AIテクノロジーとアートの融合を目指す、土佐尚子教授 JS講演

原画を安全に保続し一般鑑賞機会を増大

 京都大学でAI時代に新しい価値を生み出すアート・イノベーションとアート&テクノロジーの教育に従事する土佐尚子教授が1月31日、ジャパン・ソサエティーで「時を超える: 日本のアート&テクノロジー / Transcending Time: Japanese Art & Technology」と題する講演会を行った。

 金屏風に描かれた荘厳な美しさ、生け花の優美な線など、日本美術には時代を超えた魅力がある。現代では新しい技術がこうした芸術との関わり方に革命をもたらしつつある。貴重な絵画を高精度で複製することで原画を安全に保存しつつ、一般の人々が鑑賞できるようになった。一方、現代のアーティストたちは、テクノロジーを使って日本の伝統的な芸術概念を斬新な方法で表現している。今回の講演会では、日本のニューメディア・アーティストであり「いけばなの音」の作者である京都大学教授の土佐氏と、スミソニアン国立アジア美術館の日本美術キュレーターであるフランク・フェルテンス氏が、今日の日本美術界におけるテクノロジーの応用について考察した。

 質疑応答では、会場からアートとAIについての今後の土佐教授の考えなど多数の質問が飛び交った。土佐教授は「アナログとテクノロジーを融合させるヒューマンアートを目指したい。伝統アートだけでなくモダンアートも人の生活に密着している」と指摘する。「AIによるアート技術を追求すればするほど、アナログとしての人間の真髄を考察することになる」と締め括った。

 土佐教授は昨年の秋に続き、2月9日〜14日まで開催のNYファッションウィーク(NYFW)で最新作品を披露する。10日午後6時30分から、会場はチェルシーインダストリアル(西28丁目535-551番地)にて。入場は招待制。

(古市裕子/欧米サステナビリティ研究 SDGs ライター、写真も)

日米の政局、いずれも複雑で一寸先は闇

 まず日本の政局だが、迷走がどんどん深まっている。一連の政治資金問題では、立件された政治家は少ない一方、安倍派、二階派、岸田派が解散するという意外な展開となった。岸田総理の人気は依然として低いが、率先して派閥解散を行ったことと、能登半島地震の被災地訪問が「早すぎなかった」ことで支持率はほぼ下げ止まった。。

 政治資金問題における世論の自民党への怒りは大きいが、かといって野党に政権担当能力があるのかというと、極めて心細い。共産党は委員長が交代したが党員の除名が続いており、イメージアップには程遠い。立憲民主党は野党結集の軸にはなっていないし、一時は人気のあった維新も、大阪万博の準備に苦しむ中で限界を露呈している。

 そんなわけで、自民党はほぼ自壊に近い状態であるにもかかわらず、その「敵失」を野党が生かせる状況にはない。こうした力学を受けて、現在取り沙汰されているのは、6月解散総選挙という説である。具体的には、東京都知事選とのダブル選挙を仕掛けようというのだ。現職の都知事である小池百合子氏は、再選へのやる気は満々であると同時に、国政復帰への野心も見え隠れする。だが、コロナ禍対策で都財政を大きく傾けたことで、再選への体制は盤石ではない。国政に復帰するにしても、二階派や安倍派が消滅した現在では、小池氏が派閥ジャックをして総裁候補にというシナリオは崩れた。一方、自民党としては小池氏の強さの前では対立候補を用意する状況でもない。

 そこで「ダブル選挙」を行うメリットが出てくる。上川外相などの「リリーフ登板」は見送り、岸田総理のままで、小池氏と連携して総選挙と都知事選のダブル選挙を行うと、まず、小池氏としては存在感を高めつつ国政復帰への準備もできる。岸田氏の方は「脱派閥」を訴えつつ、小池氏と連携することで中道保守の都市票を敵に回さず、ダメージを最少にできるという読みがありそうだ。

 自民党が脱派閥をするというのは期間限定の話であり、額面通り信用はできない。ただ、岸田氏とすれば、今回の三派閥の解散により敵対派閥を「亡き者」としつつ、「脱派閥というムード」が残るうちに6月総選挙に勝てば、9月の総裁選における無風再選の展望が出てくるというわけだ。ただ、岸田氏はそれでも心配のようで、憲法改正を打ち出し始めた。安倍派を消滅に追い込んだことで、今度は保守票に憎まれるのが怖くなったのであろうが、憲法改正を主張すれば総選挙も怖くないということのようだ。そこまで手を打っておけば、国賓待遇で招待されている4月のワシントン訪問も胸を張って行けると考えているのであろう。

