたは電話917・371・8386、白田さん。

ニューヨークでステーキを食べる。芸術的味わいの最高傑作をね。

  マンハッタンのミッドタウンに2006年開店したベンジャミン ステーキハウスは、USDA(アメリカ農務省)の最上級グレード「プライム」に認定されたビーフを独自の製法で28日以上長期熟成し、高温デッキブロイラーで一気に外側を焼き上げてうまみを閉じ込め、熱々の陶器のお皿に乗せた、絶妙な調味と焼き加減でテーブルに運ばれてくる。代表的なメニューであるポーターハウスは、サーロインとテンダーロイン(フィレ)のふたつの部位が骨を挟んで並んでおり、ひと皿で2種類のうまみを逃さず焼き上げた、上質なビーフのおいしさを堪能できる。 男性2人でもお腹いっぱいになるステーキ・フォー・トゥ(135ドル)にスピナッチやポテトのサイドをつければ、食べても食べても飽きずに美味しくいただける。

共同オーナーのベンジャミン・プロブカイさん(左)とベン・シナナージさん(41丁目本店で)

 ニューヨークには多くのステーキハウスがあるが、客の好みぴったりの料理に仕上げることに定評がある同店のステーキ。共同オーナーのベン・シナナージさんは「同じ景色を描いても画家によってタッチが違うように、ベンジャミンのこの味が大好きなファンに愛されているのが人気の理由です」と話す。マジソン街とパーク街に挟まれた41丁目のニューヨーク本店(東41丁目52番地、電話212・297・9177)は平均3割、多い時は4割の在米日本人の来店があるほどの人気店。ビジネスのパワーランチからプライベートイベントまで、日本からの来客をもてなす店としてもおそらくニューヨークで3本の指に入る名店だ。故安倍総理もここでステーキを堪能した大ファンだったという。共同オーナーのベンジャミン・プロブカイさんは「プライペートパーティーでも会社のお祝いでもなんでもリクエストしてください。特別な時間と忘れられない至福の体験をお楽しみください」と話す。

 ステーキはもちろん、豪快なシーフードプラッターをはじめとするオイスターや豊富なシーフードメニュー、さらにアメリカをはじめ世界各国から様々な種類の豊富なワインを取り揃えている。ニューヨークでリピーターを魅了し続ける同店は本店のほかに大小個室なども完備している姉妹店ベンジャミン・プライム(東40丁目23番地、電話212・338・0818)、シーフードレストランの「ザ・シーファイヤ・グリル」(東48丁目158番地、電話212・935・3785)があり本店同様のメニューを楽しめる。また、ウエストチェスターのホワイトプレーンズには客席数350のベンジャミン・ステーキハウス・ウエストチェスター(ハーツデール街610番地、電話914・428・6868)があり、こちらはファミリーイベントでも大いに活用できそうだ。日本では六本木、紀尾井町、京都に3店舗を持つ。(三)


Benjamin Steakhouse

52 E 41st St, New York, NY 10017

Tel: 212-297-9177

月〜金 7:30~22:30

 (Dylan Hotelの横で朝食)

土曜 16:00~22:30

日曜定休


Benjamin Prime

23 E40th St, New York, NY 10016

Tel:212-338-0818

月〜金 11:30~23:00

土曜 16:00~23:00

日曜 16:00~22:00


第11回 花と芸術の祭典、カーネギーホールで

 第11回花と芸術の祭典、カジキズ・ショーNYカーネギー公演が2日、カーネギーホール・ワイル・リサイタルホールで開催された。舞台出演は、ヒーリングシンガーここりが「ありがとう」と「おめでとう」をしっとり聞かせ、花魁ミラージュ=写真上=の齋藤祐佳理、高野天照、澤原雅子、ヘアの渡邉恵が華やかな舞いを演じた=写真上=。 崎山泰成が「同じ空」を、岡野啓子が田中友樹子伴奏で熱唱し、HEIWAなきょうだいが昭和メドレーと「まるくつながって」、コーラスWAcCARが「花は咲く」「時代」「希望の歌」を合唱した。劇団はがくれ=写真左=の殺陣ショー「ザッツ・ジャパン」も舞台でダイナミックな妙技を披露した。 