 一方で、そのワシントンの政局も混沌としてきた。まず共和党では予備選の序盤で、ドナルド・トランプ候補の優位が見えてきた。予想外に早い展開だ。その結果として、自分の議席が気になる共和党議員団は一斉にトランプ支持に回っている。そんな中でこれから起きる可能性があるのが「トランプ毒の中和」である。本来は極右の超孤立主義をコアとした運動であった「2期目のトランプ」がこのままでは、共和党の党内穏健派なども取り込んだ相乗り政権になるかもしれない。

 やや楽観的な予測になるが、もしかしたらNATO解体とか、日米同盟破棄といった極論にストップを掛ける存在は、真正面からトランプと対決するニッキー・ヘイリー氏ではないかもしれない。トランプ応援団が拡大して、共和党の左右両派がトランプ与党になることで、トランプに乱暴な判断を止めさせるという構図になる可能性が出てきた。鍵を握るのは、トランプ候補がやがて指名することになる副大統領候補の名前だ。一時は、自分に忠誠を誓う人材で政府を固めると言っていたトランプだが、ここへ来て無党派層の離反を怖がっているという説もあり、副大統領候補に「常識人」を指名する可能性も出てきた。仮に実務の分かる副大統領候補が指名されれば、そこを突破口としてトランプ政権を「普通の共和党政権」レベルまで「中和」することは可能になってくるかもしれない。

 そう考えると、日々苦境に立ちつつあるのはバイデン候補の方かもしれない。イラン系のテロ集団とは、事実上の交戦状態に陥ってしまった。ここでは泥沼化するような戦闘が継続するかもしれない。バイデン氏は、対応が弱ければ「弱腰だ」として保守系の中間層から叩かれるし、仮に戦闘をエスカレートさせてしまうと、反戦的な党内左派から更なる批判を浴びる可能性がある。

 石油価格を含めて確かにインフレは沈静化した。だが、物価上昇率の抑制には成功していても、上がってしまった物価が下がるわけではない。この点において、バイデン政権は、世論の不満には鈍感だ。イスラエル=ガザ問題も、米国南部国境の問題も「まともな説明」をしない中で、ズルズルと世論の離反を招いている。現時点では、民主共和両党の戦いに加えて、トランプ陣営の「中和」が進むかどうかが、アメリカ政局の事実上の焦点かもしれない。

(れいぜい・あきひこ/作家・プリンストン在住)

異なる価値観の中で美を追求する

メイクアップ・アーティスト

塩野目 知世さん

 米国で大手女性雑誌の『VOGUE』『ELLE』や『On』『JINS』『Autry』などでメイクアップ・アーティストとして仕事を手がけ、広告、コマーシャル、イベントでも幅広く精力的に活動中の日本人女性だ。

 ファッションの世界は、現在アジア系モデルの採用が多く、バックグラウンドもLGBTQを大切にする傾向が強いという。クライアントはモデルのイメージで選ぶため、ステレオタイプの綺麗に美しくすればいいでは通じない時代になっている。仕事でニューヨークとパリを往復する。パリではメイクもミニマムなものを要求されることが多くなったのを実感している。世界のモデルたちの肌を通して、時代の今を肌で感じる瞬間でもある。

 こちらで結婚、ご主人ががフランス人のため、フランスの文化やカルチャーに触れる機会が増えた。仕事の内容は主にファッションに関連していることもあり、今後は、活動をヨーロッパにも広げていきたいと思っている。

 東京生まれ、埼玉育ち。高校まで体育会系で、高校はバドミントンのスポーツ特待で入学した。大学でも続ける話があったが、既にメイクアップに興味を抱いていたため、アスリートの道ではなくメイクの道を選び、美容学校へ入学した。卒業後、カラーリストで有名な美容室「kakimoto arms」でヘアカラーリストとして5年間働いた。3年目に、日本のヘアカラーコンテストで入賞、その2年後には夢だったメイクアーティストになるために資生堂SABFAで一年間、フルタイムで学生生活を送り、ヘアメイクの基礎を学んだ。その後、ヘアメイクのアシスタントとして一年間経験を積み、海外で挑戦したいという気持ちが高まり、28歳の時に来米した。英語が全く話せなかったため、一年間猛勉強し、その後メイクアシスタントの仕事を始めて5年後に独立。現在は「Art Department」という米大手事務所に所属している。

 そしてもう一つの大きな目標は、自身のスキンケアのビジネスを始めることだ。モデルやクライアントと近い距離で仕事をすることが多く、肌の悩みに触れることがある。自分自身が肌ケアが好きであり、美容療法やエステなどの経験を積んできたことを活かし、プロメイクアップアーティストとしての技術を一般の人に何か還元できることができればと考えている。

 「女性の美しさに対する願いは一生続くものであり、それを異なる角度から自身の仕事と結びつけ、時代に合った新しいビジネスの提案もしていきたいですね」と話す。内面からの美しさもまた大切に生きている。(三浦良一記者、写真も)

Website: tomomakeup.co  Instagram: @tomoyomakeup

NY地下鉄に新型車両

車両間の行き来自由に

 都市交通局(MTA)は1日、車両間の連結部分を通行できる「オープン・ギャングウエー(解放された通路)」を施した新型車両の運行を地下鉄C線で開始した。(写真上:Photo: Matthew McDermott)

視察するホウクルNY州知事

 川崎重工業傘下の川崎車両株式会社製の同R211T型は、車両間が貫通しているため、米国内では唯一、各5両編成の端から端までを見通せる。同局の207丁目車両基地で記者会見を行ったキャシー・ホウクルNY州知事は「シームレスに車両間を移動でき、閉じ込められていると感じずに済む」と語った。特徴的な同車両は、混雑の緩和と安全性の向上を意図している。NY市警のマイケル・ケンパー交通局長は「サブウエー・サーファーは車両の上から連結部分に下りるが、新型車両はその部分がないので、危険行為を阻止できる」と話している。同局が地下鉄網にギャングウエー車両を導入するのは59年ぶりとなった。新型車両の列車は1日午前11時に、ワシントンハイツの西168丁目駅を出発した。

今年訪れるべきレストラン100店

NY州はわずか3店

 ローカルビジネスのレビューサイトyelpは、11年目となる恒例の「訪れるべき米国内のレストラン100店」を発表し、ニューヨーク州内では3店が選ばれた。創設20年の同サイトは、消費者が主にオンラインでコメントや情報を発信するユーザー作成コンテンツが基になっており、同リストは、良質なレビューアーと認定されたイェルプ・エリートとローカルビジネスの事業主たちが投稿を審査して作成している。今年のトレンドとして、定番を芸術的に創作した麺料理、植物性由来(プラントベース)などを使った新たなラテン料理、韓国フュージョン料理、ランキング上位を占めているサンベルト(アリゾナ、フロリダ、テキサス州)地帯のレストランをあげている。

 NY州内で最高位だったのは47位のミッドタウンの四川料理店「チリ」、次いで69位のナイアガラ郡ロックポートのメキシコ料理店「マニート・タコ・ショップ」、91位の西部エリー郡アマーストのベトナム料理店「アンチ・ア・ラ・カルテ」だった。ランキング1位は、地元の旬の野菜や果物を使っていることが評価されたアリゾナ州ツーソンのビーガン・メキシコ料理店「Tumerico」、2位は行列が絶えないミズーリ州セントルイスのラーメン店「麺屋塁」だった。ランキングの詳細はyelp.comを参照する。

NYレストランTICグループ、石川県酒造組合への寄付金託す

金沢銭屋の高木氏がメッセンジャー

 ニューヨークのTICレストラングループは6日、石川県酒造組合に能登半島地震被災蔵元支援のための寄付金1万7762ドル24セントを寄贈した。翌7日に帰国する石川県金沢の割烹料亭銭屋二代目高木慎一郎氏に託してTICグループ代表の八木秀峰ボン社長が小切手を手渡した。

 八木社長は1月8日に収益の一部から災害救援基金を設立するためグループ全体のキャンペーンを立ち上げた。石川県内にある32蔵元のうち11蔵元が壊滅的な被害を受けているという。同寄付は石川県酒造組合を通じて、松波酒造、桜田酒造、鶴野酒造、日吉酒造、宗玄酒造、数馬酒造、清水酒造、白藤酒造、中島酒造、中納酒造ほか被災した蔵元に送られる。

 高木さんは「大切な寄付、確かにお預かりしました。石川県の酒造組合に間違いなくお渡しします」と受け取った。高木さんはNYの五絆ソサエティー(川野作織代表、コーリン社長)の招きで石川県のシェフをニューヨークで研修させるために引率同行していた。TICの八木社長が五絆ソサエティーの理事を務めていることから寄付金を託した。ニューヨークでは石川県能登半島地震被災地支援の動きが続いている。(関連記事1面、4、5面に)