 ステージのとりは佐賀県唐津市出身の歌手、岩田みゆきが登場。「異邦人」とオリジナル曲「エンドレス・ブルー」で見事な歌声を披露した。全編を通じトランペットの演奏が秀逸を極めた。NYから現地参加でプティ・アロンジェ・ベラNYバレエ教室。総合司会はIFA花の街振興財団理事長の梶木敏巳さんが務めた。 

在外投票を混乱させる衆議院抜き打ち解散

 最近日本では衆議院解散の報道が目立ちます。上院、下院とも決まった時期に行う米国と違い、任期4年の衆議院のはずが約2年半に1回選挙を行っています。近年は抜き打ち解散が多く、海外日本人にとっては立候補者や政策の事前情報不足での選挙突入です。選挙公報も選挙公示後に在外公館に届きます。

 「片道数時間の在外公館や、間に合わない郵便投票」などの障害に加えて、突然の総選挙は在外投票の意欲を損ねてはいませんか?私は米国の政党大会に2度出席しましたが、予備選挙も含め候補者と有権者とが1年近く対話する民主主義に感動しました。近年は劇場型過ぎますが!

84%は首相の裁量による解散

 大統領を直接選ぶ米国と異なり、日本や英国は国会議員が首相を選ぶ「間接民主主義」の国です。国民との距離が離れた首相をチェックするために、国王が議会を解散して民意を問うのが解散の起源です。また三権分立にある政府と国会との相互チェック機能でもあります。

 しかし、日本では政府が圧倒的な力を有し、その首相の政治判断で解散されてきました。憲法69条の内閣不信任決議案による解散は過去4回のみで、21回(84%)は憲法7条による首相の裁量による解散です。

 英国でも首相による解散が多かったため「議員任期固定法」が成立し、下院議員の任期を5年と固定化し、解散を下院の3分の2以上の決議、または不信任決議可決の二つに限定したこともあります。

 日本でも「内閣不信任決議案による解散か、衆議院の3分の2以上の決議を要する解散案」や、「解散日の事前通知を義務付け、通知した日以外の解散を禁じる案」などが出てきています。

首相の4分の3が世襲議員、弱い国会

 それ以上に日本の民主主義を強化する時です。歴代首相の約4分の3、国会議員の30%弱(自民党の約40%)が世襲議員です。この最大の既得権と官僚とのもたれあいが政府の国会に対する優位性の基盤です。

 法案全てを議会が提出する米国に対し、日本では8割を政府が提出します。政府の過大歳出を大幅削減できる米国のGAO(行政活動監査院)などの独立機関を持たないことも弱い国会の実像です。

 こうした欧米諸国が持つ民主主義や議会の強さを日本も持つことが、在外ネット投票導入や国籍法改正などによる海外日本人のサポートにもつながると思います。

 ふじた・ゆきひさ=慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。

NYPDにロボコップ

試験運用を開始

地下鉄タイムズ・スクエア駅を巡回

 エリック・アダムス市長は市の地下鉄安全対策の新たな試みとして駅を巡回する「ロボコップ」導入を発表した。このロボットはKnightscope K5と呼ばれるもので、地下鉄タイムズ・スクエア42丁目駅で2か月の試用期間を設ける。

 ロボットは緊急時や犯罪発生時に当局が確認できるよう、ビデオ映像を記録するほか生身の人間に接続可能なボタンなど様々なセキュリティ機能を備えている。試用期間中、ロボットは午前0時から6時まで駅構内で活動し、常に警官が同行して新技術に関する質問や懸念を持つ通勤客と対話する予定。また市長とニューヨーク市警のケンパー交通局長はロボットが音声を録音したり、顔認識を使用することはないと強調した。

 このロボットは市から1時間あたり9ドルでリースされるもので、「最低賃金以下でトイレ休憩も食事休憩も不要。これは良い投資だ」と市長は語った。破壊行為の懸念について質問された市長は、この新技術を破損しようとする者は修理の責任を負うことになり、損傷の度合いによっては重罪に問われることもあると答えた。