(写真)金沢銭屋の高木氏に寄付金を託す八木社長(右)

人間心理をテーマに描く画家Kohの作品

日本クラブWEBギャラリーで

 日本クラブWEBギャラリーでは、東京出身でフランス系の血を引くニューヨーク在住の油絵画家、Kohさんの作品を紹介している。生と死、人間心理の複雑さといったテーマに焦点を当て、ニューヨークの活気にインスパイアされた作品で、鮮やかな色彩と深いテーマが融合している。 

 Kohさんはパーソンズ美術大学で学士号を取得し、ロンドン芸術大学での交換留学も経験。国際展覧会での参加や多数の賞の受賞歴がある。また、国連本部でのイベントやYouTubeのメトロポリタンオーケストラの演奏家によるコンサートでのボランティア活動も行っている。詳細はhttps://nippongallery.nipponclub.org/を参照。

(作品)Memory(2023)Oil on canvas, 40 x 60 in

編集後記

【編集後記】

 みなさん、こんにちは。ニューヨークでも日本国内の有数ホテルや旅館並みの料亭クオリティーの水産物が入荷しつつあります。東京都は1月29日、ジャパン・ソサエティーで、キンメダイ、ハマダイなどの水産物の魅力を米国に発信するイベントを開催しました。当日はレストラン関係者ら100人余りが参加して、お寿司などを試食しました(本紙3面に記事)。東京都の髙橋慎一産業労働局農林水産部長は「大都会のイメージのある東京都ですが、その一方で、伊豆諸島や小笠原諸島など海流の影響で我が国有数の漁場が形成されています。鮮度の保持と味の質を維持するため、活〆の処理も一部施し、皆さんに十分満足していただけると確信しております」と自信いっぱいにスピーチしていました。ニューヨーク総領事の森美樹夫大使によるとNY州には日本食レストランが1936軒もあって、ミシュランガイドで星をとっている全71軒のうち約4分の1の18軒が日本食だそうです。東京漁業協同組合連合会の山口定治参事は「日本の領海の4割は東京の海。現在は米国西海岸からNYに陸送ですが、年内には羽田からNY直送を目指したい」と話していました。当日、デモンストレーションしたシェフの一人、レストランWOKUNIの総料理長、吉澤邦明さんは「うちは自前で月に2回空輸していますが、東京魚連がJFKに直送すれば魚がNYに届く回数が増えて、美味しい魚をNYの人が食べる機会が増えますね」と話していました。すでにNYの大手米国系スーパーのWegmansが、イーストビレッジの店舗に、東京の「魚力」が豊洲で仕入れた日本全国の新鮮な魚を毎週2回NYに空輸で直送しています。店の人の話によると、毎週月曜と木曜に魚がJFKに到着し、通関後、翌朝には店に配達され、昼から魚職人たちがバンバンと解体、切り身に分けて午後3時過ぎには店頭に日本全国の老舗料亭で出される品質の本マグロ、トロがずらりと並びます。ですので、同店での魚のお買いものは「火曜日と金曜日の午後」がベストですよ。楽しんでください。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2024年2月3日号)

(1)国際機関への就職 JOP派遣候補者願書受付

(2)能登半島NYから支援 アート公演2月3日JAAで

(3)東京の魚を味わってください NYで東京水産物PR

(4)日米の透明性と説明責任の違い 海外日本人サポート

(5)新年賀詞名刺交換会 大使、日系団体代表が挨拶 

(6)日本企業での女性の共同参画 コロンビア大で討論会

(7)大統領選に残る「変数」 視座点描

(8)A350-1000初就航 JAL羽田=NY線

(9)月面に逆さま着陸 日本の探査機SLIM

(10)アートセラピーで世界にハピネスを 原田真樹子さん

能登半島NYから支援

アート公演会2月3日NY日系人会館で

 能登半島地震被災地を救済するための寄付金集めを目的としたアート公演「ファンドレイジング・チャリティショータイム、ニューヨークから北陸へ歌声・旋律届け!」が2月3日(土)午後3時から6時までニューヨーク日系人会館ホール(西45丁目49番地5階)で開催される。在NYエンターテイナーが被災地救済に集結し、 被災地の早期復興を願い、全力投球する。出演者は全員ボランティア出演だ。入場料(寄付)40ドル。お弁当(先着100個分)・お茶が含まれる。このイベントにかかる経費を控除した収入はライオンズクラブ組織を通じて全て能登半島地震被災地へ届けられる。問い合わせはEメール  nfo@nyjalc.org  原茂(はらも)さん。

国際機関への就職

2024年度JPO派遣候補者選考試験願書受付開始

若手日本人研修制度で支援

 外務省は、2024年度ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)派遣候補者選考試験(2024年度JPO試験)を実施することとし、1月22日募集要項を公開した。応募受付の開始は2月1日、締切は3月4日。JPO派遣は、国連をはじめとした国際機関への就職を支援する目的で、各国政府の費用負担を条件に、国際機関が若手人材を受け入れる制度だ。

 外務省では、1974年から同制度による派遣を開始し、35歳以下の若手の日本人に対し、2年間、国際機関で勤務経験を積む機会を提供することで日本人の国際機関への就職を後押ししている。これまでの累計派遣者数は1950人以上に上る。

 令和4年(2022年)末時点の最新の調査では、961人の日本人職員が国連関係機関の専門職以上のポストに就いており、これは過去最高の数字となっている。このうち半数近くの468人がJPO出身者だ。幹部職員についても、91人中、39人がJPO出身者(いずれも2022年末時点)で、国連事務次長・軍縮担当上級代表を務める中満泉(なかみつ・いずみ)氏を始めとして、多くの幹部職員もJPO出身となっている。JPOは、派遣期間中に、国際機関職員として必要な知識・経験を積み、派遣期間中または終了後に正規採用を得ること、ひいては各分野のスペシャリストとして、または国際機関を代表する幹部となって活躍し、日本と国際機関との連携を一層強める役割を担っていくことも期待されるいわば国際機関職員への登竜門と言える。

 令和2年度(2020年度)試験以降は、全面的にオンラインにて試験を実施しており、海外からの応募・面接の実施も可能となっている。外務省では「世界中で活躍している意欲ある日本人の若手人材の国際機関への挑戦を支援している」と海外からの応募も呼びかけている。

 応募資格は2024年2月1日現在、35歳以下であること。(生年月日が1988年2月2日以降であること)。派遣先によって求められる学歴や職務経験は異なるが、概ね国際機関で自分が希望するポストの業務に関連する分野において修士号の取得、2年以上の関連した職務経験を有することが求められている。また、英語で職務遂行が可能であること、将来にわたり国際機関で働く意思を有すること、日本国籍を有すること。募集内容の詳細と応募方法は、国際機関人事センターのホームページで公開されている応募用専用リンク(https://www.mofa-irc.go.jp/jpo/index.html)を参照。応募は必要事項を記入して必要書類をアップロードする。応募の締め切りは3月4日(日本時間午後11時59分)。

東京の魚を味わってください

NYで東京水産物PR

羽田→JFK直送目指す

 東京都は1月29日夕、ジャパン・ソサエティーで、キンメダイ、ハマダイなどの水産物の魅力を米国に発信するイベントを開催した。当日はレストラン関係者ら100人余りが参加した。(写真上:キンメダイやハマダイを使った寿司が来場者に提供された会場)

左から森大使、髙橋東京都農林水産部長、ウォーカーJS理事長

 主催者である東京都の髙橋慎一産業労働局農林水産部長は「大都会のイメージのある東京都には一方で、伊豆諸島や小笠原諸島など海流の影響で我が国有数の漁場が形成されています。鮮度の保持と味の質を維持するため、活〆の処理も一部施し、皆さんに十分満足していただけると確信しております」と挨拶した。

 ニューヨーク総領事の森美樹夫大使は「江戸前寿司の名前の由来は東京の寿司」と述べ、ニューヨーク州には日本食レストランが2022年の統計で1936軒あること、ミシュランガイドで星をとっている全71軒のうち約4分の1の18軒が日本食レストランであること、日本の農林水産物・食品の輸出額が2021年に1兆円を突破、22年には1兆3372億円、日本政府の輸出額目標が25年までに2兆円、30年までに5兆円を目指していることなどを紹介した。

 東京漁業協同組合連合会の山口定治参事は「日本の領海の4割は東京の海。広い海で獲れた本格的な魚をここにお届けしたい。現在は西海岸から陸送だが、年内には羽田からNY直送を目指している」という。

 当日、デモンストレーションしたシェフの一人、レストランWOKUNI
の総料理長、吉澤邦明さんは「うちは自前で月に2回空輸しているが、東京魚連がJFKに直送すれば魚がNYに届く回数が増え、美味しい魚をNYの人が食べる機会が増える」と話した。