 2か月の試用期間終了後に効果を検証し、このロボットを他の地下鉄駅に配置拡大するかどうかを決定する。

家と家の名義の片づけ

日本で相続登記義務化迫る

ヘルスフェア山口さん解説

 ニューヨーク日系人会(JAA)と邦人医療支援ネットワーク(JAMSNET)が共催する第17回秋のヘルスフェア(後援・ニューヨーク日本総領事館)で、日本で人気の有名講師陣がYouTubeで講演配信する恒例の「ライオンズ大学・大人の教養講座シリーズ」第7弾が9月21日から10月1日まで開催された。講師陣はファーストブランド社(本社大阪市、河本扶美子社長)が運営するマイベストプロ登録の専門家3人。企画はNY日系ライオンズクラブ。初回は一般社団法人日本リレーションサポート協会代表理事の山口里美さんが「家と家の名義の片づけ〜相続登記の義務化迫る!〜」を解説した。

 年齢と共に家の中のモノが増えていくが、体力が衰えない50代くらいから整理が望ましい。日本人の平均寿命は男性が81歳、女性が87歳だが、健康でいられるのが男性72歳、女性75歳と開きがある。家の中での転倒で認知症が進むケースがあるので、履物を片付けるなど家の中の危険度を下げることを奨励した。家の中、家そのものの片付けも大変だが、家の名義を片付けることが今後大きな課題となる。

 というのも来年2024年4月1日から相続登記の義務化がスタートするからだ。現在住んでいる家の名義が古いままだと、直ちに売却できない、土地に建物を建築する際に支障が出る、不法投棄の原因となるなど土地の有効活用の妨げ、経済的な損失の発生となる。

▼相続登記義務化のポイント

【過料の設定】相続による不動産取得を知った日から3年以内に相続登記をしないと10万円以下の過料の対象となる。不動産所有者の氏名、名称、住所変更があった時は、その変更から2年以内に変更の登記申請をしなくてはならず、しない場合は5万円以下の過料の対象となる。2026年4月までに施行されるが、おそらく来年4月から実施の可能性がある。この制度の救済措置として、相続人申告登記制度の創設と免許税の減額がある。

【国に土地を返す国庫帰属制度】不要な土地は国に返すことができるようになった。「相続登記は早めに行わないとどんどん大変になるので、住まいの終活記録としてのエンディングノートの活用をするなど、気づいた時がタイミングです」とアドバイスした。

 動画に関する問い合わせはNY日系人会、電話212・840・6942、Eメールinfo@jaany.org まで。

イメルダ夫人礼賛

 イメルダ夫人といえば、フィリピンの元ファーストレディー。何しろ、マルコス独裁政権が1986年に崩壊して、マルコス夫妻がワイハーに亡命した後の夫妻の宮殿の内部が暴かれて、イメルダ夫人の倉庫みたいな広大な「靴の間」に一生かかっても履き切れないほどのハイヒールが並んでいる映像には世界中がアッと驚かせた!そう言った破格の奢侈に身をやつす上流夫人に我ら庶民はやっかみと羨望を持って魅惑されてしまうのは世の常。そんなド派手なイメルダ夫人物語に目をつけたのはブロードウェイ。  夫人がニューヨークの伝説のディスコ、スタジオ54の常連だったということからヒントを得て、イメルダの生き様と70年代ディスコを合体させて制作されたミュージカルが「HERE LIES LOVE」だ。

 フィリピンの貧しい農村で育ちながらもミスコンで優勝するほどの美貌を持っていたイメルダ。のちの大統領であるフェルディナンドはマニラで出会った彼女に一目惚れ。執拗に迫り、根負けしたイメルダは出会いからわずか11日間で結婚するが・・・。

 驚異的だったのは劇場!通常のブロードウェイなら、まー舞台があって、役者たちはそこに居り、セリフ喋って、歌ったり踊ったり、お客様は客席に座り物語を追っていくーてな段取りでショーは進んでいくわけだが、「HERE LIES LOVE」は、その辺を全部取っ払っちゃった「究極の新スタンダード参加型」。演出は既成概念を壊す発想豊かな斬新な切り口がブロードウェイから注目されているアレックス・ティンバーズ。ブロードウェイ劇場を本作だけのために大改造させ、約1800席近くあった客席のオーケストラ席をすべて取り外し、300席のスタンディング・ルームを作りあげ、頭上に直径1メートルのミラーボールからお立ち台に大型モニターまで。さらに半端ない量の音響と照明機材も持ち込まれた様子は、まるでクラブそのもの。観劇後、オフからブロードウェイ上演に漕ぎ着けるまで10年もの歳月がかかった謎が解けた気がする。このショーの本当の主役は劇場そのものを驚くべき建築的変貌をさせた舞台装置デザイナーのデイヴィッド・コリンズと言える。 

 原案、作詞、作曲を手掛けたデヴィッド・バーンは 音楽界を一世風靡した元トーキング・ヘッヅのメンバー。ファンキーなポップス、ディスコ、バラードなど色彩豊かで 特に「Here Lies Love」は耳に残る名曲なのさー!   

 一心不乱に役への思いの丈をに伝えようとする熱いキャストは全アジア人。90年に大ヒットしたミュージカル「ミス・サイゴン」は アジア人の主役に白人を抜擢したという事で当時ニュースなどで議論が紛糾したことを思えば遠くへきたもんだーぁ♪  時代が確実に変化しキャストの若さと動物的しなやかさのコンビネーションは最高。まさに、アジアン・ナイト・ワイルドだぜぇー!彼らにチップあげなくていいの?なんて脳裏をよぎったほどなのさ!肌の色が違うというだけで 嫌な思いをすることも度々あるニューヨークだが、観劇後、ニッポン人(アジア人)である自分がスゴーく誇らしかった。

 最後に観劇する方へ。チケットは少々割高でもダンスフロアのスタンディング席を選ぶべき!通常の客席だと取り残された感が半端なく満足度はかなり下がっちゃう!そうそう、スタンディング席でご覧になる方は軽装、スニーカーで行くのがベスト。十二単は避けるべきよ!

 トシ・カプチーノ:キャバレーアーティスト、演劇評論家、studio82°F所属タレント週刊NY生活「新ブロードウェイ界隈」連載中。TV:NHK「サラメシ」NY特派員、TBS「世界の日本人妻は見た」、日本テレビ「スッキリ!!」「ZIP!」「スター誕生」

NYで幼児教育続け半世紀

こどものくに幼稚園 園長

早津 邑子さん

 ニューヨーク州ウエストチェスターのホワイトプレーンズにあるこどものくに幼稚園は、2025年4月で創立50周年を迎える。ニューヨーク地区で最も古い日本人幼稚園だ。園長の早津さんがニューヨークに来たのは1973年。27歳の時だった。日本で保育園と幼稚園に勤務し、米国の幼児教育事情を見学するため短期滞在の予定で来米した。ニューヨークで、公立、私立の学校を見る中で一番びっくりしたのが、校庭のないビルの中だけで完結している学校が存在することだった。またマンハッタンのプライベートスクールの中には、少人数の個別で教育をする学校があるのにも驚いた。ある日、現地校を見学している時に、外で子どもたちが遊んでいて、日本人の子供と思われる児童が、砂場で一人で遊んでいた。ほかの子どもたちとは交わらず、30分も40分も同じ姿勢で遊んでいた。英語で「ホワッチュアネーム」と聞いた。子どもはじーっとしている。「こんにちは」と今度は日本語で声をかけた。「その子は、ハッと振り向いてわーっという顔を見せたのです。その時のあの顔は50年経っても忘れられないです。しばらく砂場で一緒に遊んでいると日本人のお母さんが迎えに来たんです。お母さんは、自分の子どもが、ゆめゆめ一人ぼっちで遊んでいることは考えていなかったのです。なぜなら、その子はいつも『お母さん今日はこんなに楽しかったよ』と話し、一人で寂しかったとは言わなかったからなんです。涙が出そうになりました。それがきっかけですね。私はこの子たちの代弁者にならなければ、との思いのみでした」と50年を振り返る。

 子どもを思う保護者たちの熱意が早津さんをニューヨークに留まらせた。1975年、クイーンズの中庭のある集合住宅の部屋を借りて、男児2人、女児2人の4人でスタート。81年に市からデイケアセンターとして認可され、非営利団体こどものくに幼稚園が誕生し、その年にクイーンズ区ジャマイカにあった全日制日本人学校の教室を借用して授業を行った。86年にクイーンズ区フラッシングに移転し、一軒家で幼稚園を運営した。この頃には日本人家庭からの入園希望が殺到し、88年にウエストチェスターのスカースデールの教会を借りて2校体制に。94年にNY州教育局から学校法人の認可を得て、正式名称を「Kodomono Kuni School」とし現在のホワイトプレーンズへ移転、5歳児クラスを増設。 96年にクイーンズ園は閉園した。

 「人として成長する基礎となる母国語を習得する大切な幼児期を海外で過ごす日本人の子どもたちのために設立した日本語の幼稚園です」。園の名前には、安全で、自由に意思疎通ができ、楽しい遊びや発見に没頭できる環境をとの願いが込められている。幼少期に日本語を確立してから第二言語を獲得する方が、その後の子どもの学習能力が高いことがバイリンガル教育、継承語教育、日本語教育学を専門とする言語学者・教育学者の中島和子トロント大学名誉教授の論文などでも報告されている。実際に現地校の教師からキンダーまでに日本語をきちんと習得している子どもの方が学習面で成果が出ているとわざわざ電話を園までかけて来る先生もいた。現在50周年記念誌を制作するため、卒園者や保護者の連絡先を探すのに大わらわだ。(三浦良一記者、写真も)

編集後記

【編集後記】

 みなさん、こんにちは。アメリカに住んでいると、日本人として理解に苦しむ出来事が結構あります。その一つが、大麻の販売です。日本では犯罪です。よく芸能人や運動選手が大麻を所持していたということで、大々的に報道され、逮捕された人は確実に職業上での信用を失い表舞台からは消えて行きます。一方、ニューヨーク州は、まちなかで、堂々と大麻が売られています。しかもNY州の大麻管理委員会は今月12日、大麻産業の拡大を図る新たな規制緩和を承認しました。娯楽用大麻の販売店(ディスペンサリー=薬局)の営業認可は大麻で有罪判決受けた人などに限定されていたのですが、障害のある退役軍人、マイノリティーや女性の経営者、苦境にある農家なども10月4日から薬局運営の申請を行うことができるようになりました。大麻販売店認可をめぐっては4人の退役軍人が、障害のある退役軍人よりも有罪判決を受けた麻薬犯罪者を優遇しているのは州法に違反するとして州当局を4月に告訴しました。ニューヨークタイムズ紙にも一面意見広告を出し「自分たちにも売らせろ」と言わんばかりの堂々たる主張でした。「マンハッタン、街を歩けば、大麻のかほり」という俳句ができてしまうくらい間接大麻喫煙の危険に晒されている毎日です。中毒性があり、さらに危険度の高い覚醒剤へエスカレートする大麻を合法化しているのは、その莫大な税収によるものです。国民や州住民の健康を守ることよりもお金を取った格好です。なんというあさましいことでしょう。体を蝕むことが分かっているものをなぜ州が許可するのかが分からないところです。日本の法律では、海外であっても大麻を吸ったり、買ったり、売ったり、所持していることも「処罰の対象となるので絶対に手を出さないで」と在外公館では在留邦人に呼びかけています。でも、では実際にどういう場合にその日本の法律が適用されるのかという点についてはどこにも書かれていません。「取り締まりの手の内を明かすことになるので」という理由で、紙面では記事としては表立って書けませんが、編集後記の裏話として聞き流してください。日本の法律は国内のみで適用されますから海外で逮捕されることはありません。帰国した時に空港の手荷物検査や入国審査で、何かのきっかけで別室に呼ばれた時に「ところでアメリカでは、簡単に大麻とか吸ったりできるようだけど、友達とかで吸ってる人いる?吸ったりしたことあります?」とカジュアルに聞かれて嘘はついてはいけないと思い正直に「そうですね、パーティでちょっとだけ」と使用を認めた瞬間、その段階で即逮捕となります。日本で大麻を所持したり使用したのと同じ犯罪として処罰されます。なので、このNYの合法化の流れの中で、アメリカ人との交流の中でたまたま吸ったことのある人は気をつけて、とは表立って言えませんが、現実はそういうことなのです。「それなら最初からそう言ってよ、分かってれば吸わないんだから」と言っても後の祭り。二重国籍の問題と同じで、アメリカ市民権を取得すると自動的に日本国籍を失うという日本の法律を知らないまま米国市民権を取得した人が「自分は日本人ではないことになって」に困っていますが、「知らなかったでは済まされない」と国は言うけど、だったら「先にしっかり知らせてよ」と言いたいところです。「合法と、思って吸ったら、帰国で逮捕」また一句、つまらない句ができてしまいました。こんなことにならないように気をつけましょう。「君子危うきに近寄らず」がよろしいようで。それでは皆さんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)